(問21)

通算子法人S社(3月決算)は、X2年1月17日に解散(合併又は破産手続開始の決定による解散ではありません。)し、X2年10月15日に残余財産が確定しました。

  1. (1) S社の解散に係る申告はどのように行うこととなりますか。
  2. (2) S社の残余財産の確定に係る申告はどのように行うこととなりますか。
  3. (3) S社において、残余財産の確定の日の属する事業年度で生じた欠損金額は、通算親法人P社(3月決算)でどのように取り扱われますか。
 なお、P社はS社の発行済株式の全てを直接保有しています。

【回答】

  1. (1) S社は、解散によって通算制度の承認の効力が失われることはなく、また、解散日までの事業年度が生じないことから、自X1年4月1日至X2年3月31日事業年度については、P社の通算グループ内の通算法人として、通算制度の規定を適用して申告を行うこととなります。
  2. (2) S社の残余財産の確定の日の翌日であるX2年10月16日にS社の通算制度の承認の効力は失われることから、X2年4月1日からX2年10月15日までの期間について事業年度が生ずることとなり、その事業年度についてはS社が通算法人として損益通算の規定(法64の5)等を適用しないで申告を行うことになります。
  3. (3) その残余財産の確定の日の翌日の属するP社の事業年度(自X2年4月1日至X3年3月31日事業年度)において、損金の額に算入することとなります。

【解説】

  1. (1) 通算子法人の解散(合併又は破産手続開始の決定による解散に限ります。)があった場合には、その解散の日の翌日(合併による解散の場合には、その合併の日)において、その通算子法人の通算制度の承認の効力が失われます(法64の106五)。したがって、その通算子法人は通算親法人との間に通算完全支配関係を有しなくなることから、その通算子法人の事業年度は、その有しなくなった日の前日に終了することとなります(法144二)。
      しかしながら、本件のように合併又は破産手続開始の決定による解散以外の解散である場合には、S社の通算制度の承認の効力が失われることはなく、また、解散日までの事業年度が生じないことから(法147)、S社は、自X1年4月1日至X2年3月31日事業年度において、P社の通算グループ内の法人として通算制度の規定を適用して申告を行うこととなります。
  2. (2) 通算子法人の残余財産の確定があった場合には、その残余財産の確定の日の翌日において、通算子法人の通算制度の承認の効力が失われ(法64の10E五)、その残余財産が確定した日の翌日に通算完全支配関係を有しなくなることから、その通算子法人の事業年度は、残余財産の確定の日に終了することとなります(法144二)。
     また、その事業年度については、通算親法人の事業年度終了の日に終了しないことから、損益通算の規定(法64の5)等の適用はありません。
     したがって、本件において、S社は、通算親法人の事業年度開始の日であるX2年4月1日から残余財産の確定の日であるX2年10月15日までの期間の事業年度について、通算法人として申告を行うこととなりますが、損益通算の規定(法64の5)等の適用はありません。
  3. (3) 通算法人との間に通算完全支配関係がある他の内国法人でその通算法人が発行済株式又は出資の全部又は一部を有するものの残余財産が確定した場合(その残余財産の確定の日が通算親法人の事業年度終了の日である場合を除きます。)において、その残余財産の確定の日の属する事業年度で生じた欠損金額があるときは、その欠損金額に相当する金額(注)は、その通算法人のその残余財産の確定の日の翌日の属する事業年度において、損金の額に算入することとされています(法64の8)。
     したがって、本件において、その欠損金額に相当する金額は、S社の残余財産の確定の日の翌日(X2年10月16日)の属するP社の事業年度(自X2年4月1日至X3年3月31日)において損金の額に算入することとなります。
  4. (注) その残余財産が確定した他の内国法人に株主等が2以上ある場合には、その欠損金額に相当する金額を当該他の内国法人の発行済株式又は出資(当該他の内国法人が有する自己の株式又は出資を除きます。)の総数又は総額で除し、これにその通算法人の有する当該他の内国法人の株式又は出資の数又は金額を乗じて計算した金額をいいます。

    解読図

(参考)
 損益通算については、次のQ&Aを参照してください。

  1. 問49 通算制度の当初申告における損益通算の計算