類似業種比準方式により株式を評価するに当たり、評価会社が、グループ通算制度における損益通算や欠損金の通算により、その通算グループ内の他の会社の欠損金額を損金の額に算入している場合には、「1株当たりの利益金額」の計算上、評価会社の「法人税の課税所得金額」をどのように計算するのでしょうか。
評価会社において、法人税法第64条の5《損益通算》の規定により他の会社から配分された通算対象欠損金額を損金の額に算入している場合又は同法第64条の7《欠損金の通算》の規定により他の会社の非特定欠損金額を損金の額に算入している場合には、「1株当たりの利益金額」の計算上、評価会社の所得の金額にその損金算入額を加算して「法人税の課税所得金額」を計算します。
(理由)
「1株当たりの利益金額」は、評価会社の経常的な収益力を表すものを採用し、これと類似業種の利益金額とを比較対照して、評価会社の株式の価額を求めるための比準要素であり、評価会社の直前期末以前1年間における「法人税の課税所得金額」を基に計算します。
したがって、ご照会のように、評価会社がその通算グループ内の他の会社の欠損金額を損金の額に算入している場合には、評価会社の所得の金額に他の会社の収益力が反映されることとなるため、その所得の金額は評価会社の収益力を表すものとはいえず、「1株当たりの利益金額」の計算上、これをそのまま採用することは適当ではありません。そのため、この場合には、評価会社の所得の金額にその損金算入額を加算した「法人税の課税所得金額」に基づき、評価会社の収益力を表す「1株当たりの利益金額」を計算する必要があります。
なお、評価会社において、他の会社から配分された通算対象所得金額を益金の額に算入している場合には、「1株当たりの利益金額」の計算上、評価会社の所得の金額からその益金算入額を減算して「法人税の課税所得金額」を計算します。
(注)1 「法人税の課税所得金額」 = a + b + c
上記算式中のa、b及びcは、それぞれ次によります。
a = 法人税申告書別表(以下「別表」といいます。)四の「52」(所得金額又は欠損金額)欄の金額
b = 別表四の「41」(通算対象欠損金額の損金算入額又は通算対象所得金額の益金算入額)欄の金額
c = 別表四の「44」(欠損金等の当期控除額)欄の金額(別表七(一)の「4の計」(当期控除額)欄の繰越欠損金の当期控除額に限ります。)のうち、他の会社の非特定欠損金額の損金算入額
2 評価明細書の記載方法
「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」(以下「評価明細書」といいます。)の「第4表 類似業種比準価額等の計算明細書」の作成に当たって、評価会社がその通算グループ内の他の会社の非特定欠損金額を損金の額に算入している場合には、繰越欠損金の当期控除額(別表四「44」・別表七(一)「4の計」)から他の会社の非特定欠損金額の損金算入額を区分した上で、評価明細書第4表の(法人税の課税所得金額)欄及び(損金算入した繰越欠損金の控除額)欄を記載します。
ただし、この場合に、繰越欠損金の当期控除額から他の会社の非特定欠損金額の損金算入額を区分することが困難なときは、評価明細書第4表の欄に評価会社の所得の金額(別表四「52」)及び他の会社から配分された通算対象欠損金額の損金算入額(別表四「41」)の合計額を記載し、評価明細書第4表の欄に繰越欠損金の当期控除額を一括して記載しても差し支えありません。
(参考)評価明細書第4表の記載例
1 本事例では、P社の所得の金額100(a)、S社から配分された通算対象欠損金額の損金算入額300(b)及びS社の非特定欠損金額の損金算入額100(c)であるため、P社の「法人税の課税所得金額」(a+b+c)は500となり、次のとおり、評価明細書第4表の該当欄を記載します。
評価明細書第4表 直前期末以前2(3)年間の利益金額
2 ただし、例えば、通算グループ内の他の会社が複数ある場合や、複数年分にわたって欠損金額が生じている場合など、上記1のように、P社の繰越欠損金の当期控除額からS社の非特定欠損金額の損金算入額を区分することが困難な場合もあると考えられます。この場合には、次のとおり、評価明細書第4表のJ欄にP社の所得の金額(a)及びS社から配分された通算対象欠損金額の損金算入額(b)の合計額(a+b)を記載し、評価明細書第4表の欄に繰越欠損金の当期控除額を一括して記載しても差し支えありません。
評価明細書第4表 直前期末以前2(3)年間の利益金額
財産評価基本通達183(2)
法人税法第64条の5、第64条の7
注記
令和6年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。