(問67)

税務調査により、支払利子合計額又は適用関連法人配当等の額の合計額が当初申告と異なることとなった場合、通算法人の受取配当等の益金不算入額の計算はどのように行うこととなりますか。

【回答】

原則として、関連法人株式等に係る配当等の額から控除する利子の額に相当する金額を支払利子等の額の合計額の10%に相当する金額とする特例を適用できるかどうかの判定等において、支払利子合計額又は適用関連法人配当等の額の合計額を当初申告の金額に固定して、各通算法人の受取配当等の益金不算入額を計算することとなります。
  なお、修正申告を行った通算法人の修正申告後の適用関連法人配当等の額の合計額が当初申告における支払利子配賦額(修正申告における支払利子合計額から当初申告における支払利子合計額を減算した金額(利子修正額)がある場合には、その利子修正額を加算した金額)の10%に相当する金額に満たない場合には、その満たない部分の金額を益金の額に算入します。
  ただし、当初申告において関連法人株式等に係る配当等の額の4%に相当する金額を関連法人株式等に係る配当等の額から控除する利子の額に相当する金額としている場合や、通算グループ内の全法人が損益通算を再計算する等の一定の場合においては、関連法人株式等に係る配当等の額から控除する利子の額に相当する金額を支払利子等の額の合計額の10%に相当する金額とする特例を適用できるかどうかの判定等において、支払利子合計額又は適用関連法人等の額の合計額を当初申告の金額に固定せずに受取配当等の益金不算入額を再計算することとなります。

【解説】

(1) 支払利子配賦額の計算等における修正申告等による影響の遮断

通算法人の事業年度(その通算法人に係る通算親法人の事業年度終了の日に終了するものに限ります。)若しくは他の通算法人のその事業年度終了の日に終了する事業年度(以下「通算事業年度」といいます。)に係る支払利子合計額又はその通算事業年度において受ける適用関連法人配当等の額の合計額が、当初申告支払利子合計額又は当初申告関連法人配当合計額(注1)と異なる場合、適用関連法人配当等の額から控除する利子の額に相当する金額を支払利子等の額の合計額の10%に相当する金額とする特例を適用できるかどうかの判定(注2)及び支払利子合計額へ加算され又は支払利子合計額から控除される金額の計算に当たり、次のイ〜ニの金額の計算(イ、ハ及びニの支払利子配賦額(注3)の計算を含みます。)については、当初申告支払利子合計額又は当初申告関連法人配当合計額をその通算事業年度に係る支払利子合計額又はその通算事業年度において受ける適用関連法人配当等の額の合計額とみなすこととされています(令195)。

  1. イ 支払利子配賦額(注3)の10%に相当する金額(令192一)
  2. ロ 関連法人株式等に係る配当等の額の合計額(適用関連法人配当等の額の合計額)の4%に相当する金額(令192二)
  3. ハ 支払利子配賦額(注3)が支払利子合計額を超える場合におけるその超える部分の金額(令194一)
  4. ニ 支払利子配賦額(注3)が支払利子合計額に満たない場合におけるその満たない部分の金額(令194二)
これにより、その通算法人は、他の通算法人の当初申告支払利子合計額又は当初申告関連法人配当合計額に誤りがあった場合においても、関連法人株式等に係る受取配当等の益金不算入額は変わらないことになり、その通算法人の当初申告支払利子合計額又は当初申告関連法人配当合計額に誤りがあった場合には、その通算法人についてのみ修正申告又は更正を行うことになります。

(注1) 当初申告支払利子合計額又は当初申告関連法人配当合計額とは、通算事業年度の期限内申告書に添付された書類にその通算事業年度に係る支払利子合計額又はその通算事業年度において受ける適用関連法人配当等の額の合計額として記載された金額をいいます。

(注2) 適用関連法人配当等の額から控除する利子の額に相当する金額について、適用事業年度(関連法人株式等について法人税法第23条第1項の規定の適用を受ける事業年度をいいます。以下同じです。)の関連法人株式等に係る配当等の額の合計額の4%に相当する金額に代えて、適用事業年度の支払利子配賦額の10%に相当する金額とすることができるかどうか(適用事業年度の支払利子配賦額の10%に相当する金額(上記イ)が適用事業年度の関連法人株式等に係る配当等の額の合計額の4%に相当する金額(上記ロ)以下であるかどうか)の判定をいいます。

(注3) 支払利子配賦額とは、次の算式により計算した金額をいいます(令194)。

計算例

(2) 遮断措置があった場合における控除不足となる金額の益金算入

(1)の遮断措置があった場合に(1)の通算法人の通算事業年度において受ける修更正後の適用関連法人配当等の額の合計額がその通算事業年度に係る当初申告における支払利子配賦額(イに掲げる金額がある場合にはその金額を加算した金額とし、ロに掲げる金額がある場合にはその金額を控除した金額とします。)の10%に相当する金額に満たない場合には、その満たない部分の金額に相当する金額は、その通算事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入することとされています(令196)。

  1. イ その通算事業年度に係る支払利子合計額が当初申告支払利子合計額を超える場合におけるその超える部分の金額(令196一)
  2. ロ その通算事業年度に係る支払利子合計額が当初申告支払利子合計額に満たない場合におけるその満たない部分の金額(令196二)

(3) 遮断措置等の不適用(全体再計算)

通算事業年度のいずれかについて修正申告書の提出又は更正がされる場合において、次に掲げる場合のいずれかに該当するときは、(1)の通算法人の通算事業年度については、遮断措置等(上記(1)及び(2))は適用しないこととされています(令197)。

  1. イ 各通算法人の支払利子合計額(上記(1)による遮断措置適用後)を合計した金額の10%に相当する金額が、各通算法人の適用関連法人配当等の額の合計額(上記(1)による遮断措置適用後)を合計した金額の4%に相当する金額を超える場合
  2. ロ 各通算法人の支払利子合計額(正当額)を合計した金額の10%に相当する金額が、各通算法人の適用関連法人配当等の額の合計額(正当額)を合計した金額の4%に相当する金額を超える場合
  3. ハ 法人税法第64条の5第6項の規定の適用がある場合
  4. 二 法人税法第64条の5第8項の規定の適用がある場合

(4) 計算例
  1. イ 修正申告により遮断措置が適用される場合においてA社の支払利子が増加し益金不算入額の一部が減少するときの計算について
  
A社 
B社 
C社 
合計  
 1配当等の額    
200  
 
1,800  
 
0  
 
2,000 
 2 1×4%    
8  
 
72  
 
 
80( ※3) 
 3支払利子合計額    
当初申告: 100
 修正申告: 250(+   
 150)  
 
200  
 
300 
 
当初申告: 600
 修正申告: 750
 (+ 150) 
 4支払利子配賦額 (当初申告の3の合計額×(当初申告の1/当初申告の1の合計額))   
600×200/2,000=
60(※1 )  
 
600×1,800
/2,000=
540(※1 )  
  
 
600 
 5{3+(4−当初申告の3)}×10%    
60−100= ▲40(※1 )当初申告: (100+ ▲40)×10%= 6修正申告: (250+ ▲40)×10%= 21(※2 ) 
 
540−200=
340(※1 )
(200+ 340)
×10%= 54 
  
 
当初申告: 60
修正申告: 75
(※3) 
 65を配当等の額から控除できるかどうか(当初申告の2≧当初申告の5に該当するかどうか)の判定    
該当
(8≧6) 
 
該当
 (72≧54) 
  
 
 7配当等の額から控除する金額(6が該当の場合は5、それ以外の場合は2)    
当初申告: 6
修正申告: 21
(※2 )  
 
54 
  
 
当初申告: 60
修正申告: 75
(+ 15) 
 8益金不算入額 (17)    
当初申告: 194
(200−6= 194)
修正申告: 179
(200−21= 179)  
 
1,746
(1,800−54
= 1,746) 
  
 
当初申告: 1,940
修正申告: 1,925 

(※1) 支払利子配賦額(A社:60 B社:540)及びA社の支払利子合計額から控除していた金額40は当初申告における金額に固定されることとなります。

(※2)  修正申告により増加したA社の支払利子150は通算グループ内で配賦せず、A社の支払利子としてA社の配当等の額から控除する利子の額の計算をすることとなります。

(※3)  5の合計の当初申告の金額(60)及び修正申告の金額(75)が2の合計(80)の金額を超えていないため、上記(3)イ及びロの場合に該当せず、遮断措置が適用されます。

  1. ロ 修正申告により遮断措置が適用される場合においてA社の配当額が減少し支払利子配賦後の控除額を控除しきれなくなったときの益金算入額の計算について
A社
B社
合計 
1配当等の額
当初申告: 10,000
修正申告: 50
(▲9,950) 
2,500
当初申告: 12,500
修正申告: 2,550
(▲9,950)
2 1×4% 
当初申告: 400
修正申告: 2 
100
当初申告: 500
修正申告: 102
(※6 )
3支払利子合計額 
500
500
1,000
4支払利子配賦額 (当初申告の3の合計額 ×(当初申告の 1/当初申告の1の合計額)) 
1,000×
10,000/12,500=
800(※4 ) 
1,000×2,500/12
,500= 200(※4 ) 
1,000
5{3+(4−当初申告の3)}×10% 
800−500= 300
(500+ 300)×10%
= 80
200−500= ▲300
(500+ ▲300)×
10%= 20
100
(※6 )
65を配当等の額から控除できるかどうか(当初申告の2≧当初申告の5に該当するかどうか)の判定 
該当
 (400≧80)
該当
(100≧20)
7配当等の額から控除する金額(6が該当の場合は5、それ以外の場合は2
当初申告: 80
修正申告: 80 
20
当初申告: 100
修正申告: 100
8益金不算入額 (17
当初申告: 9,920
(10,000−80=
9,920)
修正申告: 0
(50−80= ▲30< 0) 
2,480
(2,500−20=
 2,480)
当初申告: 12,400
修正申告: 2,480
9益金算入額 (4×10%−1
修正申告: 30
(80−50= 30)(※
5 )
修正申告: 30

(※4) 支払利子配賦額(A社:800 B社:200)は当初申告における金額に固定されることとなります。

(※5) A社の1の修正申告における金額(50)が、4×10%(80)に満たないため、その満たない部分の金額(30)は益金の額に算入することとなります。

(※6) 5の合計(100)の金額が2の合計の当初申告の金額(500)及び修正申告の金額(102)を超えていないため、上記(3)イ及びロの場合に該当せず、遮断措置が適用されます。

  1. ハ 修正申告により遮断措置が適用される場合においてA社の支払利子が増加し支払利子配賦後の控除額を控除しきれなくなったときの益金算入額の計算について
    (イ) 関連法人配当等の額を有する法人(A社)の支払利子が増加した場合
A社
B社
合計 
1配当等の額 
100
9,900
10,000
2 1×4% 
4
396
400(※9 )
3支払利子合計額 
当初申告: 500
修正申告: 2,000
(+ 1,500(利子修正額
 )) 
500
当初申告: 1,000
修正申告: 2,500
(+ 1,500)
4支払利子配賦額 (当初申告の 3の合計額 ×(当初申告の1/当初申告の1の合計額)) 
1,000×100/10,000=
10(※7 ) 
1,000×9,900
/10,000=
990(※7 ) 
1,000
5{3+( 4−当初申告の3)}×10% 
10−500= ▲490
(※7 )
当初申告: (500+ ▲
490)×10%= 1
修正申告: (2,000+
▲490)×10%= 151
990−500=
490(※7 )
(500+ 490)×
10%= 99
当初申告: 100
修正申告: 250
(※9 )
65を配当等の額から控除できるかどうか(当初申告の2≧当初申告の 5に該当するかどうか)の判定 
該当
 (4≧1)
該当
(396≧99)
7配当等の額から控除する金額(6が該当の場合は 5、それ以外の場合は2
当初申告: 1
修正申告: 151 
99
当初申告: 100
修正申告: 250
8益金不算入額 (17
当初申告: 99
(100−1)
修正申告: 0
(100−151=▲ 51< 0) 
9,801
(9,900−99=
 9,801)
当初申告: 9,900
修正申告: 9,801
9益金算入額 ((4+利子修正額)×10%−1
修正申告: 51
((10+ 1,500)×10%
−100)(※8 )
修正申告: 51

(※7) 支払利子配賦額(A社:10 B社:990)及びA社の支払利子合計額から控除していた金額490 は当初申告における金額に固定されることとなります。

(※8) A社の1の金額(100)が、(4+利子修正額)×10%(151)に満たないため、その満たない部分の金額(51)は益金の額に算入することとなります。

(※9) 5の合計の当初申告の金額(100)及び修正申告の金額(250)が2の合計(400)の金額を超えていないため、上記(3)イ及びロの場合に該当せず、遮断措置が適用されます。

  1.  (ロ) 関連法人配当等の額を有しない法人(A社)の支払利子が増加した場合
A社
B社
C社
合計 
1配当等の額 
0
200
2,300
2,500
2 1×4% 
0
8
92
100(※12)
3支払利子合計額 
当初申告: 300
修正申告: 450
(+ 150(利子修正
額 )) 
100
200
当初申告:
600
修正申告:
750(+ 150)
4支払利子配賦額
(当初申告の3の合
計額×(当初申告
1/当初申告の1
の合計額)) 
(600×
200/2,500)
= 48(※10)
(600×
2,300/2,500)
= 552(※10) 
600
5{3+( 4−当初
申告の3)}×10% 
48−100=
▲52(※10)
(100+ ▲
52)×
10%= 5
552−200=
352(※10)
(200+ 352)×
10%= 55  
60(※12)
65を配当等の額
から控除できるか
どうか (当初申告の
2≧当初申告の 5
に該当するかどう
か)の判定 
該当
(8≧5)
該当
(92≧55)
7配当等の額から
控除する金額(6
該当の場合は5、そ
れ以外の場合は2
5
55
8益金不算入額(1
7
195
(200−5=
195) 
2,245
(2,300−55=
2,245) 
2,440
9益金算入額 ((4
+利子修正額) ×
10%−1)
修正申告: 15
((0+ 150)×10%
−0)(※11)
修正申告:
15 

(※10) 支払利子配賦額(B社:48 C社:552)は当初申告における金額に固定されることとなります。

(※11) A社の1の金額(0)が(4+利子修正額)×10%(15)に満たないため、その満たない部分の金額(15)は益金の額に算入することとなります。

(※12) 5の合計(60)の金額が2の合計(100)の金額を超えていないため、上記(3)イ及びロの場合に該当せず、遮断措置が適用されます。

(参考)
 支払利子合計額、適用関連法人配当等の額及び通算制度における関連法人等に係る受取配当等の益金不算入額の計算については、次のQ&Aを参照してください。

  1. 問66 通算制度における関連法人株式等に係る受取配当等の益金不算入額の計算