事後の税務調査により損益通算前の所得の金額が当初(期限内)申告と異なることとなった場合、通算法人の損益通算の計算はどのように行うこととなりますか。
原則として、損益通算に係る損金算入額又は益金算入額は期限内申告の金額に固定して、その通算法人の所得の金額を計算することとなります。
ただし、通算法人の全てについて期限内申告において所得金額が零又は欠損金額があるなど一定の要件に該当する場合には、通算グループ内の全法人が損益通算を再計算(全体再計算)することとなります。
このほか、欠損金の繰越期間に対する制限を潜脱するためや、離脱法人に欠損金を帰属させるために、あえて誤った期限内申告を行うなど、法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるときは、税務署長は、損益通算を適用(全体再計算)することができます。
すなわち、通算グループ全体では所得金額がないにもかかわらず、期限内申告額に固定することにより所得金額が発生する法人が生ずることのないようにするため、一定の要件に該当する場合には、損益通算の規定の計算に用いる所得の金額及び欠損金額を当初申告額に固定せずに、通算グループ全体で再計算されます。
したがって、これらの3要件全てを満たす場合には、通算グループ内の法人全てについて、損益通算の計算を期限内申告の所得金額に固定せずに再計算(全体再計算)することとなります。
このほか、税務署長は、例えば、欠損金の繰越期間に対する制限を潜脱するためや、離脱法人に欠損金を帰属させるためにあえて誤った期限内申告を行うなど法人税の負担を不当に減少させる結果となると認めるときは、通算グループ内の法人全てについて、損益通算の計算を期限内申告の所得金額に固定せずに再計算(全体再計算)することができます(法64の5)。
P社(親法人) | S1社 (子法人) |
S2社 (子法人) |
S3社 (子法人) |
|
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通算前所得 (欠損) |
500 | 100 | ▲50 | ▲250 |
⇒50(+300) | ||||
損益通算 | P社500+S1社100=600 | S2社▲50+S3社▲250=▲300 | ||
通算前所得金額の合計額 | 通算前欠損金額の合計額 | |||
▲300×500/600=250 | ▲300×100/600=50 | 300(※1)×50/300=50 | 300(※1)×250/300=250 | |
⇒損金算入 | ⇒損金算入 | ⇒益金算入 | ⇒益金算入 | |
損益通算による益金算入額又は損金算入額を計算する基礎となる通算前所得金額又は通算前欠損金額は、期限内申告書に添付された書類に記載された金額に固定する(法64の5![]() |
||||
損益通算後 | 所得250 | 所得50 | 欠損0 | 所得300(※2) |
P社(親法人) | S1社 (子法人) |
S2社 (子法人) |
S3社 (子法人) |
|
---|---|---|---|---|
通算前所得 (欠損) |
250 | 50 | ▲500 | ▲100 |
所得事業年度 | 所得事業年度 | 欠損事業年度 | ⇒100(+200) | |
所得事業年度 | ||||
損益通算 | P社250+S1社50+S3社100=400 | S2社▲500 | 通算前所得(100)をP社及びS1社と合算 | |
通算前所得金額の合計額 | 通算前欠損金額 | |||
▲400(※3)×250/400=250 | ▲400(※3)×50/400=50 | 400×500/500=400 | ▲400(※3)×100/400=100 | |
⇒損金算入 | ⇒損金算入 | ⇒益金算入 | ⇒損金算入 | |
損益通算後 | 所得0 | 所得0 | 欠損▲250 | 欠損▲50 |
⇒欠損▲100 | ⇒所得0 |
(参考)
当初申告における損益通算の計算については、次のQ&Aを参照してください。