1 残余金の処理

(1) 残余金の交付
 差押競合債権に係る第三債務者からの取立金若しくは法第20条の6第1項の規定により供託された金銭の払渡金又は売却代金について滞納者に交付すべき残余(以下この条関係において「残余金」という。)が生じたときは、徴収職員は、徴収法第129条第3項の規定にかかわらず、これを執行裁判所に交付しなければならない(この条1項において準用する法6条1項)。

(2) 残余金の交付手続
 残余金が生じた場合又は生じなかった場合は、第6条関係に定めるところに準じて処理する(この条1項において準用する法6条1項及び3項。最高裁通達八の1参照)。

2 差押登記のまつ消

 登記(登録を含む。以下この項において同じ。)関係機関は、差押競合債権で権利の移転につき登記を要するもの、又は登記された先取特権、質権若しくは抵当権によって担保されるもの(執行法150条参照)について換価処分による権利移転の登記をしたときは、強制執行による差押えの登記をまつ消しなければならないこととされている(この条及び令12条の10において準用する法16条)。従って、税務署長は、そのまつ梢の登記の嘱託は要しないことに留意する。

3 強制執行続行の決定の申請

 差押競合債権の差押債権者は、法第8条各号に掲げる事実(第8条関係1から3まで参照)がある場合には、執行裁判所に対し強制執行続行の決定を申請することができる(この条1項において準用する法8条)。

4 強制執行続行の決定の手続き

 差押競合債権の差押債権者が当該債権につき執行裁判所に強制執行続行の決定を申請した場合には、執行裁判所は、徴収職員の意見を聞いた上で強制執行続行の決定をすることができる(この条1項において準用する法9条)が、この場合においては、徴収職員は、第9条関係1及び2に定めるところに準じて処理する。

(注) 強制執行続行の決定があったときは、徴収職員は、法第20条の6第1項の規定による供託に係る供託書正本を執行裁判所に送付しなければならない(令12条の9第1項)。

5 強制執行続行の決定があった場合におけるみなし交付要求

 差押競合債権について強制執行続行の決定があったときは、滞納処分による差押えについては、法第36条の3第2項本文の規定による通知があったものとみなされる(この条2項)。この場合において、法第36条の6第1項の規定又は法第36条の7において準用する執行法第157条第5項の規定により供託された金銭について執行裁判所が配当等を実施するときは、法第36条の10第1項の規定により、滞納処分による差押えの時に交付要求があったものとみなされる。

(注) 上記の場合においては、徴収職員は、速やかに、「滞納現在額申立書」(別紙様式17。令29条1項3号)を執行裁判所に送付するものとする(令29条2項参照)。

6 強制執行続行の決定があった場合の効果

 差押競合債権について強制執行続行の決定があったときは、この法律の適用については、滞納処分による差押えは強制執行による差押え後にされたものとみなされる(この条1項において準用する法10条1項)。

7 滞納処分による差押えの解除

(1) 差押えを解除した旨の通知

イ 差押競合債権について、法第20条の3第2項本文の規定による通知又は法第20条の6第2項の規定による事情届がされている場合において、滞納処分による差押えを解除したときは、徴収職員は、「差押え及び交付要求解除(通知)書」(別紙様式10)により執行裁判所にその旨を通知しなければならない(この条1項において準用する法14条)。

ロ 差押解除に係る滞納処分による差押えに次いで他の滞納処分による差押えがされている場合には、その差押えをした徴収職員等に対し、上記イに準じて差押えを解除した旨を通知をするものとする。

ハ 上記イの通知をした場合において、徴収職員が徴収法第81条の通知をするときは、第14条関係2に定めるところに準じて処理する(令12条の7第2項において準用する令7条2項)。

(2) 差押えの解除に伴う処理

イ 徴収職員は、法第20条の6第1項の規定による供託に係る金銭債権について、滞納処分による差押えの全部を解除したときは供託書正本を、その一部を解除したときは第20条の6関係5の(1)のロの後段に定める方法により作成した「供託書正本の保管を証する書面」を、上記(1)のイの「差押え及び交付要求解除(通知)書」(別紙様式10)に添付しなければならない(令12条の7第3項)。

ロ 上記(1)のロに該当する場合には、上記イの供託書正本又は「供託書正本の保管を証する書面」は、他の滞納処分による差押えをした徴収職員等に対する差押えを解除した旨の書面に添付する。

8 差押命令の申立ての取下げ等の通知

 差押競合債権について、法第20条の3第2項本文の規定による通知又は法第20条の6第3項の規定による通知があった場合において、強制執行による差押命令の申立てが取下げられたとき又は差押命令を取消す決定が効力を生じたときは、裁判所書記官は、規則第23条の5において準用する規則第17条に掲げる事項を記載した書面(債権執行事件等終了通知書)により、徴収職員に通知することになっている(この条1項において準用する法15条)。

9 動産の引渡しを目的とする差押競合債権の場合の特例

(1) 滞納処分による差押えを解除する場合

イ 差押競合債権で動産の引渡しを目的とするものにつき滞納処分による差押えを解除する場合で、執行官から規則第23条の5第2項の規定による通知を受け、かつ、既に徴収職員が引渡しの目的となっている動産の取立てをしているときは、徴収職員は、令第12条の7第4項において準用する令第3条第1項第1号から第4号までに掲げる事項を記載した書面により執行官に通知するとともに、動産を執行官に引渡さなければならない(この条1項において準用する法5条1項本文)。この場合の引渡手続等については、第5条関係1から7まで(4の(2)を除く。)に定めるところに準じて処理するものとする(最高裁通達八の2参照)。

(注)

1 上記の引渡しについては、法第5条第1項ただし書の規定を準用する場合がないことに留意する。

2 滞納処分による差押え後に強制執行による差押命令が発せられた動産の引渡請求権につき執行法第163条第1項の申立てを受けた場合において、その滞納処分を知ったときは、執行官は、その申立てが取下げられたとき又はその申立てが却下されたときを除き、規則第23条の5第2項各号に掲げる事項を徴収職員に通知することになっている(規則23条の5第2項)。

3 滞納処分による差押え後に、強制執行による差押命令が発せられた動産の引渡請求権につき規則第23条の5第2項の規定による通知があった場合において、執行法第163条第1項の申立てが取下げられたとき又はその申立てが却下されたときは、執行官は、その旨を徴収職員に通知することになっている(規則23条の5第3項)。

ロ 徴収職員は、上記イにより取立てた動産を執行官に引渡する前に、徴収法第81条に規定する者に対し、令第12条の7第5項に掲げる事項を通知しなければならない。この場合においては、この通知を受けた徴収職員等が執行裁判所に対して交付要求をすることができる期間を見込んで動産の引渡しをすべき日を定めるものとする。
 なお、上記の通知をした者に対しては、徴収法第81条の通知をすることを要しない(令12条の7第6項)。

(注) 徴収職員が動産の取立てをし、動産として差押えた場合(徴収法67条2項)において、その動産に対する滞納処分につきされた交付要求(参加差押えを含む。)は、上記イにより執行官に動産の引渡しをしたときは、その効力を失うことに留意する。

(2) 強制執行続行の決定
 差押競合債権で動産の引渡しを目的とするものにつき強制執行続行の決定があった場合において、徴収職員がその目的となっている動産の取立てをしているときは、徴収職員はその動産を執行官に引渡さなければならない(この条1項において準用する法10条2項及び5条1項本文)。この場合の引渡手続等については、上記(1)に定めるところに準じて処理する(令12条の9第2項において準用する令12条の7第4項から6項まで)。

(3) 交付要求
 差押競合債権で動産の引渡しを目的とするものにつき強制執行続行の決定があった場合において、滞納処分による差押えをした国税を徴収するためには、徴収職員は、執行官にその動産の引渡しをする日までに執行裁判所に対して交付要求をしなければならない(この条1項において準用する法10条3項。執行法165条4号)。この場合の「交付要求書」には、この条第1項において準用する法第10条第3項の交付要求である旨を本文に記載するものとする(第10条関係3参照)。

(注) 徴収法第12条の規定は、上記の場合において適用される(この条1項において準用する法10条4項)。

10 差押競合の条件付等債権の場合の特例

(1) 強制執行による換価の制限
 差押競合債権で条件付若しくは期限付であるもの又は反対給付に係ることその他の事由によりその取立てが困難であるもの(以下この節において「差押競合の条件付等債権」という。)については、売却命令、管理命令その他相当な方法による換価を命ずる命令(執行法161条1項)は、強制執行続行の決定があったときを除き、滞納処分による差押えが解除された後でなければすることができない(この条1項において準用する法13条1項)。

(2) 交付要求
 差押競合の条件付等債権で動産の引渡しを目的としないものについて強制執行続行の決定があった場合(第三債務者が法20条の6の規定によりその債権の全額に相当する金銭を供託したときを除く。)は、徴収職員は、滞納処分による差押えに係る国税を徴収するためには、執行裁判所にその交付を求めなければならない(この条1項において準用する法10条3項)。この場合の「交付要求書」には、この条第1項において準用する法第10条第3項の交付要求である旨を本文に記載するものとする(第10条関係3参照)。

(注) 徴収法第12条の規定は、上記の場合において適用される(この条1項において準用する法10条4項)。

(3) 差押えを解除した場合における執行裁判所への債権証書の交付
 徴収職員が差押競合の条件付等債権について、その債権の全部の差押えを解除した場合において、その差押えに係る債権に関する証書を取上げているときは、その証書を7の(1)のイの「差押え及び交付要求解除(通知)書」(別紙様式10)に添付しなければならない(令12条の7第7項)。この場合においては、この「差押え及び交付要求解除(通知)書」の「備考」欄に債権証書を添付する旨を記載するものとする。
 なお、差押えの解除に係る滞納処分による差押えに次いで他の滞納処分による差押えがされている場合において、7の(1)のロの通知をするときも上記と同様の処理をするものとする。


目次

● 滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律の逐条通達(国税庁関係)の全文改正について

● 引用の法令番号一覧表

● 主用省略用語一覧表