1 引渡すべき動産の確認と執行官との事前協議

 徴収職員は、二重差押えがされた動産について滞納処分による差押えを解除する場合には、「差押財産引渡通知書」(別紙様式3。令3条1項)を執行官に送付する前に、原則として、引渡すべき動産をその所在場所において確認する。また、執行官と連絡がとれる場合は、あらかじめ、引渡しの日時、引渡場所その他引渡しに必要と認められる事項について、執行官と協議するものとする。

(注) 滞納処分による差押えを解除すべき場合において、二重差押えがされた動産につき強制執行による差押え前に参加差押えがされているときは、その参加差押えに基づく滞納処分による差押えの効力の発生は、徴収法第87条第1項の規定にかかわらず、この法律の適用については、この条関係4の(2)に掲げる場合を除き、強制執行による差押えの時以前にさかのぼらないことに留意する(この条3項本文)。

2 「差押財産引渡通知書」の送付

 徴収職員は、執行官に二重差押えがされた動産の引渡しをしようとする場合には、その動産の差押えの解除に先立って、執行官との事前協議後(この条関係1)、速やかに「差押財産引渡通知書」(別紙様式3)により通知しなければならない(令3条1項)。

(注)

1 二重差押えがされた動産につき、滞納処分による差押えを解除すべきとき(徴収法79条1項参照)又は差押えの解除ができるとき(同法79条2項参照)は、その動産を執行官に引渡した後において差押えを解除することに留意する。

2 滞納処分による差押えの際債権者及び債務者以外の第三者が占有していた動産についてその差押えを解除する場合には、当該第三者の住所及び氏名を「差押財産引渡通知書」に記載するものとする(令3条1項5号参照)。

3 債権者又は債務者が占有していた動産の引渡手続き等

 二重差押えがされた動産で滞納処分による差押えの際債権者又は債務者が占有していたものにつき差押えを解除する場合における動産の引渡手続等は、この条関係1及び2に定めるところによるほか、次により行う。

(1) 徴収職員は、原則として、執行官に引渡すべき動産の保管場所において、その動産を直接執行官に引渡す。ただし、その動産を執行官の管轄区域外に搬出している場合には、できる限り執行官の管轄区域内(第3条関係1参照)においてその動産を引渡すものとする。また、徴収職員以外の者にその動産を保管させている場合において、税務署(国税局及び沖縄国税事務所を含む。以下同じ。)で引渡すことが執行官にとって便利であり、かつ、搬出等に要する費用がきん少であると認められるときは、その動産を税務署に搬入した上執行官に引渡しても差支えない。

(2) 徴収職員以外の者で動産の保管をしている者に直接に執行官への動産の引渡しをさせようとする場合は、「差押財産引渡依頼書」(別紙様式4。令3条2項)を「差押財産引渡通知書」(別紙様式3)に添えて執行官に送付する(令3条2項)。
 この場合において、執行官から保管者が動産の引渡しを拒んだ旨の通知を受けたときは、改めて、徴収職員は、直接その動産を執行官に引渡すものとする(最高裁通達二の3)。

(3) 執行官は、動産の引渡しを受けた場合においては、速やかに、その旨を徴収職員に通知することになっている(規則7条3項)ので、徴収職員は、この通知を受けたときは、「差押財産引渡通知書」(別紙様式3)の決議書に記載されている動産の表示とを直ちに照合し、その表示と異なるときは、その誤りを是正するなど所要の措置を講ずるものとする。

(4) 徴収職員は、上記(3)に定める処理を行った後に、動産の引渡しをした時を差押解除の時として「差押解除書及び差押財産引渡済通知書」(別紙様式5)により、滞納者及び徴収法第81条に掲げる者に対して通知するものとする(徴収法80条1項本文、令3条3項)。

4 債権者及び債務者以外の第三者が占有していた動産の引渡手続き等

(1) 第三者が執行官への引渡しを拒んでいない場合
 二重差押えがされた動産で滞納処分による差押えの際債権者及び債務者以外の第三者が占有していたものにつき、滞納処分による差押えを解除する場合には、その第三者がその動産の執行官への引渡しを拒んでいないことを執行官に確認の上、執行官への引渡し及び差押えの解除を行うものとする。この場合における動産の引渡し及び差押えの解除の手続は、この条関係1から3までに定めるところによるほか、次により行う。

イ 第三者が動産の引渡しを拒んでいない場合には、執行官はその第三者から「動産差押承諾書」の提出を受けることになっている(最高裁通達二の1)ので、徴収職員は、「動産差押承諾書」の提示を受けた後に、その動産を執行官に引渡すものとする。また、第三者が引渡しを拒んでいないにもかかわらず「動産差押承諾書」が未提出である場合において、執行官がその旨を徴収職員に申出たときも同様に取扱う(最高裁通達二の2ただし書参照)。

ロ 第三者が執行官に動産の引渡しを拒んでいないことを執行官に確認した事績は、「差押財産引渡通知書」(別紙様式3)の決議書の余白に記載しておくものとする。

(2) 第三者が執行官への引渡しを拒んでいる場合
 二重差押えがされた動産で滞納処分による差押えの際債権者及び債務者以外の第三者が占有していたものにつき、滞納処分による差押えを解除する場合において、その第三者が執行官への引渡しを拒んだときは、徴収職員は、この条関係1及び2に定めるところによるほか、次により動産の引渡し及び差押えの解除の手続きを行う。

イ 執行官が第三者から動産の引渡しを拒まれた場合は、その旨を徴収職員に通知することになっている(規則7条3項後段)ので、この通知を受けたときは、徴収職員は、その動産について参加差押えがされているときを除き、差押えを解除し、動産を第三者に引渡す。

ロ 執行官から上記イの通知を受けた場合において、その動産につき参加差押えがされているときは、徴収職員は、その参加差押え(2以上の参加差押えがされているときは、そのうち最も先にされたもの)をしている徴収職員、徴税吏員及びその他滞納処分を執行する権限を有する者(以下「徴収職員等」という。)にその動産を引渡さなければならない(徴収法87条2項前段。法5条4項参照)。

ハ 上記ロにより、二重差押えがされた動産を参加差押えをしている徴収職員等に引渡したときは、法第3条第2項の規定により交付された「差押書」をその徴収職員等に引渡すとともに「差押財産引渡済通知書」(別紙様式6。令3条4項)を執行官に送付しなければならない(令3条4項)。

(注) 「差押書」を参加差押えをしている徴収職員等に引渡すときは、「参加差押関係書類引渡書」(様式通達第23号様式)を使用することに留意する。

5 引渡しをするときまでの保管費用

(1) 国が一時負担する保管費用
 徴収職員が「差押財産引渡通知書」(別紙様式3)を執行官に交付した日の翌日から執行官が現実に動産の引渡しを受けるときまでの保管に要する費用は、強制執行の費用とされる(規則7条5項)が、徴収職員は、その保管者にその費用を支払わなければならない。
 なお、徴収職員が保管者に支払った費用は、執行官から徴収することになる。

(2) 国が負担する保管費用
 滞納に係る国税(滞納処分費を含む。以下同じ。)の完納等差押えを解除すべき原因が生じた時から「差押財産引渡通知書」(別紙様式3)を執行官に送達した日までの期間の保管費用は、滞納処分費として滞納者から徴収することはできない。

(3) 保管費用の記載
 執行官が上記(1)に規定する費用に相当する金銭を徴収職員に対して支払う場合の便宜のため、徴収職員は、「差押財産引渡通知書」(別紙様式3)に1日当りの保管費用を付記するものとする。

6 引渡しをするときまでの保管責任

 徴収職員が、執行官に対し「差押財産引渡通知書」(別紙様式3)を送付しても、現実に執行官が動産の引渡しを受けるときまでは、徴収職員は、差押えを解除しないで占有を継続しているのであるから、その間の保管責任は、原則として徴収職員が負うことになる。

(注) 二重差押えがされている動産について、徴収職員又はその動産を保管している第三者が故意又は過失により、その動産の一部を亡失し、又はき損したときであっても執行官に対するその動産の引渡しは、その引渡しの時の現況において行うものである。この場合においては、執行官に執行を申立てた差押債権者又は滞納者は、国家賠償法第1条第1項の規定により、国に対して損害賠償の請求ができる場合もあることに留意する。

7 仮処分の執行がされている動産の引渡し

 仮処分の執行がされている動産に対し滞納処分による差押えをした後に強制執行による差押えがされた場合には、仮処分の執行によりその動産を占有していた執行官は、債権者及び債務者以外の第三者でその動産を占有していたものに当るから、法第5条第1項ただし書の適用がある。従って、強制執行による差押えをした執行官に対してその動産の引渡しをするに当っては、この条関係4に定めるところにより処理する。

8 滞納処分による差押えを取消した場合の手続き

 二重差押えがされた動産につき、滞納処分による差押手続にかしがあるため、その差押えを取消す場合における動産の引渡し及び差押えの取消しに関する手続は、この条関係1から7までに定めるところに準じて処理するものとする。


目次

 滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律の逐条通達(国税庁関係)の全文改正について

 引用の法令番号一覧表

 主用省略用語一覧表