分割等対象株式等の発行法人である甲株式会社は、平成19年9月30日にその他資本剰余金を処分し配当を行うことになった。これに伴い、甲株式会社の株主である甲山一郎(特定事業用資産相続人等)は、同社より金銭による配当の交付を受けた。
 なお、甲株式会社は、平成18年5月31日に法人の分割が行われており、分割後の同社の1株当たりの時価(措置法令第40条の2の2第10項の規定により計算した価額)は83,333円であり、対応株式として取得した乙株式会社の株式900株の1株当たりの時価(同条第11項の規定により計算した価額)は5,555円である。

1. 贈与時の甲株式会社の状況等

(1) 分割等対象株式等である甲株式会社の1株当たりの贈与時の価額 100,000円

(2) 甲山一郎が贈与を受けた甲株式会社に係る特定受贈同族会社株式等の株数 300株

(3) 配当前に甲山一郎が有していた甲株式会社に係る特定受贈同族会社株式等の株数

(注) 甲山一郎は、平成18年12月1日に特定受贈同族会社株式等である甲株式会社の株式100株を他の株主に売却している。 200株

(4) 特定贈与者 甲山太郎

(5) 贈与年月日 平成16年3月31日

2. 資本剰余金の配当後の甲株式会社の状況

(1) 配当後における甲株式会社の資本金等の額 45,000,000円

(2) 配当後における甲株式会社の発行済株式の総数(同社が有する自己株式の数を除く。) 1,000株

(3) 配当後における甲山一郎が有する甲株式会社に係る特定受贈同族会社株式等の株数 200株

3. 甲山一郎が交付を受けた上記1の(3)の株数に対応する配当金の状況

(1) 配当を受けた金額 1,000,000円

(2) (1)のうち所得税法第25条第1項の規定により配当所得の対象とされた金額 200,000円

≪設例2≫に係る記載例

特定(受贈)同族会社株式等について会社分割等があった場合の特例の対象となる価額等の計算明細の記載例

(注) 平成18年5月31日の法人の分割に係る「第11・11の2表の付表3の2」の記載例は省略した。

特定同族会社株式等又は特定受贈同族会社株式等である選択特定事業用資産についての課税価格の計算明細の記載例

(注) 甲株式会社の株式200株、乙株式会社の株式900株について特例の適用を受けたものとして記載している。

相続時精算課税適用財産の明細書相続時精算課税分の贈与税額控除額の計算書の記載例

(記載上の留意事項)

【第11・11の2表の付表3の2】

  1.  1欄の金額は、会社分割等の前に既に措置法令第40条の2の2第10項又は第11項の規定の適用を受けている場合には、これらの規定の適用後の1株当たりの時価(既に計算した「第11・11の2表の付表3の2」の17欄又は18欄の時価)を記載する(措置法令40の2の210かっこ書)。

    (注) 甲株式会社は、今回のその他資本剰余金の配当前に法人の分割が行われていることから、1欄の金額は贈与時の1株当たりの価額(100,000円)ではなく、83,333円(既に計算した「第11・11の2表の付表3の2」の17欄の時価)を記載する。
     なお、本設例においては、平成18年5月31日の法人の分割に係る「第11・11の2表の付表3の2」の作成も必要となるが、記載例の掲載は省略した。

  2.  12欄の金額には、特定受贈同族会社株式等に係る剰余金の配当として交付を受けた金銭その他の資産の金額を記載するのであるが、当該金額には株式及び出資の価額、所得税法第24条第1項及び第25条第1項の規定により配当所得の対象とされた金額(当該株式及び出資に係るものを除く。)は含まれない(措置法令40の2の210三イ、措置通69の5−11)。

    (注) 甲山一郎が配当を受けた金額1,000,000円のうち、配当所得の対象とされた金額が200,000円あることから、12欄には800,000円(1,000,000円−200,000円)を記載することになる。

  3.  16欄の金額に小数点第3位未満の端数がある場合には、その端数を切り捨てても差し支えない(措置通69の5−12(注)1)。
  4.  19欄の金額に1円未満の端数がある場合には、課税上弊害がない限り、その端数金額を切り捨てても差し支えない(措置通69の5−12(注)2)。

(参考)
 甲山一郎が平成18年12月1日に売却した特定受贈同族会社株式等である甲株式会社の株式100株については、措置法第69条の5第1項の適用がないので、当該株式に係る金額8,333,300円(83,333円×100株)を相続税の課税価格に算入することに留意する(【第11・11の2表の付表3】参照。)。

【第11・11の2表の付表3】

  1.  「2 特定受贈同族会社株式等である選択特定事業用資産の明細」欄には、特例の適用を受ける特定受贈同族会社株式等、当該特定受贈同族会社株式等に係る対応株式及び譲渡等により特例の対象外となった株式(出資)について記載する。

    (注) 甲株式会社の株式100株については平成18年12月1日に売却されていることから、その旨を適宜の箇所に表示する。

  2.  1欄の金額は、「第11・11の2表の付表3の2」の17欄又は18欄の金額を記載する。この場合、同一の株式について会社分割等が二回以上行われている場合には、最終的に算出された金額を記載することになる。

    (注) 甲株式会社の株式の時価は、平成18年5月31日の法人の分割により83,333円となるが、その後、平成19年9月30日のその他資本剰余金の配当により76,530円となっていることから、1欄には76,530円を記載することになる。
     甲株式会社の株式100株については平成18年12月1日に売却されていることから、当該株式数に係る時価は、83,333円となることに留意する。

【第11の2表】

  1.  「2 相続時精算課税適用財産(1の4)の明細」の2欄及び3の「種類」欄から「数量」欄の各欄は、贈与税の申告書第2表に基づき記載する。
  2.  3の「価額」欄は、次の(1)の合計額に(2)の金額を加算した金額を記載する。
     また、同欄の金額が「第11・11の2表の付表3」により算出されていることを明らかにするため、適宜の箇所にその旨を表示する。

    (1) 「第11・11の2表の付表3」の「2 特定受贈同族会社株式等である選択特定事業用資産の明細」の7欄に記載された特例の適用を受ける特定受贈同族会社株式等、当該特定受贈同族会社株式等に係る対応株式及び譲渡等により特例の対象外となった株式(出資)の価額の合計額

    (2) (1)の特定受贈同族会社株式等に係る「第11・11の2表の付表3の2」の19欄の金額

    (注) 「価額」欄には、27,968,788円(26,608,250円+1,360,538円)を記載することとなる。
     (1)の合計額(「第11・11の2表の付表3」の2の7欄)
     特例適用後の甲株式会社の株式200株の価額(13,775,400円)+平成18年12月1日に売却した甲株式会社の株式100株の価額(8,333,300円)+特例適用後の乙株式会社の株式900株の価額(4,499,550円)=26,608,250円
     (2)の金額(「第11・11の2表の付表3の2」の19欄)
     甲株式会社の株式に係る特定事業用資産の特例の対象とならない金額1,360,538円