第2章 適用要件

(承認を受けることができる国税関係帳簿書類の単位)

4−2 法第4条各項((国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等))の規定の適用に当たっては、一部の国税関係帳簿書類について承認を受けることもできるのであるから、例えば、保存義務者における次のような国税関係帳簿書類の作成・保存の実態に応じて、それぞれの区分のそれぞれの国税関係帳簿書類ごとに承認を受けることができることに留意する。

(1) 法第4条第1項の規定を適用する場合

  • 1 仕訳帳及び総勘定元帳のみを作成している場合
  • 1 1に掲げる国税関係帳簿のほか、現金出納帳、売上帳、仕入帳、
    売掛金元帳、買掛金元帳などの国税関係帳簿を作成している場合
  • 1 1又は1に掲げる国税関係帳簿を本店で作成するほか事業部若しくは事業所ごとに作成している場合

(2) 法第4条第2項の規定を適用する場合

  • 1 注文書の写しのみを作成している場合
  • 1 1に掲げる国税関係書類のほか、領収書の写し、見積書の写し、請求書の写しなどの国税関係書類を作成している場合
  • 1 1又は1に掲げる国税関係書類を本店で作成するほか事業部若しくは事業所ごとに作成している場合

(3) 法第4条第3項の規定を適用する場合

  • 1 作成又は受領した注文書、領収書、見積書、請求書などの国税関係書類を保存している場合
  • 1 1に掲げる国税関係書類を本店で保存しているほか事業部若しくは事業所ごとに保存している場合

【解説】

 法第4条各項では、国税関係帳簿書類の全部又は一部について、所轄税務署長等の承認を受けたときは、電磁的記録の保存等をもって国税関係帳簿書類の保存等に代えることができる旨規定されているが、この規定における「一部」の意義については、そもそも、保存義務者が国税関係帳簿書類のうち一部の国税関係帳簿書類しか電子計算機により作成等していないような場合でも、その電子計算機により作成等する国税関係帳簿書類について、承認を受けて電磁的記録による保存等を行うことができるとするものであり、その場合においても、必ずしも、電子計算機により作成等する国税関係帳簿書類の全部について承認を受けなければならないとするものでもない。
 したがって、法第4条各項の規定の適用に当たっては、例えば、保存義務者における次のような国税関係帳簿書類の作成・保存の実態に応じて、それぞれの区分のそれぞれの国税関係帳簿書類ごとに承認を受けることができることとなる。

  • イ 法第4条第1項の規定を適用する場合
    • (イ) 仕訳帳及び総勘定元帳のみを作成している場合
    • (ロ)  (イ)に掲げる国税関係帳簿のほか、現金出納帳、売上帳、仕入帳、売掛金元帳、買掛金元帳などの国税関係帳簿を作成している場合
    • (ハ)  (イ)又は(ロ)に掲げる国税関係帳簿を本店で作成するほか事業部若しくは事業所ごとに作成している場合
  • ロ  法第4条第2項の規定を適用する場合
    • (イ) 注文書の写しのみを作成している場合
    • (ロ)  (イ)に掲げる国税関係書類のほか、領収書の写し、見積書の写し、請求書の写しなどの国税関係書類を作成している場合
    • (ハ)  (イ)又は(ロ)に掲げる国税関係書類を本店で作成するほか事業部若しくは事業所ごとに作成している場合
  • ハ 法第4条第3項の規定を適用する場合
    • (イ) 作成又は受領した注文書、領収書、見積書、請求書などの国税関係書類を保存している場合
    • (ロ)  (イ)に掲げる国税関係書類を本店で保存しているほか事業部若しくは事業所ごとに保存している場合

 なお、他の条項においても同様の規定があるが、考え方は同様であり、一の国税関係帳簿書類を単位として、申請等(申請、取りやめ、承認、却下及び取消し)を行うこととなる。

(国税関係帳簿に係る電磁的記録の訂正削除の履歴の確保の方法)

4−6 規則第3条第1項第1号イ((訂正削除の履歴の確保))の規定の適用に当たり、例えば、次に掲げるシステム等によることとしている場合には、当該規定の要件を満たすものとして取り扱うこととする。

(1) 電磁的記録の記録事項を直接に訂正し又は削除することができるシステムで、かつ、訂正前若しくは削除前の記録事項及び訂正若しくは削除の内容がその電磁的記録又はその電磁的記録とは別の電磁的記録に自動的に記録されるシステム

(2) 電磁的記録の記録事項を直接に訂正し又は削除することができないシステムを使用し、かつ、その記録事項を訂正し又は削除する必要が生じた場合には、これを直接に訂正し又は削除した場合と同様の効果を生じさせる新たな記録事項(当初の記録事項を特定するための情報が付加されたものに限る。)を記録する方法(いわゆる反対仕訳による方法)

(注) 4−5の(注)の場合において、承認済国税関係帳簿に係る電磁的記録の記録事項の訂正又は削除の事実及び内容を、当該承認済国税関係帳簿以外の国税関係帳簿に係る電磁的記録(当該国税関係帳簿が承認済国税関係帳簿でない場合には、電磁的記録又はこれを出力した書面)により確認することができることとしているときは、これを認める。

【解説】

 規則第3条第1項第1号イに規定する「電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること」という要件を満たす方法として、現状におけるコンピュータ処理の実態を踏まえ、次のようなシステム等によっている場合には、この要件を満たすものとして取り扱うことを明らかにしたものである。

  • イ 訂正又は削除の履歴が自動的に記録されるシステム
     電磁的記録として記録されている記録事項を直接に訂正し又は削除することができるシステムであり、かつ、訂正前若しくは削除前の記録事項及び訂正若しくは削除の内容がその電磁的記録又はその電磁的記録とは別の電磁的記録(訂正削除の履歴ファイル)に自動的に記録されるシステム
  • ロ いわゆる反対仕訳により記録する方法
     電磁的記録として記録されている記録事項を直接に訂正し又は削除することができないシステムを使用し、かつ、その記録事項を訂正し又は削除する必要が生じた場合には、これを直接に訂正し又は削除した場合と同様の効果を生じさせる新たな記録事項(当初の記録事項を特定するための情報が付加されたものに限る。)を記録する方法
    (注) 反対仕訳の方法として、当初の記録事項の全体の反対仕訳と正当な仕訳を行う方法又は当初の記録事項と正当な記録事項との差を反対仕訳する方法のいずれの方法によるかは問わない。

 なお、承認済国税関係帳簿に係る電磁的記録が、その前段階で記録される当該承認済国税関係帳簿以外の国税関係帳簿(以下「他の国税関係帳簿」という。)に係る電磁的記録から引き継がれることにより入力されている場合(取扱通達4−5(注)参照)のように、当該他の国税関係帳簿に係る電磁的記録の記録事項を訂正し又は削除することによって、当該承認済国税関係帳簿に係る電磁的記録の該当の記録事項が訂正され又は削除されることがある。
 この場合、その引継方法いかんによっては、当該承認済国税関係帳簿の訂正削除の履歴が当該他の国税関係帳簿に係る電磁的記録にのみ記録される(当該承認済国税関係帳簿に係る電磁的記録には記録されない)場合もあるが、そのような場合であっても、当該他の国税関係帳簿に訂正削除の履歴が確保されていれば、それにより当該承認済国税関係帳簿に係る訂正削除の履歴は確認することができることとなる。また、この場合の当該他の国税関係帳簿における承認済国税関係帳簿に係る訂正削除の履歴の確保の仕方に関しては、電磁的記録としての確保が原則ではあるが、当該他の国税関係帳簿が承認済国税関係帳簿でない場合にまで、その原則どおりの確保の仕方を求めることは、結果として、当該他の国税関係帳簿(承認済国税関係帳簿でない国税関係帳簿)に係る全ての電磁的記録の保存を求めることになることも考えられる。
 そこで、当該他の国税関係帳簿が承認済国税関係帳簿である場合とそうでない場合とに区分し、当該他の国税関係帳簿に係る電磁的記録の記録事項の訂正削除の履歴を、次により確認することができるときは、規則第3条第1項第1号イの要件を満たすものとして取り扱うことを併せて明らかにした。

  • イ 当該他の国税関係帳簿が承認済国税関係帳簿の場合
      当該他の国税関係帳簿に係る電磁的記録
  • ロ 当該他の国税関係帳簿が承認済国税関係帳簿でない場合
      当該他の国税関係帳簿に係る電磁的記録又はこれを出力した書面

(国税関係帳簿に係る電磁的記録の訂正削除の履歴の確保の特例)

4−7 規則第3条第1項第1号イ((訂正削除の履歴の確保))の規定の適用に当たり、電磁的記録の記録事項の誤りを是正するための期間を設け、当該期間が当該電磁的記録の記録事項を入力した日から1週間を超えない場合であって、当該期間内に記録事項を訂正し又は削除したものについて、その訂正又は削除の事実及び内容に係る記録を残さないシステムを使用し、同項第3号ニに掲げる書類に当該期間に関する定めがあるときは、要件を充足するものとして取り扱う。

【解説】

 規則第3条第1項第1号では、承認を受けた国税関係帳簿に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合に、訂正削除の履歴を確認できるシステムを使用することとされている。
 この場合の訂正削除の履歴は、その全てについて残されることが望ましいが、入力後速やかにその入力内容を確認し入力誤りについて訂正又は削除をすることも一般的であり、そのような訂正又は削除についてまで、その履歴の確保を求めるのは、コンピュータ処理の実態に即さないとも考えられる。
 そこで、そのような訂正又は削除を行うための期間があらかじめ内部規程等(規則第3条第1項第3号ニに掲げる事務手続を定めた書類)に定められており、かつ、その期間が当該電磁的記録の記録事項を入力した日から1週間を超えない場合には、便宜上、その期間について訂正又は削除の履歴を残さないシステムを使用することを認めることとしたものである。
 なお、一定の期間について訂正削除の履歴を残さないシステムとしては、例えば、次の訂正又は削除の方法の区分に応じ、次のようなものが考えられる。

  • イ 記録事項を直接に訂正し又は削除する方法
     電磁的記録の記録事項に係る当初の入力日から訂正又は削除をすることができる期間を自動的に判定し、当該期間内における訂正又は削除については履歴を残さないこととしているシステム
  • ロ いわゆる反対仕訳により訂正し又は削除する方法
     電磁的記録の記録事項に係る当初の入力日から訂正又は削除をすることができる期間を自動的に判定し、当該期間が経過するまでは記録事項を直接に訂正し又は削除することができるが、当該期間が経過した後においては反対仕訳の方法によってしか記録事項を訂正し又は削除することができないシステム

(帳簿間の関連性の確保の方法)

4−9 規則第3条第1項第2号((帳簿間の関連性の確保))の規定の適用に当たり、例えば、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に掲げる情報が記録事項として記録されるときは、同号の要件を満たすものとして取り扱うことに留意する。

(1) 一方の国税関係帳簿に係る記録事項(個々の記録事項を合計したものを含む。)が他方の国税関係帳簿に係る記録事項として個別転記される場合 相互の記録事項が同一の取引に係る記録事項であることを明確にするための一連番号等の情報

(2) 一方の国税関係帳簿に係る個々の記録事項が集計されて他方の国税関係帳簿に係る記録事項として転記される場合((1)に該当する場合を除く。) 一方の国税関係帳簿に係るどの記録事項を集計したかを明らかにする情報

【解説】

 規則第3条第1項第2号では、承認を受けている国税関係帳簿に係る電磁的記録の記録事項と当該国税関係帳簿に関連する他の国税関係帳簿の記録事項(当該他の国税関係帳簿も、電磁的記録又は電子計算機出力マイクロフィルムによる保存等の承認を受けているものである場合には、その電磁的記録又は電子計算機出力マイクロフィルムの記録事項)との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておくこととされている。
 この規定の要件を満たす具体的な方法としては、次のような方法が考えられるので、これを例示したものである。

  • イ 一方の国税関係帳簿に係る記録事項(例えば、日計や月計のように個々の記録事項を合計したものを含む。)を他方の国税関係帳簿に係る記録事項として個別転記する場合に、一連番号等の情報を双方の国税関係帳簿に係る記録事項として記録する方法
  • ロ 一方の国税関係帳簿に係る個々の記録事項を集計して他方の国税関係帳簿に係る記録事項として転記する場合に、他方の国税関係帳簿の摘要欄等に集計対象項目(勘定科目又は部門等)及び集計範囲(○月○日〜○月○日)を記録する方法

(国税関係帳簿に係る電磁的記録の検索機能における主要な記録項目)

4−15 規則第3条第1項第5号イ((検索機能の確保))に規定する「取引年月日、勘定科目、取引金額その他の国税関係帳簿の種類に応じた主要な記録項目」には、例えば、次に掲げる国税関係帳簿の区分に応じ、それぞれ次に定める記録項目がこれに該当する。
 なお、この場合の勘定科目及び相手方勘定科目には、借方又は貸方の双方の科目を含み、銀行口座別、取引の相手方別及び商品別等に区分して記録しているときは、当該区分を含むことに留意する。

(1) 仕訳帳 取引年月日、勘定科目及び取引金額

(2) 総勘定元帳 記載年月日、勘定科目、相手方勘定科目及び取引金額

(3) 現金出納帳、売上帳及び仕入帳などの補助記入帳 取引年月日、勘定科目及び取引金額

(4) 売掛金元帳、買掛金元帳などの補助元帳 記録又は取引の年月日、勘定科目、相手方勘定科目及び取引金額

(5) 固定資産台帳、有価証券台帳及び給与台帳など資産名や社員名で区分して記録している帳簿 資産名又は社員名

(6) 酒税法施行令第52条第1項((記帳義務))に規定する帳簿 受入年月日、受け入れた原料の区分、種別及び数量

(7) 揮発油税法施行令第17条第1項((記帳義務))に規定する帳簿 移入年月日、移入した原料の種類及び数量

(注) 一連番号等により規則第3条第1項第2号((帳簿間の関連性の確保))の要件を確保することとしている場合には、当該一連番号等により国税関係帳簿(法第4条第1項((国税関係帳簿の電磁的記録による保存等))又は第5条第1項((国税関係帳簿の電子計算機出力マイクロフィルムによる保存等))の承認を受けているものに限る。)の記録事項を検索することができるときについても要件を充足するものとして取り扱うことに留意する。

【解説】

 規則第3条第1項第5号イに規定する「取引年月日、勘定科目、取引金額その他の国税関係帳簿の種類に応じた主要な記録項目」には、次のような記録項目が該当すると考えられることから、この考え方に基づいて、主な国税関係帳簿ごとに該当の具体的な記録項目を例示したものである。

  • イ 日付(国税関係帳簿に記録すべき日付(取引年月日、記載年月日、約定年月日、受入年月日等)をいう。)
  • ロ 勘定科目(所得税法及び法人税法に定める国税関係帳簿に記録すべき勘定科目及び相手方勘定科目(これらの科目には借方又は貸方の科目を含み、銀行口座別、取引の相手方別又は商品別等に区分して記録している場合には当該区分を含む。)をいう。)
  • ハ 金額(国税関係帳簿に記録すべき取引の金額又は資産の譲渡等の対価の額等をいい、単価及び残高を含まない。)
  • ニ 数量(所得税法及び法人税法により記録すべきこととされている数量を除く。)
  • ホ その他の項目(資産の種類等により区分して記録されている場合の当該区分をいう。)

(範囲を指定して条件を設定することの意義)

4−16 規則第3条第1項第5号ロ((検索機能の確保))(同条第2項及び第5項第7号において準用する場合を含む。)に規定する「その範囲を指定して条件を設定することができる」とは、課税期間(国税通則法第2条第9号((定義))に規定する課税期間をいう。以下6-1において同じ。)ごとの国税関係帳簿書類別又は勘定科目別(規則第3条第2項及び第5項第7号において準用する場合に限る。)に、日付又は金額の任意の範囲を指定して条件設定を行い検索ができることをいうことに留意する。

【解説】

 規則第3条第1項第5号ロでは、日付及び金額についてはその範囲を指定して条件を設定することができることとされている。これは、書面による帳簿書類の場合であれば手に取りかつ目で見て探すことが可能であるが、電子データではそれが不可能であることから保存の要件とされているものである。
 書面による国税関係帳簿書類の場合は、各課税期間の帳簿書類の種類ごとに整理・保管され、その一課税期間ごとの帳簿又は書類の中から、必要なものを探し出していくことが一般的であることから、電子データにおける検索機能の日付又は金額の場合の範囲指定においても、一課税期間内の帳簿や書類の種類ごとであれば、任意の範囲を指定して条件設定を行い検索ができる必要があることを明らかにしたものである。
 他方で、国税関係書類については、書類の種類以外の区分をもとに整理・保管している実務慣行もあることから、一律に書類の種類ごとに範囲を指定するよう求めることは非合理的と考えられる。そこで、こうしたケースを念頭に、規則第3条第2項及び第5項第7号において準用する場合(スキャナ保存)については、勘定科目別に検索できるときについても要件を充足することを明らかにしたものである。
 なお、同条第1項第5号ロの場合(電子帳簿保存)については、同号イにおいて勘定科目を検索の条件として設定することができるようにすることとされていることから、勘定科目別に検索できるのは当然として、国税関係書類の種類別に検索できることが求められるのである。
 また、電子データにおける検索機能の日付の場合の範囲指定においても、二課税期間以上又は別々の帳簿及び書類の種類等をまたがって範囲指定できることを保存義務者に求めるものではない。
 おって、例えば、データ量が膨大であるため、一課税期間の電子データを複数の保存媒体に保存せざるを得ないなど、一課税期間を通じて任意の範囲を指定して検索を行うことが困難であることにつき、合理的な理由があると認められる場合には、一課税期間内の合理的な期間ごとに任意の範囲を指定して検索できればよいこととなる。

(速やかに行うことの意義)

4−20 規則第3条第5項第1号イ((入力方法))に規定する「速やかに」の適用に当たり、国税関係書類の作成又は受領後おおむね7営業日以内に入力している場合には、速やかに行っているものとして取り扱う。
 また、同号ロに規定する「速やかに」の適用に当たり、その業務の処理に係る通常の期間を経過した後、おおむね7営業日以内に入力している場合には同様に取り扱う。

【解説】

 国税関係書類を入力する場合には、紙段階の改ざん可能性を低くする観点からは、当該国税関係書類の作成又は受領後直ちに行うことが望ましいのであるが、他の業務との関係上又は外出先で書類を作成又は受領する場合など、書類を作成又は受領した日であってもスキャナで読み取ることができない場合も一般的であると考えられる。
 したがって、日次の処理を求めることも業務の実態に即しているとはいえないと考えられる。そこで、日次以外の一般的に考えられる期間の最小単位であり、また、短期間の業務処理サイクルの単位としても一般的に用いられる期間は1週間であることから、休日等をまたいで入力する場合があることも勘案し、7営業日を基本とすることが合理的と考えられる。
 さらに、業種業態によっては必ずしも7営業日以内に入力することができない場合も考えられ、それらを一律に排除することは経済実態上合理的ではないではないことから、おおむね7営業日以内に入力を行っている場合には、速やかに行っているものとして取り扱うこととしたものである。

(業務の処理に係る通常の期間の意義)

4−21 規則第3条第5項第1号ロ((入力方法))に規定する「その業務の処理に係る通常の期間」とは、国税関係書類の作成又は受領からスキャナで読み取り可能となるまでの業務処理サイクルの期間をいうことに留意する。
 なお、月をまたいで処理することも通常行われている業務処理サイクルと認められることから、最長2か月の業務処理サイクルであれば、「その業務の処理に係る通常の期間」として取り扱うこととする。

【解説】

 規則第3条第5項第1号ロでは、「その業務の処理に係る通常の期間」と規定しているが、同条第1項第1号ロでも同様な規定がある。その考え方は、いずれも、企業等においてはデータ入力又は書類の事務処理などの業務を一定の業務処理サイクルで行うことが通例であり、また、その場合には適正な入力又は処理を担保するために、その業務処理サイクルを事務の処理に関する規程等で定めることが通例であるという、共通したものである。
 このような考え方から、同条第5項第1号ロにおける「その業務の処理に係る通常の期間」とは、書類の事務処理、つまり国税関係書類の作成又は受領から、企業内でのチェックや決裁等を経てスキャナで読み取り可能となるまでの業務処理サイクルの期間をいう旨を明らかにしている。
 なお、このように企業内チェック等が行われる場合には、月をまたいで処理することも通常行われている業務処理サイクルと認められることから、最長2か月の業務処理サイクルであれば、通常の期間として取り扱う旨を併せて明らかにしている。

(特に速やかに行うことの意義)

4−23 規則第3条第5項第2号ロ括弧書に規定する「特に速やかに」の適用に当たり、国税関係書類の作成又は受領後おおむね3営業日以内にタイムスタンプを付している場合には、特に速やかに付しているものとして取り扱う。

【解説】

 平成28年度の税制改正前においては、営業担当者等が作成又は受領(以下4−23において「受領等」という。)した国税関係書類について、社内において経理担当者等が経理処理の際に領収書等の書面を確認した上でスキャナによる読み取りを行っていたが、平成28年度の税制改正により、スキャナについて「原稿台と一体となったものに限る。」とする要件が廃止され、スマートフォン等を使用して社外において経理処理前に国税関係書類の読み取りを行うことが可能となった。
 一方、これまで国税関係書類の受領者等以外の者が読み取りを行ってきたことによるけんせい効果が失われること、電磁的記録にタイムスタンプを付すまでの期間を長く設定すれば、電磁的記録上の改ざんも容易となってしまうことから、受領者等が読み取る場合には、特に速やかにタイムスタンプを付すこととされたところである。
 スマートフォン等を使用して社外において経理処理前に国税関係書類の読み取りを行うことができる以上、受領等の当日に読み取りを行い、ネットワークを利用し、当日中にタイムスタンプを付すことも可能ではあるが、実際には、他の業務との関係上、受領等の当日中には読み取りを行うことができない場合もあり、受領等の後、休日等をまたいで入力することも勘案して、3営業日を基本とすることが合理的と考えられる。
 さらに、業種業態によっては必ずしも3営業日以内に入力することができない場合も考えられ、それらを一律に排除することは経済実態上合理的ではないことから、本通達は、受領等の日の翌日から起算しておおむね3営業日以内にタイムスタンプを付している場合には、特に速やかに行っているものとして取り扱うことを明らかにしたものである。

(日本産業規格A列4番以下の大きさの書類の解像度の意義)

4−28 規則第3条第5項第2号ハ括弧書に規定する「当該国税関係書類の作成又は受領する者が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合において、当該国税関係書類の大きさが日本産業規格A列4番以下であるとき」における、規則第3条第5項第2号ハ(1)に規定する「解像度に関する情報」の保存については、当該国税関係書類の電磁的記録に係る画素数を保存すれば足りることに留意する。

【解説】

 平成28年度の税制改正により、スキャナについて「原稿台と一体となったものに限る。」とする要件が廃止され、社外などで経理処理前にスマートフォンやデジタルカメラ等を使用して書面の国税関係書類の読み取りを行うことが可能となった。
 スマートフォンやデジタルカメラ等の機器は、走査によって書類を読み取るスキャナとは異なり、一般的には、書類を読み取った際に解像度に関する情報を取得することが困難であり、どのように解像度に関する情報を保存するのかが問題となる。
 本通達は、この点について、解像度が書類の大きさと画素数によって決まり、解像度の要件(「25.4ミリメートル当たり200ドット以上」)が満たされていることについては、画素数が保存されていれば判断できることを踏まえ、規則第3条第5項第2号ハ括弧書に規定する「当該国税関係書類の作成又は受領する者が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合において、当該国税関係書類の大きさが日本産業規格A列4番以下であるとき」における、規則第3条第5項第2号ハ(1)に規定する「解像度に関する情報」の保存については、画素数を保存すれば足りることを明らかにしたものである。

(それぞれ別の者が行う体制の意義)

4−34 規則第3条第5項第4号イに規定する「各事務について、それぞれ別の者が行う体制」とは、各事務に関する職責をそれぞれ別の者にさせるなど、明確な事務分掌の下に相互にけんせいが機能する事務処理の体制がとられていれば、要件を充足するものとして取り扱うことに留意する。

【解説】

 平成27年度の税制改正前は、契約書・領収書等のいわゆる重要書類(法第4条第3項に規定する国税関係書類のうち、規則第3条第6項に規定する国税庁長官が定める書類以外の書類をいう。)については、スキャナで読み取る前の紙段階で行われる改ざんの問題点等を踏まえ、3万円未満のものに限ってスキャナ保存が認められていたが、平成27年度の税制改正により、この3万円未満の金額基準が廃止された。
 この紙段階での改ざんに対処することを踏まえ、重要書類については、規則第3条第5項第4号(適正事務処理要件)を新たに設けることにより、事務担当者間でチェック機能を働かせる仕組み(担保措置)を講じることとされた。
 この要件のうち、同号イの「各事務について、それぞれ別の者が行う体制」とは、各事務に関する職責をそれぞれ別の者にさせるなど、明確な事務分掌の下に相互にけんせいが機能する事務処理の体制がとられていれば要件を充足しているものとして、本通達において留意的に明らかにしたものである。

(4ポイントの文字が認識できることの意義)

4−38 規則第3条第5項第6号ニ((スキャナ保存における電子計算機等の備付け等))の規定は、全ての国税関係書類に係る電磁的記録に適用されるのであるから、日本産業規格X6933又は国際標準化機構の規格12653−3に準拠したテストチャートを同項第2号の電子計算機処理システムで入力し、同項第6号に規定するカラーディスプレイの画面及びカラープリンタで出力した書面でこれらのテストチャートの画像を確認し、4ポイントの文字が認識できる場合の当該電子計算機処理システム等を構成する各種機器等の設定等で全ての国税関係書類を入力し保存を行うことをいうことに留意する。
 なお、これらのテストチャートの文字が認識できるか否かの判断に当たっては、拡大した画面又は書面で行っても差し支えない。

【解説】

 規則第3条第5項第6号ニでは、国税関係書類に係る電磁的記録を国税庁長官の定めるところにより4ポイントの文字が認識できるような状態にしておくことが必要とされている。
 これは全ての国税関係書類に係る電磁的記録に適用されるのであるが、全ての国税関係書類に4ポイントの文字が含まれているわけではないことから、産業標準化法(昭和24年法律第185号)第20条第1項(日本産業規格)に規定する日本産業規格(いわゆるJIS規格)X6933又は国際標準化機構(いわゆるISO)の規格12653−3に準拠したテストチャートをスキャナ保存で使用するシステムで入力し、出力した画面及び書面においてこれらのテストチャートの4ポイントの文字の認識が可能となるように構成された、電子計算機処理システム等の各種機器やプログラムの設定及び使用方法等と同じ設定、使用方法等で、全ての国税関係書類の入力及び電磁的記録の保存を行うことをもって、4ポイントの文字が認識できるような状態であるとしたものである。そこで、このことを明らかにしたものである。
 なお、4ポイントの文字が認識できるとは、日本産業規格 X6933のテストチャートにおいては4の相対サイズの文字及びISO図形言語を、国際標準化機構の規格12653−3のテストチャートにおいては4ポイントの文字及びISO No.1試験図票の140図票を認識できることをいう。

(スキャナ保存の検索機能における主要な記録項目)

4−39 規則第3条第5項第7号((準用))の規定により読み替えられた同条第1項第5号イ((検索機能の確保))に規定する「取引年月日その他の日付、取引金額その他の国税関係書類の種類に応じた主要な記録項目」には、例えば、次に掲げる国税関係書類の区分に応じ、それぞれ次に定める記録項目がこれに該当する。
 なお、検索は国税関係書類の種類別又は勘定科目別にできることを要することに留意する。

(1) 領収書 領収年月日、領収金額、取引先名称

(2) 請求書 請求年月日、請求金額、取引先名称

(3) 納品書 納品年月日、品名、取引先名称

(4) 注文書 注文年月日、注文金額、取引先名称

(5) 見積書 見積年月日、見積金額、取引先名称

(注) 一連番号等を国税関係帳簿書類に記載又は記録することにより規則第3条第5項第5号((帳簿書類間の関連性の確保))の要件を確保することとしている場合には、当該一連番号等により国税関係帳簿(法第4条第1項((国税関係帳簿の電磁的記録による保存等))又は第5条第1項((国税関係帳簿の電子計算機出力マイクロフィルムによる保存等))の承認を受けているものに限る。)の記録事項及び国税関係書類(法第4条第3項の承認を受けているものに限る。)を検索することができる機能が必要となることに留意する。

【解説】

 規則第3条第5項第7号において準用する同条第1項第5号イ(読み替え後)に規定する「取引年月日その他の日付、取引金額その他の国税関係書類の種類に応じた主要な記録項目」には、次のような記録項目が該当すると考えられるから、この考え方に基づいて、主な国税関係書類の種類ごとに該当の具体的記録項目を例示したものである。

  • イ 日付(国税関係書類に記載すべき日付をいう。)
  • ロ 金額(国税関係書類に記載すべき取引の金額又は資産の譲渡等の対価の額等をいい、単価及び残高を含まない。)
  • ハ 取引先名称(国税関係書類に記載すべき取引先名称をいう。)

 なお、取引先名称は必ずしも名称でなく、取引先コードが定められ、当該コード表が備え付けられている場合には、当該コードによる記録でも差し支えない。

(電磁的記録の作成及び保存に関する事務手続を明らかにした書類の取扱い)

4−40 一般書類や過去分重要書類の保存に当たって、既に、電磁的記録の作成及び保存に関する事務手続を明らかにした書類を備え付けている場合において、これに当該事務の責任者の定めや対象範囲を追加して改訂等により対応するときは、改めて当該書類を作成して備え付けることを省略して差し支えないものとする。

【解説】

 規則第3条第6項及び第7項では、「当該電磁的記録の作成及び保存に関する事務の手続を明らかにした書類(当該事務の責任者が定められているものに限る。)」の備付けが必要とされている。スキャナ保存を行っている場合、規則第3条第5項第7号において準用する同条第1項3号ニにより、「当該電磁的記録の作成及び保存に関する事務の手続を明らかにした書類」を既に備え付けていることになるが、一般書類や過去分重要書類については、入力期間の制限や適正事務処理要件が課せられていない(過去分重要書類については、廃棄前の検査のみ規定あり。)代わりに、責任者の定めのある規程を作成しておく必要があるところ、この書類において「当該事務の責任者を定め」等を追加して改訂する等で対応するときは、一般書類や過去分重要書類の保存に当たって、別途、作成、備付けをすることを省略して差し支えないことを明らかにしたものである。


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