【照会要旨】

 当社はリース会社ですが、所有権移転外ファイナンス・リース取引(所得税法施行令第120条の2第2項第5号又は法人税法施行令第48条の2第5項第5号に規定する「所有権移転外リース取引」をいいます。)の貸手に係る消費税法上の取扱いについて教えてください。

【回答要旨】

1 新リース会計基準における取扱い
 新リース会計基準(企業会計基準第34号)(注)における「ファイナンス・リース」とは、契約に定められた期間(以下「契約期間」といいます。)の中途において当該契約を解除することができないリース又はこれに準ずるリースで、借手が、原資産(リースの対象となる資産で、貸手によって借手に当該資産を使用する権利が移転されているものをいいます。)からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該原資産の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリースをいいます(新リース会計基準第11項)。
 また、所有権移転ファイナンス・リースとは、契約上の諸条件に照らして、原資産の所有権が借手に移転すると認められるファイナンス・リースをいい、所有権移転外ファイナンス・リースとは、所有権移転ファイナンス・リース以外のファイナンス・リースをいいます(新リース会計基準第12項、13項)。
 ファイナンス・リースについては、企業会計上、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を行います(新リース会計基準第45項)。

(注) 2024年9月13日に新リース会計基準が公表されました。新リース会計基準は、旧リース会計基準(企業会計準第13号)においてファイナンス・リース取引における貸手の会計処理として認められていた「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法(割賦基準)が廃止される等の改正が行われています。
 新リース会計基準は、金融商品取引法の適用会社等において2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されることとされていますが、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から当該会計基準を適用できることとされています。

2 消費税法上の取扱い

(1) 原則的な取扱い
 法人税法又は所得税法の規定における「リース取引」とは、所有権が移転しない土地の賃貸借等を除き、資産の賃貸借で次に掲げる要件に該当するものをいい、そのリース取引の目的となる資産(以下「リース資産」といいます。)の賃貸人から賃借人への引渡しの時に、当該リース資産の売買があったものとされます(所得税法67条の2第1項、第3項、法人税法64条の2第1項、第3項)。
イ 当該賃貸借に係る契約が、賃貸借期間の中途においてその解除をすることができないものであること又はこれに準ずるものであること(解約不能のリース取引)
ロ 当該賃貸借に係る賃借人が当該賃貸借に係る資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受することができ、かつ、当該資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであること(フルペイアウトのリース取引)
 所有権移転外ファイナンス・リースは、これらの規定における「リース取引」に該当するものと考えられます。
 したがって、この場合においては、消費税法上においても、原則として、リース資産の引渡し(以下「リース譲渡」といいます。)の時に当該リース資産の売買があったものとして、リース譲渡をした日が資産の譲渡等の時期となります。

(2) リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例(経過措置)
令和7年度税制改正前においては、リース譲渡を行った事業者(貸手)が、同改正前の所得税法第65条第1項(リース譲渡に係る収入及び費用の帰属の時期)又は法人税法第63条第1項(リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例)の適用を受けるため延払基準の方法により経理することとしているときは、消費税についても、そのリース譲渡に係る賦払金の額でそのリース譲渡をした日の属する課税期間においてその支払の期日が到来していないものに係る部分については、その課税期間において資産の譲渡等を行わなかったものとみなして、その部分に係る対価の額をその課税期間におけるリース譲渡に係る対価の額から控除することができました(旧消費税法第16条第1項)。
 当該特例は、令和7年度税制改正により廃止されましたが、経過措置により一定期間、当該特例を適用することができます。
 経過措置の概要については、次のとおりです。

○ 経過措置の概要(法人の場合)

1 令和7年4月1日(以下「施行日」といいます。)前に、旧消費税法第16条第1項に規定するリース譲渡(以下「旧リース譲渡」といいます。)を行った事業者の施行日前に開始した事業年度に含まれる各課税期間に係る消費税については、特例を適用することができます。

2 施行日前に旧リース譲渡を行ったことがある事業者については、令和12年3月31日以前に開始する事業年度に含まれる各課税期間(経過措置課税期間)は、引き続き、特例の適用を受けることができます。
詳しくは、リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例(経過措置)の詳細についてをご参照ください。

3 経過措置により特例の適用を受けている事業者が、特例の適用要件を満たさないこととなった場合には、その満たさないこととなった事業年度の末日の属する課税期間において、未計上部分を一括計上するか、その課税期間以後10年間で均等額を計上(10年均等計上)します。

4 経過措置課税期間が満了した場合に、特例の適用を受けている旧リース譲渡について、未計上部分がある場合には、その満了した事業年度の末日の属する課税期間において、未計上部分を一括計上するか、その課税期間以後に10年均等計上します。

(注) 10年均等計上の期間中に、事業の廃止等があった場合には、その廃止等があった課税期間において未計上部分を一括計上することとされています。
 また、10年均等計上の期間中に合併等があり、旧リース譲渡に係る事業を合併法人等に承継させた場合には、一定の場合を除き、その合併法人等が引き続き10年均等計上をすることができることとされています。

【関係法令通達】

 令和7年改正法附則第22条、令和7年改正消令附則第3条、所得税法第67条の2第1項、第3項、法人税法第64条の2第1項、第3項、消費税法基本通達5-1-9

注記
 令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。