第2章 滞納処分による差押えがされている財産に対する強制執行等

第1節 動産に対する強制執行等

1 執行官

 滞納処分による差押えがされている動産に対する強制執行による差押えは、当該動産の所在地を管轄する地方裁判所の所属の執行官が行う(滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する規則(以下「規則」という。)4条1項)。
 なお、執行官は、上記の差押えをする場合において、必要があるときは、債権者の申立てにより、管轄区域外において職務を行うことができる(規則4条2項。執行官法4条参照)。

2 差押えに関する書類の閲覧等の請求

(1) 差押えに関する書類の閲覧等の請求があった場合
 執行官から、滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する政令(以下「令」という。)第2条に規定する滞納処分による差押えに関する書類で差押調書その他その動産についての権利関係の確認又は評価の資料となるもの(以下「令第2条に規定する書類」という。)の閲覧若しくは謄写又は謄本の交付の請求があったときは、徴収職員はその請求に応じなければならない。

(2) 重ねて令第2条に規定する書類の閲覧等の請求があった場合
 この条の規定による差押えがされている場合において、重ねて同一又は他の執行官から令第2条に規定する書類の閲覧若しくは謄写又は謄本の交付の請求があったときは、徴収職員は、その請求に応じて差支えない。この場合においては、徴収職員は、既に強制執行による差押えがされている旨をその執行官に適宜の方法により通知するものとする。

3 閲覧若しくは謄写又は謄本の交付の請求に応ずる書類の範囲

 執行官からの閲覧若しくは謄写又は謄本の交付の請求に応ずる令第2条に規定する書類は、おおむね次に掲げるものである。

(1) 差押調書(国税徴収法施行規則(以下「徴収規則」という。)3条1項。別紙第3号書式)

(2) 交付要求書(徴収規則3条1項。別紙第7号書式)

(3) 交付要求解除通知書(昭和34年11月10日付徴徴2- 35ほか1課共同「新国税徴収法の施行に伴う滞納整理関係書類の様式及びその調理要領について」通達の別冊(以下「様式通達」という。)第18号様式(その1))

(4) 参加差押書(徴収規則3条1項。別紙第8号書式)

(5) 参加差押解除通知書(様式通達第29号様式(その1))

(6) 配当計算書(徴収規則3条1項。別紙第10号書式)

(7) 搬出調書(国税徴収法施行令(以下「徴収令」という。)26条の2第1項参照)

(8) 見積価額評定に関する書類(見積価額評定調書(昭和55年6月5日付徴徴2−9「公売財産評価事務提要の制定について」通達の別冊第1号様式)及び評価書(同通達の別冊第11号様式))。ただし、見積価額を公告しないもの及び公告しない見込みのものについての書類を除く。

(9) 公売実施等決議書(昭和43年10月18日付徴徴2- 28ほか5課共同「換価事務提要の制定について」通達の別冊(以下「換価事務提要」という。)第4号様式)

4 閲覧等の請求手続き

 執行官から令第2条に規定する書類の閲覧若しくは謄写又は謄本の交付の請求があった場合には、徴収職員は、「差押調書等の閲覧(謄写)請求書」(別紙様式1)又は「差押調書等の謄本交付請求書」(別紙様式2)をその執行官から提出させ、閲覧若しくは謄写させ又は謄本を交付したときは、その旨をこれらの請求書の余白に付記しておくものとする。

5 謄本を交付する場合の留意事項

 執行官からこの条関係3に掲げる書類の謄本の交付の請求があった場合には、徴収職員は、次に掲げる事項に留意し、速やかに謄本を作成の上、執行官に交付するものとする。

(1) 執行官が郵送による謄本の交付を求める場合には、必要な郵便切手を徴収職員に提出することになっている(平成2年12月13日付最高裁民3第499号(訟い一2)「滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する事務の取扱いについて」最高裁判所事務総局民事局長通達の記(以下「最高裁通達」という。)一の2)ので、その郵送料に相当する郵便切手の提出を求めること。

(2) 謄本には、その作成年月日及び税務署長(国税局長及び沖縄国税事務所長を含む。以下同じ。)名を記載の上、押印すること。

(3) 差押調書に表示されている事項のうち、差押財産の名称、数量、性質及び所在が公売その他の事由により差押調書謄本作成の時と異なることを徴収職員が知っているとき、差押えの時に差押調書に記載されている財産を第三者が占有していたとき又は執行官が差押えをするに当り留意すべき事項があると徴収職員が認めたときは、それらの事項を記載した書面をできる限り謄本に添付すること。
 なお、交付要求書等の謄本の作成についても、差押調書の謄本の作成に準じて処理するものとする。

6 強制執行による差押えの効力の発生時期

 滞納処分による差押えがされている動産に対する強制執行による差押えは、執行官が「差押書」(規則5条参照)を徴収職員に交付することによって行われる(法3条2項)が、この場合の強制執行による差押えの効力は、「差押書」が徴収職員に交付された時に生ずる。

7 売却代金を受領した時等と強制執行による差押えの効力との関係

 滞納処分による差押えがされている動産につき、徴収職員が換価処分による売却代金を買受人から受領した時又は有価証券に係る金銭債権の取立てをした時までに執行官から「差押書」の交付を受けたときは、強制執行による差押えの効力があるものとして取扱うものとする。

8 執行官から「差押書」を受領した場合の処理

 執行官から「差押書」の交付を受けた場合は、徴収職員は、次に掲げる処理をするものとする。
 なお、受領した「差押書」に記載されている事項が規則第5条に規定する事項を完全に満たしていないが補正可能なものである場合は、徴収職員は、適当な期間を定めて執行官に所要の補正をさせるものとする。

(1) 執行官から交付を受ける「差押書」には、副本1通が添付されることになっている(最高裁通達一の1)ので、この「差押書」の副本に受付年月日を記入し記名した上、速やかに執行官に返送する。この場合の返送に必要な郵便切手は、「差押書」を交付する際、執行官が徴収職員に提出することになっている(最高裁通達一の1)。

(注) 他の執行官から仮差押えをした旨の通知を受けているときは、その旨を「差押書」の副本に記載することに留意する。

(2) 徴収職員が差押えを解除していたことなどの理由により、交付を受けた「差押書」が滞納処分による差押え後にされた強制執行による差押え(以下この章において「二重差押え」という。)の効力が生じない場合においては、その旨を「差押書」に記載して執行官に返送するとともに、その事績を明らかにしておくものとする。

9 差押債権者への公売の通知

 徴収職員は、二重差押えがされた動産を換価する場合には、強制執行をした差押債権者に対して公売する旨の通知をするものとする。ただし、その差押債権者が、徴収法第96条第1項の規定により公売の通知をすべき者である場合には、この通知をすることを要しない。


目次

 滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律の逐条通達(国税庁関係)の全文改正について

 引用の法令番号一覧表

● 主用省略用語一覧表