【照会要旨】

 老齢基礎年金(国民年金)の給付の受給権者が死亡した場合に、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給されていない年金があるときには、その者の配偶者(内縁の配偶者を含む。)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものが、「自己の名」で、その未支給の年金の支給を請求することができることとされています(国民年金法191)。
 老齢基礎年金の受給権者の相続開始時に当該死亡した受給権者に係る未支給年金がある場合に、当該死亡した受給権者に係る当該未支給年金を配偶者等が請求することができる権利(以下「未支給年金請求権」といいます。)は相続税の課税対象となる財産に含まれますか。

【回答要旨】

 未支給年金請求権については、当該死亡した受給権者に係る遺族が、当該未支給年金を自己の固有の権利として請求するものであり、当該死亡した受給権者に係る相続税の課税対象にはなりません。
 なお、遺族が支給を受けた当該未支給年金は、当該遺族の一時所得に該当します。

(理由)

  • 1 国民年金法に基づく未支給年金請求権については、最高裁判決(平成7年11月7日)において、その相続性が否定されています。
     すなわち、国民年金法第19条の規定については、同条が未支給年金の支給請求することのできる者の範囲及び順位について民法の規定する相続人の範囲及び順位決定の原則とは異なった定め方をしており、これは民法の相続とは別の被保険者の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とした立場から未支給の年金給付の支給を一定の遺族に対して認めたものと解されているものです。
     したがって、未支給年金請求権が本来の相続財産として相続税の課税対象となるとは解されません。
  • 2 また、未支給年金請求権は、国民年金法の規定に基づき一方的に付与されるものであることから契約に基づかない権利(請求権)ですが、相続税法第3条第1項第6号に規定する「これに係る一時金」には、継続受取人が受給を受けるべき「定期金が特別に又は選択的に一時金とされる場合の一時金のみが含まれる」こととされている趣旨からすると、照会の未支給年金は、定期金ではなく最初から一時金のみを支給するものであるため、同号に規定するみなし相続財産にも該当しません。
  • 3 以上のことから、未支給年金請求権については、死亡した受給権者に係る遺族が、未支給年金を自己の固有の権利として請求するものであり、死亡した受給権者に係る相続税の課税対象にはなりません。
    なお、遺族が支給を受けた未支給年金は、所得税基本通達34−2により、当該遺族の一時所得に該当します。

【関係法令通達】

 相続税法第3条第1項第6号
 所得税基本通達34−2
 国民年金法第16条、第18条、第19条

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。