相続により、上場会社であるB社が発行した普通株式に転換が予定されている非上場の株式(株式の内容は下表のとおり)を取得しましたが、未だ転換請求期間前です。このような株式の価額はどのように評価するのでしょうか。
項目 | 内容 | ||||||||
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払込金額 | 1株当たり700円 | ||||||||
優先配当金 | 1株当たり14円
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残余財産の分配 | 普通株式に先立ち、株式1株につき700円を支払い、それ以上の残余財産の分配は行わない。 | ||||||||
消却 | 発行会社はいつでも本件株式を買い入れ、これを株主に配当すべき利益をもって当該買入価額により消却することができる。
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議決権 | 法令に別段の定めがある場合を除き、株主総会において議決権を有しない。 | ||||||||
株式の併合、分割、新株予約権 | 法令に別段の定めがある場合を除き、株式の併合又は分割を行わない。また、新株予約権(新株予約権付社債を含む。)を有しない。 | ||||||||
普通株式への転換 | 普通株式への転換を請求できる。
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普通株式への一斉転換 | X+5年1月30日までに転換請求のなかった優先株式は、X+5年1月31日をもって普通株式に一斉転換される。転換価格は、原則としてX+5年1月31日の普通株式の価額。ただし、当該価額が200円を下回る場合は200円。 |
本件株式の価額は、原則として、利付公社債の評価方法(財産評価基本通達197-2(3))に準じて、払込金額である1株当たり700円を基として評価します。
ただし、課税時期が転換請求期間前である場合には、将来転換される普通株式数が未確定であることから、転換日における普通株式の価額が下限転換価格を下回るリスクを考慮して、本件株式を下限転換価格で普通株式に転換したとした場合の普通株式数(注)を基として、上場株式の評価方法(財産評価基本通達169(1))に準じて評価した価額によっても差し支えありません。
(注) 下限転換価格で転換された場合、普通株式は、本件株式1株当たり3.5株(優先株式の発行価額(700円)÷下限転換価格(200円))発行されることとなる(上表を参照)。
(理由)
本件株式は、普通株式に優先して配当があり、また、普通株式に先立ち払込金額を限度として残余財産の分配が行われることから、その配当を利息に相当するものと考えると、普通株式よりも利付公社債に類似した特色を有すると認められますので、利付公社債に準じて評価します。
ところで、転換時において、普通株式の価額が下限転換価格を上回っている場合には、普通株式の価額で普通株式に転換されることとなりますので、次の算式のとおり普通株式の価額がいくらであっても所有者にとって転換することによる価値の変動はないこととなります。
(転換後の株式数) | |
評価額=普通株式の価額× | (発行価額(700円)÷普通株式の価額) =発行価額(700円) |
しかし、転換時に普通株式の価額が下限転換価格を下回っている場合には、次の算式のとおり下限転換価格によって、普通株式に転換することとなりますので、価値の変動が生ずることとなります。
(転換後の株式数) | |
評価額=普通株式の価額× | (発行価額(700円)÷下限転換価額(200円)) =普通株式の価額×3.5株 |
したがって、課税時期が転換請求期間前である場合には、下限転換価格で普通株式に転換したとした場合の普通株式数を基として、上場株式の評価方法に準じて評価した価額によっても差し支えありません。
財産評価基本通達169(1)、197-2(3)
注記
令和6年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。