【照会要旨】

 A社は、B社を吸収合併(以下「本件合併」といいます。)することを予定しています。A社の発行済株式の全部は甲が保有しており、B社の発行済株式の全部は甲の妻である乙が保有しています。この場合、本件合併前に、A社とB社との間には、法人税法施行令第4条の3第2項第2号に規定する同一の者による完全支配関係があると考えてよろしいでしょうか。
 また、被合併法人B社の株主である乙に対しては合併法人株式(A社株式)以外の資産は交付されず、甲及び乙は、本件合併後にA社株式を継続保有することを予定していますが、本件合併は、適格合併に該当しますか。

株主が個人である場合の保有関係についての図

【回答要旨】

 本件合併は、適格合併に該当します。

(理由)

1 完全支配関係
 完全支配関係とは、一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する場合における当該一の者と当該法人との間の関係(以下「当事者間の完全支配の関係」といいます。)又は一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係とされています(法法2十二の七の六)。そして、ここでいう「一の者」とは、その者が個人である場合には、その者及びこれと特殊の関係のある個人(親族等)とされています(法令4の2丸2)。

2 同一の者による完全支配関係がある場合の適格合併
 合併前に被合併法人と合併法人との間に同一の者による完全支配関係があり、かつ、当該合併後に当該同一の者と合併法人との間に当該同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれている場合において、被合併法人の株主等に合併法人株式又は合併親法人株式のいずれか一方の株式又は出資以外の資産が交付されないときには、その合併は適格合併に該当します(法法2十二の八イ、法令4の3丸2二)。

3 本照会において、被合併法人(B社)の発行済株式の全部は乙が保有しており、合併法人(A社)の発行済株式の全部は甲が保有していますので、被合併法人(B社)と合併法人(A社)との間には、同一の者による完全支配関係がないこととなるのではないかとも考えられます。

4 しかし、上記1のとおり、法人との間の完全支配関係の判定に当たり、当該法人の発行済株式を保有する者が個人である場合には、個人及びその親族等が一の者とされていますので、被合併法人と合併法人との間の同一の者による完全支配関係の有無についても、個人及びその親族等を同一の者として判定を行うこととなります。
 本照会における合併法人(A社)については、甲及びその親族等である乙が一の者となり、被合併法人(B社)についても、乙及びその親族等である甲が一の者となりますので、被合併法人(B社)と合併法人(A社)との間には、同一の者(甲又は乙)による完全支配関係があることとなります。そして、被合併法人(B社)の株主である乙に対しては合併法人株式(A社株式)以外の資産は交付されず、甲及び乙は、本件合併後にA社株式を継続保有することが見込まれていますので、本件合併は、適格合併に該当することとなります。

【関係法令通達】

 法人税法第2条第12号の7の6、第12号の8イ
 法人税法施行令第4条の2第2項、第4条の3第2項第2号

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。