(問32)

 連結親法人P社(3月決算)の連結グループの連結子法人S1社及び連結子法人S2社は、同一グループの連結子法人S3社(発行済株式の総数100)の発行済株式を保有(S1社:70株、S2社:30株)していますが、X1年4月1日にS1社はその有するS3社の株式の全てを同一グループの連結子法人S4社に譲渡しました。
 この場合、どの法人がいわゆる投資簿価修正を行うこととなりますか。
 また、その場合の帳簿価額修正額は、どのように計算することとなりますか。
 なお、S1社がS3社の株式を譲渡した日前に終了するS3社の各連結事業年度の連結個別利益積立金額の増加額の合計額は200とします。

解読図

【回答】

 S1社及びS2社が投資簿価修正を行うこととなります。
 また、その際の帳簿価額修正額は、S1社がS3社の株式をS4社に譲渡した日(X1年4月1日)前に終了するS3社の各連結事業年度の連結個別利益積立金額の増加額の合計額(200)に、その譲渡が行われた時の直前のS3社の発行済株式の総数(100)のうちにS1社とS2社がその譲渡の直前に有するS3社の株式の数の占める割合(S1社:70%、S2社:30%)を乗じて計算した金額となります。

【解説】

 連結子法人の株主等である連結法人のいずれかが、その連結子法人の株式又は出資について譲渡(一定の譲渡を除きます。以下同じです。)したことによりその全部又は一部を有しなくなった場合には、その連結子法人の株式又は出資を保有する全ての連結法人は、その譲渡の前に、帳簿価額修正額に相当する金額の帳簿価額の修正を行うとともに、自己の連結個別利益積立金額又は利益積立金額にその修正した金額に相当する金額を加算又は減算することとされています(法2十八から十八の三、令9から9の3、119の35、119の41)。
 したがって、連結子法人の株式又は出資を譲渡した連結法人に限らず、その連結子法人の株式又は出資を保有する全ての連結法人が投資簿価修正を行うこととなります。
 また、その譲渡には、連結グループ内の他の連結法人に対する株式の譲渡も含まれます(令92一、連基通1−8−3)。
 そして、連結子法人の株式又は出資を譲渡した際の帳簿価額修正額は、次の1ないし4の金額の合計額から、既修正等額(既に帳簿価額修正額の対象とした連結個別利益積立金額など一定の金額をいいます。)を減算した金額に、その連結子法人の株式又は出資の譲渡の直前の発行済株式又は出資(その連結子法人が有する自己の株式を除きます。)の総数又は総額のうちに、その連結法人が有するその連結子法人の株式の数又は出資の金額の占める割合を乗じて計算した金額とされています(令93)。

  1. 1 その譲渡日前に終了するその連結子法人の各連結事業年度の連結個別利益積立金額の増加額又は減少額の合計額(令93一イ)
  2. 2 その連結子法人が譲渡により連結納税の承認を取り消された場合のその取り消された日の前日の属する事業年度の一定の利益積立金額の増加額又は減少額(令93一ロ)
  3. 3 その連結子法人の株式又は出資の譲渡を行った日の属するその連結子法人の連結事業年度又は事業年度開始の日からその譲渡を行った日の前日までの期間に生じた剰余金の配当等の金額など、一定の事由に係る一定の金額を加減算した金額(令93一ハ)
  4. 4 その連結子法人が保有している他の連結子法人の株式又は出資の譲渡に基因して生ずる帳簿価額修正額(令93一ニ)

 本件では、S1社は、S3社の株式70株をS4社に譲渡しその全部を有しなくなったことから、その譲渡の直前にS3社の株式を保有していたS1社及びS2社は、その譲渡の前に、S3社の株式の帳簿価額について、S3社の各連結事業年度の連結個別利益積立金額の増加額の合計額にS3社の株式の保有割合を乗じた次の金額を加算するとともに、S1社及びS2社のそれぞれの連結個別利益積立金額について、次の金額を加算することとなります。

S1社:200 × (70 ÷ 100) = 140 〔S3社の株式140 / 連結個別利益積立金額140〕

S2社:200 × (30 ÷ 100) = 60 〔S3社の株式60 / 連結個別利益積立金額60〕

 なお、連結法人間の取引において、連結法人が譲渡損益調整資産を譲渡した場合には、その譲渡損益は繰り延べられることとなります(法81の31、61の131)。

(参考)

投資簿価修正、連結法人間取引の損益調整については、次のQ&Aを参照してください。

  1. 問30 投資簿価修正の概要
  2. 問41 連結法人間取引の損益調整