連結子法人S社は、5年前から連結親法人P社による連結完全支配関係を有していましたが、P社の×1年4月1日から×2年3月31日までの連結事業年度の中途(×2年1月1日)にP社の連結グループから離脱しました。また、P社はS社に対して5年前から貸付金を有しています。
この場合、P社のその連結事業年度の一括評価金銭債権に係る貸倒実績率の計算において、その連結事業年度開始の日前3年以内に開始した各連結事業年度の一括評価金銭債権にS社に対する貸付金を加えることとなるのでしょうか。
貸倒実績率の計算に用いる前3年以内に開始した各連結事業年度の一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額は、その各連結事業年度終了の時における一括評価金銭債権を基礎として計算しますので、S社に対する貸付金を加える必要はありません。
連結法人が各連結事業年度において一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額を計算する場合には、その連結法人がその連結事業年度終了の時に有する一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額に、原則として、貸倒実績率を乗じて計算することとなりますが、その一括評価金銭債権には、その連結法人と連結完全支配関係がある他の連結法人に対して有する金銭債権は含まれません(法81の3、52
二、令96
)。
また、この場合の貸倒実績率とは、次のの金額のうちに、
の金額の占める割合(小数点以下4位未満の端数があるときは、これを切り上げます。)をいいます(令96
)。
上記の一括評価金銭債権は前3年内連結事業年度終了の時のものとなりますので、一括評価金銭債権から除かれる連結完全支配関係を有する他の連結法人に対して有する金銭債権かどうかは、その前3年内連結事業年度終了の時の状況により判定することとなります。
また、上記の売掛金等や個別評価金銭債権についても同様の取扱いとなります。
本件は、連結事業年度終了の時(×2年3月31日)にP社はS社との間に連結完全支配関係を有していませんが、その連結事業年度開始の日前3年以内に開始した各連結事業年度終了の時にP社はS社との間に連結完全支配関係を有していますので、P社がS社に対して有する貸付金は、貸倒実績率の計算の基礎となる一括評価金銭債権には含まれません。したがって、その一括評価金銭債権にS社に対する貸付金を加える必要はありません。
(参考)
連結法人が貸倒引当金の損金算入の規定を適用できる場合の要件や一括評価金銭債権及び個別評価金銭債権の意義については、次のQ&Aを参照してください。