第2節 国税の納付義務の承継等

納付義務を承継する者 

(相続人)

1 法第5条第1項の「包括受遺者」には、包括名義の死因贈与を受けた者が含まれる。

(胎児)

2 相続人のうちに胎児がある場合には、国税の納付義務の承継については、出生の時までは、その胎児は相続人でないものとして取り扱う(大正6.5.18大判、昭和7.10.6大判参照)。

(相続人が明らかでない場合)

3 被相続人の婚姻につき、無効の訴え又はその調停が係属しているときその他相続の効果をもつ身分関係の存否の確定に関し係争中であるとき等相続人が明らかでない場合は、原則として、その無効の訴えその他その係争事由がないものとした場合における相続人に対して、法第5条の規定を適用することに取り扱う。

承継する国税

(課されるべき国税)

4 法第5条第1項の「課されるべき国税」とは、相続開始の時において、被相続人について納付義務は成立しているが、国税に関する法律に定める手続又は規定により、納付すべき税額が確定していない国税をいう。

(納付すべき国税)

5 法第5条第1項の「納付すべき国税」とは、相続開始の時において、被相続人について国税に関する法律に定める手続又は規定により、その納付すべき税額が確定している国税をいう。

(徴収されるべき国税)

6 法第5条第1項の「徴収されるべき国税」とは、被相続人につき徴収されるべきこととされている源泉徴収等による国税で、相続開始時までに徴収がされていないものをいう。

承継の効果

(納税の猶予等の効力の承継)

7 被相続人の国税について次の処分又は行為がされている場合にも、相続人は当該処分又は行為がされた状態でその国税を承継する。

(1) 納期限の延長、延納、納税の猶予、徴収若しくは滞納処分に関する猶予又は滞納処分の停止

(2) 物納の許可

(3) 納期限の延長の申請、延納の申請、納税の猶予の申請、納税の猶予の期間の延長の申請、換価の猶予の申請、換価の猶予の期間の延長の申請又は物納の申請

(4) 担保の提供

限定承認

(相続によって得た財産)

8 法第5条第1項後段の「相続によって得た財産」とは、限定承認をした相続人が、相続によって被相続人から承継した積極財産(遺贈の目的となった財産を含む。民法第931条参照)をいう。
 なお、相続によって得た財産から生じた果実又は相続によって得た財産である株式から生じた利益配当請求権は、相続開始後に確定したものも相続によって得た財産に含まれるものとする(大正3.3.25大判、大正4.3.8大判参照)。

(注) 被相続人を被保険者とする生命保険金で、特定の相続人が保険金受取人に指定されているものは、相続によって得た財産とならない(昭和11.5.13大判、昭和40.2.2最高判参照)。

相続人が2人以上ある場合の承継税額

(承継国税額のあん分の割合)

8-2 法第5条第2項の規定の適用については、遺言による相続分の指定がない限り、民法第900条《法定相続分》及び第901条《代襲相続人の相続分》の規定により算出した相続分(以下第5条関係において「法定相続分」という。)による。

(包括遺贈等の割合)

9 包括遺贈の割合又は包括名義の死因贈与の割合は、法第5条第2項の指定相続分に含まれるものとする。

(指定相続分と遺留分との関係)

10 相続分の指定が、民法の遺留分に関する規定に違反しているものであっても、法第5条第2項の規定の適用については、その指定相続分による。

(相続分の指定の委託を受けた者がその指定をしない場合)

11 相続分の指定の委託を受けた者が、その委託を承諾しない場合又は相当期間を経過してもその指定をしない場合における法第5条第2項の規定の適用については、法定相続分によるものとする。

(指定相続分が明らかでない場合)

12 相続分を指定した遺言の効力について争いがある等のため、指定相続分が明らかでない場合における法第5条第2項の規定の適用については、法定相続分によることに取り扱う。

(連帯納付義務の場合)

13 連帯納付義務者の1人が死亡した場合において、その相続人が2人以上あるときは、各相続人は被相続人の連帯納付義務に係る国税を、法第5条第2項の規定による相続分によりあん分して計算した額につき、他の連帯納付義務者とともに連帯して納付する義務を承継する。この場合、相続人相互間には納付責任の関係のみが生じ、連帯納付義務の関係は生じないものとする(昭和34.6.19最高判参照)。

納付責任

(相続によって得た財産の価額)

14 法第5条第3項の「相続によって得た財産の価額」は、相続があった時におけるその相続により承継した積極財産の価額によるものとする。

(承継国税に係る延滞税、利子税がある場合の納付責任の範囲)

15 法第5条第3項の「同項の規定により計算した国税」には、相続人が承継した国税に併せて納付すべき延滞税又は利子税が含まれるものとする。

(連帯納付義務等がある場合の納付責任の範囲)

16 相続人が承継した国税のうちに、連帯納付義務、連帯納付責任、第二次納税義務、国税の保証債務又は納付責任の額がある場合において、それらの額が他の連帯納付義務者若しくは連帯納付責任者、主たる納税者又は他の相続人の履行により消滅したときにおける法第5条第3項の「同項の規定により計算した国税の額」は、その消滅した額(連帯納付義務にあっては、消滅した額のうちその相続人の負担部分に応じた額を超える額)を控除した額とする。

(他の相続人による履行と納付責任との関係)

17 相続人の1人が、その承継した国税の額の全部又は一部を履行したときは、他の相続人の納付責任は、その納付責任の基因となった国税の残額の範囲内においてなお存続するものとする。

(相続税法第34条第2項との関係)

18 法第5条第3項の規定は、相続税法第34条第2項《連帯納付の義務等》の規定の適用を受ける相続税又は贈与税については適用されない。
 なお、法第5条第3項の規定の適用を受ける国税と上記の相続税又は贈与税とがある場合には、法第5条第3項及び相続税法第34条第2項の規定により当該相続人が納付の責めに任ずる国税の総額は、その相続人が相続により得た財産の価額からその者が法第5条第2項の規定により承継した国税の額を控除した額を限度とする。

徴収手続

(相続人が2人以上ある場合の更正決定等)

19 相続人が2人以上ある場合の更正決定等、納税の告知又は督促は、各相続人が承継した国税について各別にしなければならない。この場合、納付責任については、「通則法第5条第3項の規定による納付の責めがある」旨の文言を記載するものとする。

(被相続人の国税につき督促がされている場合の催告)

20 被相続人の死亡前に督促がされている国税につき、その相続人に対して差押えをしようとする場合には、法第38条第1項各号《繰上請求の事由》に掲げる事由がある場合その他緊急を要する場合を除き、あらかじめ、その相続人の納付すべき承継税額及び納付責任の額について催告することに取り扱う。

(清算手続と滞納処分)

21 相続財産に対しては、民法第927条《相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告》又は第957条第1項《相続債権者及び受遺者に対する弁済》に規定する債権申出期間内であっても、滞納処分をすることができる(同法第929条ただし書、第935条ただし書、昭和4.5.15名古屋地判参照)。

(相続人等に異動を生じた場合)

22 認知、胎児の出生、指定相続分の判明、遺産の分割その他の事由により相続人又は相続分若しくは相続財産に異動を生じた場合であっても、その前に生じた承継国税及び納付責任の消滅の効果には影響を及ぼさないものとする(民法第784条ただし書、第909条ただし書参照)。


目次

● 国税通則法基本通達(徴収部関係)の制定について

● 引用の法令番号

● 省略用語