第2章 適用要件

(国税関係書類の受領をする者がスキャナで読み取る場合のタイムスタンプの意義)

4−23の2 規則第3条第5項第2号ロ括弧書に規定する「国税関係書類の作成又は受領をする者が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合」とは、受領者等が国税関係書類をスキャナで読み取り、当該国税関係書類に係る電磁的記録にタイムスタンプを付すまでを行うことにより、受領等から入力までの各事務について、相互にけんせいが機能する事務処理の体制がとられていない場合をいう。
 したがって、例えば、受領者等が国税関係書類をスキャナで読み取った後、その国税関係書類全てについて、受領者等以外の者が当該国税関係書類の書面に記載された事項と当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項とを比較し、同等であることを確認した上でタイムスタンプを付すことにより、受領等から入力までの各事務について、相互にけんせいが機能する事務処理の体制がとられている場合は、規則第3条第5項第2号ロ括弧書に規定する「国税関係書類の作成又は受領をする者が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合」に含まれないことに留意する。

(注) 規則第3条第5項第2号ハ括弧書に規定する「国税関係書類の作成又は受領をする者が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合」とは、受領等から入力までの各事務について、相互にけんせいが機能する事務処理体制がとられているか否かに関わらず、受領者等がスキャナで読み取った場合をいうことに留意する。

【解説】

 規則第3条第5項第2号ロ括弧書では、国税関係書類の受領者等が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合には、特に速やかにタイムスタンプを付すこととされている。これは、タイムスタンプを付すまでの間に国税関係書類の受領者等以外の者が当該国税関係書類の書面を確認することによるけんせい効果が失われること、また、けんせい効果が失われた状態で電磁的記録にタイムスタンプを付すまでの期間を長く設定すれば、電磁的記録上の改ざんも容易となってしまうことから、特に速やかにタイムスタンプを付すことによって、これらの問題点に対処することを目的としているものである。
 ところで、「国税関係書類の受領者等が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合」の解釈において、受領等から入力までの事務処理体制の如何を問わず、国税関係書類の受領者等がスキャナ操作を行った場合の全てを指すということも考えられる。
 しかしながら、国税関係書類の受領者等がスキャナ操作を行った場合であっても、その国税関係書類全てについて、受領者等以外の者が当該国税関係書類の書面に記載された事項と当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項とを比較し、同等であることを確認した上でタイムスタンプを付すこととしている場合には、受領者等以外の者がスキャナで読み取る場合と同様の相互けんせいが機能しているといえる。したがって、そのような相互にけんせいが機能する事務処理体制がとられている場合には、受領者等の署名や特に速やかにタイムスタンプを付す必要はないことを明らかにしたものである。
 なお、規則第3条第5項第2号ハ括弧書では、国税関係書類の受領者等が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合には、当該国税関係書類の大きさが日本工業規格A列4番以下であるときに限って当該国税関係書類の大きさに関する情報の保存は不要とされている。これは、スマートフォンやデジタルカメラ等の機器は走査によって書類を読み取るスキャナとは異なり、一般的には、書類を読み取った際に大きさに関する情報を取得することが困難であるという実態を考慮したことによるものと考えられる。したがって、ここにいう「国税関係書類の作成又は受領をする者が当該国税関係書類をスキャナで読み取る場合」とは、受領等から入力までの各事務について、相互にけんせいが機能する事務処理体制がとられているか否かに関わらず、国税関係書類の受領者等がスキャナ操作を行った場合の全てを指すのであるから、その旨を併せて明らかにした。

(事務処理体制に応じたタイムスタンプの取扱い)

4−23の3 規則第3条第5項第2号ロの規定の適用に当たり、受領者等が国税関係書類をスキャナで読み取った後、その国税関係書類全てについて、受領者等以外の者が当該国税関係書類の書面に記載された事項と当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項とを比較し、同等であることを確認することにより相互にけんせいが機能する体制がとられている場合には、受領者等以外の者が同等確認した上でタイムスタンプを付すこととして差し支えないものとする。

【解説】

 規則第3条第5項第2号ロでは、スキャナで読み取る際にタイムスタンプを付すこととされているが、タイムスタンプは、個々の国税関係書類に係る電磁的記録がある時刻に存在していたことの確認及び存在時刻からの変更の有無の確認のために付すものであり、原則として、スキャニングと同時又は国税関係書類をスキャナで読み取り、折れ曲がりや文字の歪みがないかなど、正しくスキャニングされていることを確認した都度タイムスタンプを付すこととなる。
 ところで、平成27年度の税制改正により、紙段階での改ざんに対処することを踏まえ、重要書類については、規則第3条第5項第4号(適正事務処理要件)を新たに設けることにより、事務担当者間でチェック機能を働かせる仕組み(担保措置)を講じることとされ、同号イにおいて、国税関係書類の作成又は受領から当該国税関係書類に係る記録事項の入力までの相互に関連する各事務について、それぞれ別の者が行う体制により事務処理を行うことが要件とされた。
 事務担当者間でチェック機能を働かせる仕組みであるから、入力を行う者においては、スキャナで読み取った画像と紙とが同等であることを確認する作業が必ず伴うこととなり、このような確認作業をスキャナで読み取った者とは別の者が行う場合には、同等であることの確認に合わせて電磁的記録上の改ざんが行われていないかのチェックを行った上でタイムスタンプを付すことも一般的であると考えられる。
 そこで、国税関係書類の受領者等がスキャナ操作を行った場合であっても、その国税関係書類全てについて、受領者等以外の者が国税関係書類の書面に記載された事項と当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項とを比較し、同等であることを確認することにより相互にけんせいが機能する事務処理体制がとられている場合には、受領者等以外の者が同等確認した上でタイムスタンプを付すこととして差し支えないことを明らかにしたものである。

(電磁的記録の記録事項の確認の意義)

4−34の2 規則第3条第5項第4号イ括弧書に規定する「当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項の確認を行う事務」とは、国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項を確認し、必要に応じて当該国税関係書類の原本確認を行うことをいうのであるから留意する。

【解説】

 平成28年度の税制改正前においては、営業担当者等が作成又は受領した国税関係書類について、社内において経理担当者等が経理処理の際に領収書等の書面を確認した上でスキャナによる読み取りを行っていたが、平成28年度の税制改正により、スキャナについて「原稿台と一体となったものに限る。」とする要件が廃止され、スマートフォン等を使用して社外において読み取ることが可能となった。
 一方、スマートフォン等を使用して社外において読み取りを行えば、経理担当者等は、ネットワークを利用して受領者等が読み取った画像を基に経理処理を行うことが可能となり、この場合、これまで国税関係書類の受領者等以外の者が読み取りを行ってきたことによるけんせい効果が失われることから、受領者等が読み取る場合には、受領者等以外の者が当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項の確認を行う体制をとることとされたところである。
 ところで、経理担当者等において国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項を確認したとしても、その確認が受領者等が読み取った画像のみを対象に行われている場合には、スキャナで読み取る前の紙段階で行われる改ざんに対処することができず、相互にけんせいが機能する事務処理体制がとられていないこととなる。
 したがって、国税関係書類の受領者等が読み取る場合には、受領者等以外の者が必要に応じて当該国税関係書類の原本確認を行うことにより、相互にけんせいが機能する事務処理の体制がとられる必要があることを、本通達において留意的に明らかにしたものである。


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