【照会要旨】

 A社とB社は、A社を合併法人、B社を被合併法人とする合併(以下「本件合併」といいます。)を行い、A社は、本件合併の対価として同社の株式のみ交付する予定です。本件合併前に、A社の発行済株式の全てを甲が保有し、B社の発行済株式の全てを甲の妻である乙が保有しており、本件合併後に、甲及び乙が保有するA社株式の全てをその子である丙に譲渡し、丙は、譲り受けたA社株式の全てを継続保有する予定です。
 本件合併においては、合併後に合併法人の株主が、これまで株主ではなかった親族に株式を譲渡することで合併法人の株主ではなくなることが予定されていますが、このような場合でも「同一の者による完全支配関係が継続する」(法令4の32二)として適格合併に該当しますか。

合併後に合併法人の株式が親族に譲渡される場合の同一の者による完全支配関係についての図

【回答要旨】

 本件合併は適格合併に該当します。

(理由)

1 完全支配関係

完全支配関係とは、一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する場合における当該一の者と当該法人との間の関係(以下「当事者間の完全支配の関係」といいます。)又は一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係をいうこととされています(法法2十二の七の六)。そして、ここでいう「一の者」とは、その者が個人である場合には、その者及びこれと特殊の関係のある個人(親族等)とされています(法令4の22)。

2 同一の者による完全支配関係がある場合の適格合併

被合併法人の株主等に合併法人株式又は合併親法人株式のいずれか一方の株式又は出資以外の資産が交付されない合併で、合併前に被合併法人と合併法人との間に同一の者による完全支配関係があり、かつ、合併後にその同一の者と合併法人との間にその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれているものは適格合併に該当することとされています(法法2十二の八イ、法令4の32二)。

3 本照会では、本件合併前に、合併法人(A社)の発行済株式の全てを甲が保有し、被合併法人(B社)の発行済株式の全てを甲の妻である乙が保有していますので、被合併法人(B社)と合併法人(A社)との間には、同一の者による完全支配関係があることとなりますが(国税庁HP質疑応答事例「株主が個人である場合の同一の者による完全支配関係について」)、本件合併後に、株主の甲及びその親族等である乙が、A社株式を譲渡することで、それまで株主でなかった丙に変わり、同一の者による完全支配関係が継続しないこととなるのではないか疑問が生ずるところです。

4 しかし、上記1のとおり、法人との間の完全支配関係の判定において、当該法人の発行済株式を保有する株主が個人である場合には、その個人及びその親族等が一の者とされ、その親族等は合併法人又は被合併法人の株主に限定されていませんので、その個人の親族等で株主でなかった者が株主となったとしても、その者により法人の発行済株式の全てが保有されている場合には、一の者による完全支配関係があることとなります。
 本件合併においては、被合併法人(B社)の株主である乙に対して合併法人(A社)の株式以外の資産が交付されず、本件合併前に合併法人(A社)と被合併法人(B社)との間に同一の者(甲、乙又は丙)による完全支配関係があり、かつ、本件合併後にその同一の者(甲、乙又は丙)による完全支配関係が継続することが見込まれている場合には、本件合併は適格合併に該当するところ、本件合併後の合併法人(A社)の株主が甲及びその親族である乙から甲の親族である丙に変わりますが、甲又は甲の親族等により発行済株式の全てが保有されていることに変わりはありません。このため、本件合併後に同一の者(甲)による完全支配関係があり、甲の親族等である丙は譲り受けたA社株式を継続保有することが見込まれていますので、その同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていることから本件合併は適格合併に該当することとなります。

【関係法令通達】

 法人税法第2条第12号の7の6、第12号の8イ
 法人税法施行令第4条第1項、第4条の2第2項、第4条の3第2項第2号

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。