第2章 適用要件

(国税関係帳簿に係る電磁的記録の範囲)

4−1 法第4条第1項((国税関係帳簿の電磁的記録による保存等))又は第5条第1項((国税関係帳簿の電子計算機出力マイクロフィルムによる保存等))に規定する「国税関係帳簿に係る電磁的記録」とは、規則第3条第1項各号の要件に従って備付け及び保存(以下「保存等」という。)が行われている当該国税関係帳簿を出力することができる電磁的記録をいう。
 したがって、そのような電磁的記録である限り、電子計算機処理において複数の電磁的記録が作成される場合にそのいずれの電磁的記録を保存等の対象とするかは、保存義務者が任意に選択することができることに留意する。

(注) この場合の国税関係帳簿に係る電磁的記録の媒体についても保存義務者が任意に選択することができることに留意する。

【解説】

 電子計算機を使用して国税関係帳簿を作成する過程においては、そのシステムによって、最初の入力データとしての電磁的記録や電子計算機処理の各段階ごとにその電磁的記録が加工されて作成される各電磁的記録など、多種、多様の電磁的記録が作成されていると考えられる。
 ところで、この法律の適用に当たり、これら電子計算機処理の各段階ごとに作成される各電磁的記録のうち、いずれの電磁的記録を保存等の対象とすべきかについては、これを示す具体的な規定は存しないものの、この法律が、従前の書面による国税関係帳簿の保存等に代えて電磁的記録による保存等を認めようとするものであることからすれば、規則第3条第1項各号の要件に従って保存等が行われているもので、国税関係帳簿を書面等に出力することができるものであれば必要十分ということができる。したがって、そのような電磁的記録である限り、電子計算機処理において複数の電磁的記録が作成される場合に、そのいずれの電磁的記録を保存等の対象とするかは保存義務者が任意に選択することができることとなるので、その旨を明らかにしたものである。
 また、電磁的記録に係る記録、保存の具体的な媒体としては、一般に、ハードディスク(HD)、コンパクトディスク(CD)、USBメモリ、フロッピーディスク(FD)、光磁気ディスク(MO)、磁気テープ(MT)等があるが、この法律の適用に当たっては、これが可動媒体に限定されるのではないか(ハードディスクでの保存は認められないのではないか)、CD−Rのように記録されたデータの書換えができない媒体に限定されるのではないかといった受け止め方をする向きもある。しかしながら、この電磁的記録の媒体についても、この法律上これを限定するような具体的な規定は存せず、保存義務者の任意の選択に委ねているものと解されるので、その旨を併せて明らかにした。
 なお、いずれの媒体によることとしても、保存義務者は、その媒体の管理手続等を事務処理規定等において明確にするとともに、管理責任者を定める等により、適切に管理・保管しなければならないことはいうまでもない。
 以上の考え方については、国税関係書類及び電子取引の取引情報に係る電磁的記録についても同様である。
(参考)
 法第2条第3号に規定する「電磁的記録」とは、情報(データ)それ自体、あるいは記録に用いられる媒体のことではなく、一定の媒体上に情報として使用し得る(一定の手順によって読み出すことができる)ものとして、情報が記録・保存された状態にあるもの、具体的には、情報がHDやCD等に記録・保存された状態にあるものをいう。

(一の入力単位の意義)

4−24 規則第3条第5項第2号ロ((タイムスタンプ))に規定する「一の入力単位」とは、複数枚で構成される国税関係書類は、その全てのページをいい、台紙に複数枚の国税関係書類(レシート等)を貼付した文書は、台紙ごとをいうことに留意する。

【解説】

 規則第3条第5項第2号ロでは、「一の入力単位」ごとにタイムスタンプを付すこととされている。この場合の「一の入力単位」とは、例えば、3枚で構成される請求書の場合には、意味として関連付けられたものとして、3枚で一つの国税関係書類を構成しているため、一度に読み取る3枚が一の入力単位となる。また、台紙に小さなレシートなどを複数枚貼付した場合には、物理的に関連付けられたものとして、複数の国税関係書類を一回のスキャニング作業で電子化することとなるため、台紙が一の入力単位となることを明らかにしたものである。
 したがって、ここにいう入力単位とは、意味として関連付けられたもの又は物理的に関連付けられたものをいうのであるから、お互いに関係を持たない複数の国税関係書類を一度にスキャニングしたからといって、それをもって一の入力単位ということにはならない。
 なお、複数枚の国税関係書類を台紙に貼付してスキャニングした場合、それぞれの国税関係書類ごとに関連する帳簿の記録事項との関連性が明らかにされ、適切に検索できる必要があることに留意する。


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