債権者代位権

(納税者の資力との関係)

1 この条の規定に基づき債権者代位権(以下この条関係において「代位権」という。)を行使するのは、国税を保全するために必要がある場合に限るものとする。したがって、納税者(第二次納税義務者および保証人を含む。以下この条関係において同じ。)が無資力の場合に代位権を行使する(明治39.11.21大判)が、国の特定の権利(たとえば、徴収法第158条第4項の規定に基づき設定した低当権の登記請求権)を保全するため納税者が第三者に対し有する特定の権利(たとえば、上記の抵当権付財産が他人名義となつているときの登記講求権)を代位行使する必要がある場合には、納税者が無資力でなくても、代位権を行使する(明治43.7.6大判)。

(注) 納税者が無資力であるかどうかの判定にあたっては、第二次納税義務者、保証人等の有無およびその資力は考慮する必要はない。

(詐害行為取消権等の代位行使)

2 納税者の有する代位権または詐害行為取消権(以下この条関係において「取消権」という。)も、この条の代位の対象となるものとする。

(繰上保全差押え等の場合の代位)

3 繰上保全差押えまたは保全差押えをする場合において必要があるときは、繰上保全差押金額または保全差押金額にかかる国税に基づいて、民法第423条第2項(裁判上の代位)の規定による代位権を行使をするものとする(非訟事件手続き法72条から79条まで参照)。

(納税者への通知)

4 代位権の行使に着手した場合には、その旨を納税者に通知するものとする。ただし、非訟事件手続法第76条第1項の告知がされているときは、この通知を要しない。

(注) 納税者は、上記の通知もしくは告知を受けたときまたは国が代位権の行使に着手したことを了知したときは、その権利について国の代位行使を妨げる行為をすることができない(非訟事件手続法76条2項、昭和14.5.16大判)。

詐害行為取消権

(納税者の悪意)

5 この条の規定に基づく取消権は、納税者が自己の法律行為により債権者を害する結果になることをその行為の当時知っている場合でなければ成立しない(昭和35.4.26最高判)が、この納税者の悪意は、一般的に債権者を害することを知っていれば足り、特に国税を害することを知っていることは必要でない。

(注) 納税者が善意であるときは、それについて過失があっても、取消権が成立しないことに留意する(大正5.10.21大判)。

(債務の弁済等と詐害行為の成否)

6 次に掲げる行為は、詐害行為になりうるものとする。

(1) 不動産または重要な動産の相当な対価による売却(明治36.2.13大判、昭和3.11.8大判、昭和39.11.17最高判参照)。ただし、有用の資(たとえば、有益な財産の購入資金)の調達を目的とし、かつ、売却代金を現実にその資金に充てている場合を除く(大正6.6.7大判、大正13.4.25大判)。

(注) 上記ただし書の事実は、取消しの請求を受けた相手方が立証しなければならない(明治44.10.3大判)。

(2) 納税者が一部の債権者と通謀し、他の債権者を害する意思をもってした債務の弁済(大正5.11.22大判、昭和33.9.26最高判)。

(国税の成立前にした法律行為)

7 納税者が、国税の成立前に、その成立を予測しながら悪意でした法律行為は、その国税についても詐害行為になるものとする(昭和32.12.5佐賀地判、昭和3.5.9大判参照)。

(注) 国税の成立後にした法律行為は、その国税の確定前にした場合であっても、詐害行為となりうることに留意する(昭和42.3.14最高判)。

(第二次納税義務者等がある場合)

8 納税者が無資力であるかどうかの判定にあたっては、第二次納税義務者、保証人等から国税の全額を徴収できると認められるときは行なわないものとする。

(被告と訴えの内容)

9 取消権を行使する場合の被告および訴えの内容は、次によるものとする。

(1) 受益者または転得者の書意または悪意の別による処理

イ 受益者が悪意で転得者がない場合
 受益者を被告として、詐害行為の取消しとその目的財産の返還の請求(目的財産の返還の請求ができないときは、それに代わる損害賠償の請求)をする。

ロ 受益者が悪意で転得者が善意である場合
受益者を被告として、詐害行為の取消しとその目的財産の返還に代わる損害賠償の請求をする。ただし、転得者の地位に影響を及ぼさないときは、必要に応じ、目的財産の返還の請求をする(大正6.10.3大判)。

ハ 受益者が善意で転得者が悪意の場合
 転得者を被告として、詐害行為の取消しとその目的財産の返還の請求(目的財産の返還の請求ができないときは、それに代わる損害賠償の請求)をする。

ニ 受益者および転得者がともに悪意である場合
 受益者または転得者のいずれを被告としてもさしつかえなく、また訴えの内容については、受益者を被告とするときはロと同様に、転得者を被告とするときにはハと同様に、それぞれ請求をする(大正9.5.29大判)。

(2) 国税の額が目的財産の価額より少ない場合の処理

イ 詐害行為の目的財産が可分であるときは、国税を徴収できる範囲での詐害行為の一部の取消しとそれに相当する目的財産の一部の返還の請求(目的財産の返還の請求ができないときは、それに代わる損害賠償の請求)をする。

ロ 詐害行為の目的財産が不可分であるときは、詐害行為の全部の取消しと目的財産の返還の請求をする。ただし、目的財産の返還の請求ができないときまたは目的財産の価額が著しく国税の額を超過するときは、国税の額に相当する詐害行為の一部の取消しとそれに相当する損害賠償の請求をする。

(取消し後の滞納処分等)

10 詐害行為の取消しがあった場合における滞納処分等は、次によるものとする。

(1) 返還を受ける財産が動産または有価証券であるときは、判決に基づき、その引渡しを受けたうえで、差し押える。ただし、その引渡しに応じないときは、第三者が占有する財産の差押手続に従い差し押える。

(2) 返還を受ける財産が不動産その他の財産で、登記等の名義を納税者名義とする必要があるときは、判決に基づき、納税者名義としてうえで、差し押える。

(3) 詐害行為の目的財産の返還に代わる損害賠償請求権の取立て(支払に応じないときの強制執行を含む。)および取り立てた金銭の処理については、被差押債権の取立て等の処理に準ずる。

(4) 徴収法第129条第1項(配当の原則)の規定によって配当した場合において生じた残余金は、同条第3項(滞納者への残余金の交付)の規定にかかわらず、取消しの判決を受けた受益者または転得者に交付する(大正8.4.11大判)。

(商法第118条等との関係)

11 納税者の行為が商法第118条(会社債権者の保護)、第141条(債権者による設立取消しの訴え)(同法第147条および有限会社法第75条第1項において準用する場合を含む。)または信託法第12条(信託による詐害行為の取消し)の規定に該当する場合には、それぞれの規定により取消しを請求するものとする。


目次

● 国税通則法基本通達(徴収部関係)の制定について

● 引用の法令番号

● 省略用語