第2章 適用要件

(備付けを要するシステム関係書類等の範囲)

4−11 規則第3条第1項第3号イからニまで((システム関係書類等の備付け))(同条第2項及び第5項第5号において準用する場合を含む。)に掲げる書類は、それぞれ次に掲げる書類をいう。
  なお、当該書類を書面以外の方法により備え付けている場合であっても、その内容を同項第4号((電子計算機等の備付け等))(同条第2項において準用する場合を含む。以下4−12及び4−13において同じ。)に規定する電磁的記録の備付け及び保存をする場所並びに同条第5項第4号((スキャナ保存における電子計算機等の備付け等))に規定する電磁的記録の保存をする場所(以下4−12において「保存場所」という。)で、画面及び書面に、速やかに出力することができることとしているときは、これを認める。

(1) 同条第1項第3号イに掲げる書類 システム全体の構成及び各システム間のデータの流れなど、電子計算機による国税関係帳簿書類の作成に係る処理過程を総括的に記載した、例えば、システム基本設計書、システム概要書、フロー図、システム変更履歴書などの書類

(2) 同号ロに掲げる書類 システムの開発に際して作成した(システム及びプログラムごとの目的及び処理内容などを記載した)、例えば、システム仕様書、システム設計書、ファイル定義書、プログラム仕様書、プログラムリストなどの書類

(3) 同号ハに掲げる書類 入出力要領などの具体的な操作方法を記載した、例えば、操作マニュアル、運用マニュアルなどの書類

(4) 同号ニに掲げる書類 入出力処理(記録事項の訂正又は削除及び追加をするための入出力処理を含む。)の手順、日程及び担当部署並びに電磁的記録の保存等の手順及び担当部署などを明らかにした書類

【解説】

 規則第3条第1項第3号では、各種のシステム関係書類等を備え付けることとされているが、これらの書類の種類及び名称は様々であることから、同号イからニに掲げる各書類について、それぞれの内容と、該当する書類の一般的な名称を例示したものである。同条第5項第5号において準用する場合にあっては、記載されている書類のほか、本通達の(3)に掲げる書類には、例えば、スキャナ装置、電子署名、タイムスタンプ、検索機能及び訂正削除管理機能に関する操作要領が含まれ、(4)に掲げる書類には、例えば、電子署名及びタイムスタンプに係る契約書が含まれることとなることに留意する。
 なお、個々の書類が同号イからニに掲げる複数の区分に該当する場合であっても、それぞれに区分して新たに作成して備える必要はない。
 また、これらの書類は、電磁的記録で保存されている例も多いことから、保存場所で画面及び書面に、整然とした形式及び明りょうな状態で、速やかに出力することができるものであれば、必ずしも書面により保存する必要はないことを併せて明らかにした。

(検索機能の意義)

4−14 規則第3条第1項第5号((検索機能の確保)) (同条第2項及び第5項第5号において準用する場合を含む。)に規定する「電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能」とは、蓄積された記録事項から設定した条件に該当する記録事項を探し出すことができ、かつ、検索により探し出された記録事項のみが、ディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明りょうな状態で出力される機能をいう。この場合、検索項目について記録事項がない電磁的記録を検索できる機能を含むことに留意する。

【解説】

 規則第3条第1項第5号に規定する検索機能とは、蓄積された記録事項から設定した条件に該当する記録事項を探し出すことができ、かつ、探し出された記録事項のみがディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明りょうな状態で出力される機能をいう。したがってどのような条件を指定しても抽出されない電磁的記録が存在する、つまり特定の電磁的記録が検索の対象外となることは、検索ができるとはいえないと考えられるため、たとえ検索項目に係る記録事項がない場合であってもその空欄を対象として検索できるようにする旨を明らかにしたものである。
 なお、改正前の通達の注書きにおいて、検索機能には検索結果を並べ替える機能(いわゆるソート機能)等は含まれないことが記載されていたが、この通達においてもその考え方に変更はなく、ソート機能等を義務付けるものではない。しかしながら近年のコンピュータシステムではソート機能は通常の機能として組み込まれているものも多いと考えられることから、あえて明示しないこととしたものである。

(範囲を指定して条件を設定することの意義)

4−16 規則第3条第1項第5号ロ((検索機能の確保))(同条第2項及び第5項第5号において準用する場合を含む。)に規定する「その範囲を指定して条件を設定することができる」とは、課税期間(国税通則法第2条第9号((定義))に規定する課税期間をいう。以下6−1において同じ。)ごとの国税関係帳簿書類別に日付又は金額の任意の範囲を指定して条件設定を行い検索ができることをいうことに留意する。

【解説】

 規則第3条第1項第5号ロでは、日付及び金額についてはその範囲を指定して条件を設定することができることとされている。
 これは、書面による帳簿書類の場合であれば手に取りかつ目で見て探すことが可能であるが、電子データではそれが不可能であることから保存の要件とされているものである。書面による国税関係帳簿書類の場合は、各課税期間の帳簿書類の種類ごとに整理・保管されるのが通常であり、その一課税期間ごとの帳簿又は書類の中から、必要な項目又は必要な書類を探し出していくものであるから、電子データにおける検索機能の日付の場合の範囲指定においても、二課税期間以上又は別々の帳簿及び書類の種類等をまたがって範囲指定できることを保存義務者に求めるものではないが、一課税期間内の帳簿や書類の種類ごとであれば、任意の範囲を指定して条件設定を行い検索ができる必要があることを明らかにしたものである。
 なお、書類については、例えば、データ量が膨大であるため、一課税期間の電子データを複数の保存媒体に保存せざるを得ないなど、一課税期間を通じて任意の範囲を指定して検索を行うことが困難であることにつき、合理的な理由があると認められる場合には、一課税期間内の合理的な期間ごとに任意の範囲を指定して検索できればよいこととなる。

(入力すべき記載事項の特例)

4−18 法第4条第3項((国税関係書類の電磁的記録による保存))の適用に当たっては、国税関係書類の表裏にかかわらず、印刷、印字又は手書きの別、文字・数字・記号・符号等の別を問わず、何らかの記載があるときは入力することとなるが、書面に記載されている事項が、取引によって内容が変更されることがない定型的な事項であり、かつ、当該記載されている事項が規則第3条第5項第4号((スキャナ保存における電子計算機等の備付け等))に規定する電磁的記録の保存をする場所において、同一の様式の書面が保存されていることにより確認できる場合には、当該記載されている事項以外の記載事項がない面については入力しないこととしても差し支えないこととする。

【解説】

 国税関係書類の入力すべき範囲については、法第4条第3項で、「当該国税関係書類に記載されている事項を…電磁的記録に記録する場合であって」と規定していることから、国税関係書類の表裏にかかわらず、原則として記載されている事項についてはすべて入力する必要がある。
 したがって、裏面には印刷等がなく、全くの白紙である場合は裏面の入力を要しないが、例えば取引先の情報などの取引状況について、何らかの符号で裏面に記したりしている場合には、当該裏面も入力を要することとなる。
 ところで、書面に記載された事項には、保険契約申込書の裏面に印刷されている定型的な注意事項などのように、最初から紙に印刷された事項も含まれるのであるが、そのような定型的な記載事項は取引によって内容が変更されることがないことから、当該定型的な記載事項が記載されている書類を使用する前の状態で保存しているなどにより電磁的記録の保存をする場所で確認できる場合には、電磁的記録に記録した場合と同等と考えられるため、当該記載事項以外の記載事項がない面については入力をしないこととしても差し支えない旨を明らかにしている。
 なお、契約書など、いわゆるひな形を使用して作成する文書の場合は、そのひな形は単なる見本であり、通常内容を変更することが可能であるので、たとえひな形の内容を変更せずに文書を作成したものであっても、記載されている事項はすべて入力することとなる。

(速やかに行うことの意義)

4−19 規則第3条第5項第1号イ((入力方法))に規定する「速やかに」の適用に当たり、国税関係書類の作成又は受領後1週間以内に入力している場合には、速やかに行っているものとして取り扱う。
 また、同号ロに規定する「速やかに」の適用に当たり、その業務の処理に係る通常の期間を経過した後、1週間以内に入力している場合には同様に取り扱う。

【解説】

 国税関係書類を入力する場合には、紙段階の改ざん可能性を低くする観点からは、当該国税関係書類の作成又は受領後直ちに行うことが望ましいのであるが、他の業務との関係上又は外出先で書類を作成又は受領する場合など、書類を作成又は受領した日であってもスキャナで読み取ることができない場合も一般的であると考えられる。
 したがって、日次の処理を求めることも業務の実態に即しているとはいえないと考えられることから、日次以外の一般的に考えられる期間の最小単位であり、また、短期間の業務処理サイクルの単位としても一般的に用いられる1週間以内に入力を行っている場合には、速やかに行っているものとして取り扱うこととしたものである。

(業務の処理に係る通常の期間の意義)

4−20 規則第3条第5項第1号ロ((入力方法))に規定する「その業務の処理に係る通常の期間」とは、国税関係書類の作成又は受領からスキャナで読み取り可能となるまでの業務処理サイクルの期間をいうことに留意する。
 なお、月次処理については通常行われている業務処理サイクルと認められることから、最長1ヶ月の業務処理サイクルであれば、「その業務の処理に係る通常の期間」として取り扱うこととする。

【解説】

 規則第3条第5項第1号ロでは、「その業務の処理に係る通常の期間」と規定しているが、同条第1項第1号ロでも同様な規定がある。その考え方は、いずれも、企業等においてはデータ入力又は書類の事務処理などの業務を一定の業務処理サイクルで行うことが通例であり、また、その場合には適正な入力又は処理を担保するために、その業務処理サイクルを事務の処理に関する規程等で定めることが通例であるという、共通したものである。
 このような考え方から、同条第5項第1号ロにおける「その業務の処理に係る通常の期間」とは、書類の事務処理、つまり国税関係書類の作成又は受領から、企業内でのチェックや決裁等を経てスキャナで読み取り可能となるまでの業務処理サイクルの期間をいう旨を明らかにしている。
 なお、このように企業内チェック等が行われる場合には、月次の処理は通常行われている業務処理サイクルと認められることから、1ヶ月の業務処理サイクルであれば、通常の期間として取り扱う旨を併せて明らかにしている。

(関連する国税関係帳簿)

4−21 規則第3条第5項第1号ロ((入力方法))に規定する「関連する国税関係帳簿」には、例えば、次に掲げる国税関係書類の種類に応じ、それぞれ次に定める国税関係帳簿がこれに該当する。

(1) 契約書 契約に基づいて行われた取引に関連する帳簿(例:売上の場合は売掛金元帳等)等

(2) 領収書 経費帳、現金出納帳等

(3) 請求書 買掛金元帳、仕入帳、経費帳等

(4) 納品書 買掛金元帳、仕入帳等

(5) 領収書控 売上帳、現金出納帳等

(6) 請求書控 売掛金元帳、売上帳、得意先元帳等

【解説】

 国税関係書類に係る記録事項の入力をその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行う場合においては、当該国税関係書類に関連する国税関係帳簿が法第4条第1項((国税関係帳簿の電磁的記録による保存等))又は第5条第1項((国税関係帳簿の電子計算機出力マイクロフィルムによる保存等))の承認を受けていることが要件とされている。
 したがって、保存義務者によって作成されている帳簿の種類及び名称は様々であることから、国税関係書類の種類に応じ、一般的にはどのような帳簿が必要であるかを例示したものである。

(一の入力単位の意義)

4−22 規則第3条第5項第2号ロ((電子署名))に規定する「一の入力単位」とは、複数枚で構成される国税関係書類は、そのすべてのページをいい、台紙に複数枚の国税関係書類(レシート等)を貼付した文書は、台紙ごとをいうことに留意する。

【解説】

 規則第3条第5項第2号ロでは、「一の入力単位」ごとに電子署名を行うこととされている。この場合の「一の入力単位」とは、例えば、3枚で構成される請求書の場合には3枚で一つの国税関係書類を構成しているため、一度に読み取る3枚が一の入力単位となる。また、台紙に小さなレシートなどを複数枚貼付した場合は、複数の国税関係書類を一回のスキャニング作業で電子化することとなるため、台紙が一の入力単位となることを明らかにしたものである。
 したがって、ここにいう入力単位とは、意味として関連付けられたもの及び物理的に関連付けられたものをいうのであるから、お互いに関係を持たない複数の国税関係書類を一度にスキャニングしたからといって、それをもって一の入力単位ということにはならない。
 なお、複数枚の国税関係書類を台紙に貼付してスキャニングした場合、それぞれの国税関係書類ごとに関連する帳簿の記録事項との関連性が明らかにされ、適切に検索できる必要があることに留意する。

(入力を行う者の意義)

4−23 規則第3条第5項第2号ロ((電子署名))に規定する「入力を行う者」とは、スキャナで読み取った画像が当該国税関係書類と同等であることを確認する入力作業をした者をいい、また、「その者を直接監督する者」とは、当該入力作業を直接に監督する責任のある者をいうのであるから、例えば、企業内での最終決裁権者ではあるが、当該入力作業を直接に監督する責任のない管理職の者(経理部長等)はこれに当たらないことに留意する。
 なお、当該入力作業を外部の者に委託した場合には、委託先における入力を行う者又はその者を直接監督する者の電子署名を行うこととなることに留意する。

【解説】

 規則第3条第5項第2号ロでは、国税関係書類に係る記録事項をスキャナで読み取る際に、入力を行う者又はその者を直接監督する者の電子署名を行うこととされている。これは入力を行った者を特定する目的のほか、入力を行った後、直ちに電磁的記録に電子署名を行うことによって、当該電磁的記録の真実性を確保することを目的としているものである。
 ところで、「入力を行う者」は、スキャナ操作をした者、最終的な画像の確認をした者など、入力に従事した者が複数となる場合がある。
 このような場合は、国税関係書類をスキャナで読み取って保存する際には、紙とスキャナで読み取った画像が同等であることをディスプレイ上で確認する作業が必ず伴い、その確認直後に行われる電子署名が重要であると考えられることから、「入力を行う者」とはスキャナで読み取った画像が紙の記載事項や色調と同等であることを確認した者をいう旨を明らかにしたものである。
 また、当該入力を行う者を直接監督する者の電子署名とすることもできるが、直接監督する者は、実際のスキャナ作業に係わっていることが必要であると解される。したがって、「その者を直接監督する者」とは、スキャナ作業を直接指揮監督するという形で当該作業に係わっている者をいうのであるから、例えば、入力を行う者を直接監督する責任者が営業部長であり、書類の最終決裁権者が経理部長であるような場合における経理部長は、当該スキャナ作業を直接指揮監督しているとはいえないので、この場合の直接監督する者には当たらない旨を併せて明らかにしている。

(電子署名と電磁的記録の関連性の確保)

4−24 規則第3条第5項第2号ロ((電子署名))に規定する「電子署名」は、当該電子署名を行った国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項の訂正又は削除を行った場合には、当該電子署名を検証することによってこれらの事実を確認することができるものでなければならないことに留意する。
 また、同号ハ((タイムスタンプ))に規定する「タイムスタンプ」についても、当該タイムスタンプを検証することによって訂正又は削除を行った事実を確認することができるものでなければならないことに留意する。

【解説】

 規則第3条第5項第2号ロに規定する電子署名は、当該電子署名を行った電磁的記録の記録事項が訂正又は削除された場合には、当該電子署名を検証することによってそのことが確認できる機能を有していることから、国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項に電子署名を行うことにより、当該電磁的記録の記録事項の訂正又は削除を行った事実を確認できることを目的の一つとしているものである。
 ところで、国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項に電子署名を行ったとしても、その後に何の記録も残らずに当該電磁的記録の記録事項を電子署名が行われていない状態に戻せる場合や、電磁的記録の記録事項との適切な関連性を確保していない場合などには、国税関係書類をスキャナで読み取った際に行った電子署名の検証では電磁的記録の記録事項の訂正又は削除の事実が確認できなくなることがある。
 したがって、電子署名を行った電磁的記録の記録事項の訂正又は削除を行った場合には、国税関係書類をスキャナで読み取った際に行った電子署名を検証することによってこれらの事実を確認できるようにしておかなくてはならないことを念のため明らかにしたものである。

(電子署名の失効に類する事由の例示)

4−25 規則第3条第5項第2号ロ(2)((電子署名))に規定する「その他これらに類する事由」とは、次のような事由がこれに該当する。

(1) 商業登記法第12条の2第7項の規定により届出ができることとなった場合

(2) 商業登記規則第33条の12第1項第1号(第3号の場合を除く。)及び第2号に該当することとなった場合

(3) 商業登記規則第33条の13第1項に規定する電子証明書の使用を休止した場合(使用を再開した場合を除く。)

(4) 商業登記規則第33条の16の規定により電子証明書の証明をするのが相当でなくなった場合

 なお、規則第3条第5項第2号ロ(2)の規定の適用に当たっては、電子署名を行った時に失効等していないことが必要であることを規定していることに留意する。

【解説】

 規則第3条第5項第2号ロに規定する電子署名の目的は、電磁的記録の改ざん検知と入力を行った者を特定することであるから、電子署名を行う者の本人確認が法令によって担保されている電子署名に限ることとされている。
 しかし、そのような電子署名であっても、電子署名法における失効の場合には、電子署名を行った者が本人確認された者であるということを法令によって担保されないこととなるため、同号ロ(2)においては、国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項に行う電子署名は失効等していない必要があることを規定している。
 したがって、その他これらに類する事由には、商業登記法に基づく電子署名の失効に準ずる場合が該当することとなる旨を明らかにしたものである。本通達の(1)から(4)の法令(平成17年3月現在)の具体的内容は次のとおりである。

(1) 電子証明書に記載された事項が、当該電子署名を本人が行ったものであることを確認するために必要な事項でなくなったとき。

(2) 電子証明書に表された登記事項に変更(行政区画の変更や住居表示の変更による登記事項の変更を除く。)を生ずべき登記の申請書を法務局に提出したとき(申請について却下又は取り下げ等があった場合を除く。)及びそれらの登記がなされたとき。

(3) 電子証明書の使用を休止したとき(使用を再開したときを除く。)。

(4) 電子認証登記所の事故その他の事由により電子証明書の証明をするのが相当でなくなったとき。

 なお、当該規定は電子署名を行う際の要件であることから、電子署名を行った時点で失効等していないことが必要であって、当該電子署名を行った以後においても失効等しないことを求めているものではない旨を念のため明らかにしている。

(電子署名の有効性を保持するその他の方法の例示)

4−26 規則第3条第5項第2号ロ(3)((電子署名))に規定する「その他の方法」とは、国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項に行った電子署名が同号ロ(1)及び(2)を満たしている期間内に、当該電子署名が当該電子署名を行った時と同じ状態にあることを当該国税関係書類の保存期間を通じて確認することができるようにする措置をいう。
 このような措置としては、例えば、電子署名を行った日時が特定でき、次の情報を電子署名に係る電子証明書の有効期間内かつ失効していないうちに取得した上で、取得したこれらの情報にタイムスタンプを付すなどして、情報を取得した日時及び変更がされていないことを確認することができる状態で当該情報を保存する方法がこれに該当する。

(1) 電子署名に係る電子証明書

(2) 電子署名に係る電子証明書の認証パスに存在する認証局の電子証明書

(3) 電子証明書の失効情報(電子署名を行った時に電子証明書が有効であったことを示す情報)

 また、同号ハ(1)((タイムスタンプ))に規定する「その他の方法」については、国税関係書類に係る電磁的記録等に付したタイムスタンプが当該タイムスタンプを付した時と同じ状態にあることを当該国税関係書類の保存期間を通じて確認できる措置をいう。

【解説】

 規則第3条第5項第2号ロ(3)では、電子署名を行った時点において電子署名に係る電子証明書の有効期間内等であること及び失効等していないことを、国税関係書類の保存期間を通じて確認できることとされている。電子証明書の有効期間内等であれば、電子署名の検証を行うことによってこれらのことを認定認証事業者等に対して確認することは可能であるが、電子署名やタイムスタンプに有効期間等がある場合には、国税関係書類の保存期間の方が当該有効期間等より長いことがあり、有効期間等を過ぎてしまった場合はもはやその方法によることができないこととなる。
 この場合は、有効期間等を過ぎてしまったとしても、電子署名が当該電子署名を行った時と同じ状態、つまり認定認証事業者等に対して確認したときと同様な結果を得られるような状態にする措置を講じる必要がある。したがって、そのことを明らかにしたものである。
 このような措置としては、例えば、電子署名を行った日時が特定でき、次の情報を取得した上で、これらの情報にタイムスタンプを付すなどして、取得した日時及び変更されていないことを確認することができる状態で当該情報を保存する方法がこれに該当することを明らかにしている。この場合、(3)の電子証明書には電子署名に係るものだけでなく、(2)の認証局の電子証明書も含まれることに留意する。

(1) 電子署名に係る電子証明書

(2) 電子署名に係る電子証明書の認証パスに存在する認証局の電子証明書

(3) 電子証明書の失効情報(電子署名を行った時に電子証明書が有効であったことを示す情報)

 また、情報を取得した日時及び内容等が変更されていないことを確認するためにタイムスタンプを使用する場合、そのために使用するタイムスタンプは、パソコンのタイマーで作成したタイムスタンプなどではなく、信頼のおけるタイムスタンプでなければならないが、同号ハに規定するタイムスタンプについては信頼のおけるものと認められることとなる。
 なお、タイムスタンプの「その他の方法」についても電子署名と考え方は同様であるので、併せてそのことを明らかにしている。

(読み取る際の意義)

4−27 規則第3条第5項第2号ハ((タイムスタンプ))に規定する「スキャナで読み取る際に」とは、原則として電子署名を行った後、直ちに電子署名が行われた電磁的記録ごとにタイムスタンプを付すことをいうのであるが、国税関係書類をスキャナで読み取った日(電子署名を行った日)が特定できるように、書類ごとや部署ごとに電磁的記録をまとめてタイムスタンプを付している場合には、スキャナで読み取る際にタイムスタンプを付したものとして取り扱う。
 この場合、国税関係書類をスキャナで読み取った後24時間以内にタイムスタンプを付している場合には、スキャナで読み取った日が特定できるものとして取り扱うことに留意する。

【解説】

 規則第3条第5項第2号ハでは、スキャナで読み取る際にタイムスタンプを付すこととされているが、電子署名を行う時期についても規則第3条第5項第2号ロと同様な規定となっていることから、原則として国税関係書類をスキャナで読み取り、正しくスキャニングされていることを確認した都度電子署名を行い、その後、電子署名が行われた電磁的記録ごとにタイムスタンプを付すこととなる。
 ところでタイムスタンプは、個々の国税関係書類に係る電磁的記録の変更の有無の確認及び個々の国税関係書類をスキャナで読み取った日(電子署名を行った日)を特定するために付すものであるが、個々の国税関係書類に係る電磁的記録の変更をした場合は、電磁的記録と電子署名が適切な関連性を持っていれば当該電子署名で確認できることとなる。
 したがってタイムスタンプについては、国税関係書類をスキャナで読み取った日を特定することができれば、保存義務者の実情に応じて、例えば書類ごとや部署ごとに、電子署名を行った日が同一な電磁的記録のすべてを対象として1つのタイムスタンプを付しているような場合でも、スキャナで読み取る際に付したものとして取り扱う旨を明らかにしたものである。
 なお、日をまたいで入力した場合、何日の業務としてスキャナで読み取ったかということが特定できれば、一連の入力業務を、日を特定するために零時の前後で分ける必要もないと考えられることから、スキャナで読み取った後24時間以内にタイムスタンプを付している場合には、スキャナで読み取った日が特定できるものとして取り扱う旨を明らかにしている。

(タイムスタンプの付し方)

4−28 規則第3条第5項第2号ハ((タイムスタンプ))の規定の適用に当たり、「電子署名が行われている当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項」とは、電子署名を行うことにより作成された電磁的記録の記録事項(以下4−28において「電子署名データ」という。)及び国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項(以下4−28において「画像データ」という。)の両方を指すのであるから、電子署名データと画像データの両方を対象として、一のタイムスタンプを付す必要があることに留意する。

【解説】

 規則第3条第5項第2号ハでは、電子署名が行われている画像データにタイムスタンプを付すこととされている。
 ところで、画像データに電子署名を行う場合、電子署名データと画像データが一つのファイルとなる場合のほか、画像データのファイルと電子署名データのファイルの2つのファイルとなる場合がある。
 電子署名が行われている画像データとは、電子署名データと画像データと解されることから、電子署名データと画像データが一つのファイルとなる場合だけでなく、2つのファイルとなる場合であっても、タイムスタンプは画像データ及び電子署名データの両方に付すこととなる旨を明らかにしたものである。
 この内容を図示すれば次のとおりとなる。

タイムスタンプの付し方図

(認定業務)

4−29 規則第3条第5項第2号ハ((タイムスタンプ))に規定する「財団法人日本データ通信協会が認定する業務」とは、当該財団法人が認定する時刻認証業務をいう。

【解説】

 規則第3条第5項第2号ハでは、財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプを付すこととされている。当該財団法人が認定する業務は複数あるが、ここでいう業務とは時刻認証業務であることを明らかにしたものである。

(スキャナ保存における訂正削除の履歴の確保の適用)

4−30 規則第3条第5項第2号ホ((スキャナ保存における訂正削除の履歴の確保))に規定する「国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合」とは、既に保存されている電磁的記録を訂正又は削除した場合をいうのであるから、例えば、受領した国税関係書類の書面に記載された事項の訂正のため、相手方から新たに国税関係書類を受領しスキャナで読み取った場合などは、新たな電磁的記録として保存しなければならないことに留意する。

【解説】

 規則第3条第5項第2号ホでは、訂正又は削除を行う前の内容を確認できる電子計算機処理システムを使用することとされている。このため、例えば、一度スキャナで読み取り保存されている電磁的記録について、内容の変更があったとして新たに国税関係書類を相手方から受領した場合、新たに受領した国税関係書類をスキャナで読み取り、当初保存している電磁的記録の最新版として登録することが考えられなくもない。
 しかしながら、国税関係書類に係る電磁的記録は、紙の国税関係書類に代えて保存しているものであることから、紙と同数の電磁的記録が存在しなくてはならない。
 したがって、新たに国税関係書類を受領した場合は、その理由にかかわらず新たな電磁的記録として保存することになることを念のため明らかにしたものである。

(スキャナ保存における訂正削除の履歴の確保の特例)

4−31 規則第3条第5項第2号ホ((スキャナ保存における訂正削除の履歴の確保))に規定する「国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合」とは、スキャナで読み取った国税関係書類の書面の情報の訂正又は削除を行った場合をいうのであるが、書面の情報(書面の訂正の痕や修正液の痕等を含む。)を損なうことのない画像の情報の訂正は含まれないことに留意する。

【解説】

 規則第3条第5項第2号ホでは、国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項の訂正を行った場合にはその内容が確認できる必要があることとされている。国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項とは、文字の情報、色の情報などスキャナで読み取った当該国税関係書類の書面の情報をいうのであるから、これらを訂正する場合には、原則としてその訂正の内容が確認できなければならないこととなる。
 しかしながら、スキャナで画像を読取る場合には、使用する者が意識することなしに何らかの画像に関する電磁的記録の補正が行われることが通常であり、このような補正までその前の内容を確認できることを求めることはスキャナの実態に即していないとも考えられる。
 したがって、同号ホにいう電磁的記録の記録事項の訂正には、このような書類の情報を損なうことのない軽微な画像補正は含まれないことを明らかにしている。
 一方、訂正の痕や修正液の痕等が消えてしまうような画像補正の場合は、画像補正前の内容が確認できる必要があることとなる。

(スキャナ保存における訂正削除の履歴の確保の方法)

4−32 規則第3条第5項第2号ホ((スキャナ保存における訂正削除の履歴の確保))に規定する「これらの事実及び内容を確認することができる」とは、電磁的記録を訂正した場合は、例えば、上書き保存されず、訂正した後の電磁的記録が新たに保存されること、又は電磁的記録を削除しようとした場合は、例えば、当該電磁的記録は削除されずに削除したという情報が新たに保存されることをいう。
 したがって、スキャナで読み取った最初のデータと保存されている最新のデータが異なっている場合は、その訂正又は削除の履歴及び内容のすべてを確認することができることに留意する。
 なお、削除の内容のすべてを確認することができるとは、例えば、削除したという情報が記録された電磁的記録を抽出し、内容を確認することができることをいう。

【解説】

 規則第3条第5項第2号ホに規定する「これらの事実及び内容を確認することができる」という要件を満たす方法として、次のイ及びロを満たすようなシステムによっている場合には、この要件を満たすこととなる旨を明らかにしたものである。

イ 記録された電磁的記録は削除されないこと(削除の必要が生じた場合には、削除したという情報が記録され、物理的な削除がされないものであること。)

ロ 電磁的記録を訂正した場合には、上書き保存されないこと

 なお、削除したという情報が記録されている電磁的記録については、規則第3条第5項第5号において準用する規則第3条第1項第5号に規定する検索機能により抽出が行われないこと及び規則第3条第5項第3号に規定する帳簿との関連性が確認できないこととしても差し支えないが、削除を行った事実及び内容を確認することができる必要があることから、削除したという情報が記録された電磁的記録を抽出し内容の確認ができる必要があることを念のため明らかにしたものである。

(帳簿書類間の関連性の確保の方法)

4−33 規則第3条第5項第3号((帳簿書類間の関連性の確保))に規定する「関連性を確認することができる」とは、例えば、相互に関連する書類及び帳簿の双方に伝票番号、取引案件番号、工事番号等を付し、その番号を指定することで、書類又は国税関係帳簿の記録事項がいずれも確認できるようにする方法等によって、原則としてすべての国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項と国税関係帳簿の記録事項との関連性を確認することができることをいう。
 この場合、関連性を確保するための番号等が帳簿に記載されていない場合であっても、他の書類を確認すること等によって帳簿に記載すべき当該番号等が確認でき、かつ、関連する書類が確認できる場合には帳簿との関連性が確認できるものとして取り扱う。

(注) 結果的に取引に至らなかった見積書など、帳簿との関連性がない書類についても、帳簿と関連性を持たない書類であるということを確認することができる必要があることに留意する。

【解説】

 スキャナ保存できる国税関係書類は、取引に基づいて作成又は受領した書類であることから、帳簿のいずれかの記載事項と関連性を持っていると考えられる。紙の書類における保存においても、例えば、見積書は帳簿と直接には関連がないが、見積番号などによって帳簿上のどの取引に係る見積書なのか関連を確認できるようにしていることが通例であると考えられる。
 したがって、直接帳簿との関連性を持たない国税関係書類を含め、原則としてすべての国税関係書類について紙で国税関係書類を保管している場合と同様な方法などによって、関連性を確認することができるようにしなければならないことを明らかにしている。(国税関係帳簿の記録事項と必ずしも1対1の対応関係である必要はない。)さらに、規則第3条第6項((適時入力))による入力では、帳簿作成の後にスキャナで読み取ることも想定されるため、何らかの方法で関連性が確認できる場合には、帳簿への相互関連性確保のための項目の記載は要しないこととする旨を明らかにしている。
 また、取引案件番号等により相互関連性を確保する場合であって、当該番号が付替え、統合、分割等された場合には、それらの関係を明らかにしておくことが必要となる。
 なお、帳簿との関連性がないものについても、「関連性がない書類」ということを確認できる必要があることから、例えば、通常の取引では使用されない取引案件番号等を付し抽出できるようにするなどして、国税関係書類の内容を確認できる必要があることを併せて明らかにしている。

(4ポイントの文字が認識できることの意義)

4−34 規則第3条第5項第4号ニ((スキャナ保存における電子計算機等の備付け等))の規定は、すべての国税関係書類に係る電磁的記録に適用されるのであるから、日本工業規格X6933のテストチャートを同項第2号の電子計算機処理システムで入力し、同項第4号に規定するカラーディスプレイの画面及びカラープリンタで出力した書面でテストチャートの画像を確認し、4ポイントの文字が認識できる場合の当該電子計算機処理システム等を構成する各種機器等の設定等ですべての国税関係書類を入力し保存を行うことをいうことに留意する。
 なお、テストチャートの文字が認識できるか否かの判断に当たっては、拡大した画面又は書面で行っても差し支えない。

【解説】

 規則第3条第5項第4号ニでは、国税関係書類に係る電磁的記録を国税庁長官の定めるところにより4ポイントの文字が認識できるような状態にしておくことが必要とされている。
 これはすべての国税関係書類に係る電磁的記録に適用されるのであるが、すべての国税関係書類に4ポイントの文字が含まれているわけではないことから、日本工業規格X6933のテストチャートをスキャナ保存で使用するシステムで入力し、出力した画面及び書面において当該テストチャートの4ポイントの文字(4の相対サイズの文字及びISO図形言語)の認識が可能となるように構成された、電子計算機処理システム等の各種機器やプログラムの設定及び使用方法等と同じ設定、使用方法等で、すべての国税関係書類の入力及び電磁的記録の保存を行うことをもって、4ポイントの文字が認識できるような状態であるとしたものである。そこで、このことを明らかにしたものである。

(スキャナ保存の検索機能における主要な記録項目)

4−35 規則第3条第5項第5号((準用))の規定により読み替えられた同条第1項第5号イ((検索機能の確保))に規定する「取引年月日、その他の日付け、取引金額その他の国税関係書類の種類に応じた主要な記録項目」には、例えば、次に掲げる国税関係書類の区分に応じ、それぞれ次に定める記録項目がこれに該当する。
 なお、検索は国税関係書類の種類別にできることを要することに留意する。

(1) 領収書 領収年月日、領収金額、取引先名称

(2) 請求書 請求年月日、請求金額、取引先名称

(3) 納品書 納品年月日、品名、取引先名称

(4) 注文書 注文年月日、注文金額、取引先名称

(5) 見積書 見積年月日、見積金額、取引先名称

(注) 一連番号等を国税関係帳簿書類に記載又は記録することにより規則第3条第5項第3号((帳簿書類間の関連性の確保))の要件を確保することとしている場合には、当該一連番号等により国税関係帳簿(法第4条第1項((国税関係帳簿の電磁的記録による保存等))又は第5条第1項((国税関係帳簿の電子計算機出力マイクロフィルムによる保存等))の承認を受けているものに限る。)の記録事項及び国税関係書類(法第4条第3項の承認を受けているものに限る。)を検索することができる機能が必要となることに留意する。

【解説】

 規則第3条第5項第5号において準用する規則第3条第1項第5号イ(読み替え後)に規定する「取引年月日、その他の日付け、取引金額その他の国税関係書類の種類に応じた主要な記録項目」には、次のような記録項目が該当すると考えられるから、この考え方に基づいて、主な国税関係書類の種類ごとに該当の具体的記録項目を例示したものである。

イ 日付け(国税関係書類に記載すべき日付けをいう。)

ロ 金額(国税関係書類に記載すべき取引の金額又は資産の譲渡等の対価の額等をいい、単価及び残高を含まない。)

ハ 取引先名称(国税関係書類に記載すべき取引先名称をいう。)

 なお、取引先名称は必ずしも名称でなく、取引先コードが定められ、当該コード表が備え付けられている場合には、当該コードによる記録でも差し支えない。


戻る