【照会要旨】

 所有権移転外ファイナンス・リース取引(所得税法施行令第120条の2第2項第5号又は法人税法施行令第48条の2第5項第5号に規定する「所有権移転外リース取引」をいいます。)について、契約期間終了前に次に掲げる事由に該当し、リース契約を解約した場合に賃借人が賃貸人に支払うこととなる残存リース料は、消費税法においてどのように取り扱われるのでしょうか。
 なお、賃貸人は、当該取引について、旧消費税法第16条第1項に規定するリース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例(またはその経過措置)の適用(注)を受けています。

  • (1) 賃借人の倒産、リース料の支払遅延等の契約違反があったとき
  • (2) リース物件が滅失・毀損し、修復不能となったとき
  • (3) リース物件の陳腐化のための借換えなどにより、賃貸人と賃借人との合意に基づき解約するとき

    (注) 令和7年度税制改正により、リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例は廃止されましたが、一定の事業者は、経過措置により一定期間(法人については、令和12年3月31日以前に開始する事業年度に含まれる課税期間まで)、当該特例を適用することができます。
     リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例の経過措置の概要については、「所有権移転外ファイナンス・リース取引の場合の資産の譲渡等の時期について(経過措置)」をご参照ください。

    【回答要旨】

    • 1 賃借人の取扱い
      • (1) 賃借人の倒産、リース料の支払遅延等の契約違反があったとき
         残存リース料の支払は課税仕入れに該当しません。
         また、賃借人が賃貸人にリース物件を返還し、残存リース料の一部又は全部が減額された場合、賃借人はリース物件の返還をした時に資産の譲渡を行ったものとして取り扱われます。
      • (2) リース物件が滅失・毀損し、修復不能となったとき
         残存リース料の支払は課税仕入れに該当しません。
         また、リース物件が滅失・毀損し、修復不能となったことを起因として賃貸人に保険金が支払われることにより、残存リース料の一部又は全部が減額された場合、この減額した金額は仕入れに係る対価の返還等として取り扱われます。
      • (3) リース物件の陳腐化のための借換えなどにより、賃貸人と賃借人との合意に基づき解約するとき
         残存リース料の支払は課税仕入れに該当しません。
         また、賃貸人と賃借人との合意に基づき、残存リース料の一部又は全部が減額された場合、この減額した金額は仕入れに係る対価の返還等として取り扱われます。
    • 2 賃貸人の取扱い
      • (1) 賃借人の倒産、リース料の支払遅延等の契約違反があったとき
         賃貸人においては、リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例(「所有権移転外ファイナンス・リース取引の場合の資産の譲渡等の時期について(経過措置)」をご参照ください。)を適用していたリース譲渡に係る契約解除等を行った事業年度終了の日の属する課税期間(以下「解除等の日の属する課税期間」といいます。)に残存リース料を対価とする資産の譲渡等を行ったものとみなされ、消費税が課されることとなります。
         また、賃借人から賃貸人へのリース物件の返還に基づく賃貸人による残存リース料の減額分は、リース物件の返還があった時において、資産の譲受けの対価として取り扱われます。
      • (2) リース物件が滅失・毀損し、修復不能となったとき
         賃貸人においては、解除等の日の属する課税期間に残存リース料を対価とする資産の譲渡等を行ったものとみなされ、消費税が課されることとなります。
         また、リース物件が滅失・毀損し、修復不能を起因として賃貸人に保険金が支払われることにより、残存リース料の一部又は全部を減額した場合、この減額した金額は売上げに係る対価の返還等として取り扱われます。
      • (3) リース物件の陳腐化のための借換えなどにより、賃貸人と賃借人との合意に基づき、解約するとき
         賃貸人においては、解除等の日の属する課税期間に残存リース料に対して消費税が課されることとなります。
         また、賃貸人と賃借人との間の合意に基づき残存リース料の一部又は全部が減額された場合、この減額した金額は売上げに係る対価の返還等として取り扱われます。

    (理由等)

    1 賃借人の取扱い

    • (1) 賃借人の倒産、リース料の支払遅延等の契約違反があったとき
       中途解約が禁止されている所有権移転外ファイナンス・リース契約であっても、賃借人の倒産、リース料の支払遅延等の契約違反があったときは、賃貸人はリース契約を解除することができます。この場合において、リース物件の資産の譲受けはその引渡しの際に行われていますので、賃借人から賃貸人への残存リース料の支払は、当該資産の譲受けに係るリース債務の返済にすぎないため、消費税法上、課税の対象外となります。
       また、賃借人が賃貸人にリース物件を返還し、残存リース料の一部又は全部が減額された場合、賃借人はリース物件の返還があった時において、代物弁済による資産の譲渡があったものと認められ、代物弁済により消滅する債務の額として、この減額した金額を対価とする資産の譲渡が行われたものとして取り扱われます。
       (消費税法第2条第1項第8号、消費税法施行令第45条第2項第1号)
    • (2) リース物件が滅失・毀損し、修復不能となったとき
       リース物件が滅失・毀損し、修復不能となったときは、賃借人は賃貸人に残存リース料を支払い、リース契約が終了します。この場合において、賃借人から賃貸人への残存リース料の支払は、(1)と同様に、リース債務の返済にすぎないため、消費税法上、課税の対象外となります。
       また、賃貸人にリース物件の滅失等を起因として保険金が支払われることにより残存リース料の一部又は全部が減額される場合、リース料の値引きがあったものと認められ、この残存リース料の減額は仕入れに係る対価の返還等として取り扱われます。
    • (3) リース物件の陳腐化のための借換えなどにより、賃貸人と賃借人との合意に基づき解約するとき
       賃貸人と賃借人との合意に基づきリース契約を解約するときは、賃借人は賃貸人に残存リース料を支払います。
       この場合において、賃借人から賃貸人への残存リース料の支払は、(1)と同様に、リース債務の返済にすぎないため、消費税法上、課税の対象外となります。
       また、賃貸人と賃借人の合意に基づき、リース物件の陳腐化のため、リース物件を廃棄するとともに、残存リース料の一部又は全部を減額する場合、リース料の値引きがあったものと認められ、この残存リース料の減額は仕入れに係る対価の返還等として取り扱われます。

    2 賃貸人の取扱い

    • (1) 賃借人の倒産、リース料の支払遅延等の契約違反があったとき
       賃貸人においては、解除等の日の属する課税期間に残存リース料を対価とする資産の譲渡等があったものとみなされ、消費税が課されることとなります。
       (令和7年改正法附則第22条(旧消費税法第16条第2項)、令和7年改正令附則第3条(旧消費税法施行令第32条第1項、第36条の2第3項))
       また、賃借人が賃貸人にリース物件を返還し、残存リース料の一部又は全部を減額した場合、この減額は、リース物件の返還があった時において、代物弁済が行われたものと認められ、資産の譲受けの対価として取り扱われます。
       (消費税法第2条第1項第12号、消費税法施行令第45条第2項第1号)
    • (2) リース物件が滅失・毀損し、修復不能となったとき
       上記(1)と同様に、賃貸人においては、解除等の日の属する課税期間に残存リース料を対価とする資産の譲渡等があったものとみなされ、消費税が課されることとなります。
       また、賃貸人がリース物件の滅失等を起因として保険金を受け取ることにより残存リース料の一部又は全部を減額する場合、リース料の値引きを行ったものと認められ、この残存リース料の減額は売上げに係る対価の返還等として取り扱われます。
    • (3) リース物件の陳腐化のための借換えなどにより、賃貸人と賃借人との合意に基づき解約するとき
       上記(1)と同様に、賃貸人においては、解除等の日の属する課税期間に残存リース料を対価とする資産の譲渡等があったものとみなされ、消費税が課されることとなります。
       また、賃貸人と賃借人の合意に基づき、リース物件の陳腐化のため、リース物件を廃棄するとともに、残存リース料の一部又は全部を減額する場合、リース料の値引きを行ったものと認められるため、この減額は売上げに係る対価の返還等として取り扱われます。

    【関係法令通達】

     消費税法第2条第1項第8号、12号、消費税法施行令第45条第2項第1号、令和7年改正法附則第22条、令和7年改正令附則第3条、令和7年改正法附則第17条、令和7年改正令附則第17条

    注記
     令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
     この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。