【新設】 (特定債券現先取引等に係る資産の帳簿価額の平均的な残高の意義)

66の5−11 措置法令第39条の13第5項(同条第28項において読み替えて準用される場合を含む。)に規定する「当該事業年度の当該資産の帳簿価額の平均的な残高として合理的な方法により計算した金額」とは、例えば、特定債券現先取引等に係る資産の帳簿価額の日々の平均残高又は各月末の平均残高等、その事業年度を通じた資産の帳簿価額の平均的な残高をいうものとする。

(注) その事業年度の開始の時及び終了の時における特定債券現先取引等に係る資産の帳簿価額の平均額は、当該平均的な残高として合理的な方法により計算した金額に該当しない。


※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  平成18年度の税制改正により、過少資本税制について次のような改正が行われた。

(1) 本制度の対象となる負債及び負債の利子に次のものが追加された(措法66の5丸4二〜四、措令39の13丸13丸16)。
イ 対象となる負債

(イ) 内国法人に係る国外支配株主等が第三者に対してその内国法人の債務の保証をすることにより、その第三者がその内国法人に対して資金を供与したと認められる場合におけるその資金に係る負債

(ロ) 内国法人に係る国外支配株主等からその内国法人に貸し付けられた債券(その国外支配株主等がその内国法人の債務の保証をすることにより、第三者からその内国法人に貸し付けられた債券を含む。)が、他の第三者に、担保として提供され、債券現先取引で譲渡され、又は現金担保付債券貸借取引で貸し付けられることにより、当該他の第三者がその内国法人に対して資金を供与したと認められる場合におけるその資金に係る負債

ロ 対象となる負債の利子及び資金調達に係る費用

(イ) 上記イ(イ)の場合において、その内国法人がその内国法人に係る国外支配株主等に支払う債務の保証料及び第三者に支払う負債の利子

(ロ) 上記イ(ロ)の場合において、その内国法人がその内国法人に係る国外支配株主等に支払う債券の使用料及び債務の保証料、第三者に支払う債券の使用料並びに他の第三者に支払う負債の利子

(2) 国外支配株主等及び資金供与者等(上記イ(イ)又は(ロ)に掲げる第三者又は他の第三者をいう。以下同じ。)に対する負債のうちに特定債券現先取引等に係る負債がある場合は、国外支配株主等及び資金供与者等に対する負債に係る平均負債残高、当該事業年度の総負債に係る平均負債残高並びに国外支配株主等及び資金供与者等に支払う負債の利子等の額から、それぞれ特定債券現先取引等に係るものを控除することができることとされた(措法66の5丸2、措令39の13丸5丸6丸8)。

(注) 「特定債券現先取引等」とは、債券現先取引及び現金担保付債券貸借取引のうち、現金担保付債券貸借取引で借り入れた債券又は債券現先取引で購入した債券を、現金担保付債券貸借取引で貸し付ける場合又は債券現先取引で譲渡する場合におけるこれらの取引をいう(措法66の5丸4八、措令39の13丸26)。

2  上記1(2)の改正において、「国外支配株主等及び資金供与者等に対する負債に係る平均負債残高」(A)から控除することとなる「特定債券現先取引等に係る平均負債残高」(B)については、「当該国外支配株主等及び資金供与者等に対する負債のうち、当該特定債券現先取引等に係るものに係る平均負債残高」(B’)が「当該特定債券現先取引等に係る資産に係る平均資産残高」(C)を超える場合には、当該平均資産残高(C)とすることとされている。

3  ところで、この場合の「当該特定債券現先取引等に係る資産に係る平均資産残高」は、「当該事業年度の当該資産の帳簿価額の平均的な残高として合理的な方法により計算した金額」とされているが(措令39の13丸5)、法令上の規定においては、当該事業年度の当該資産の帳簿価額の平均的な残高として合理的な方法により計算した金額とは、具体的にどのようなものをいうのか必ずしも明らかでない。

4  そこで、本通達において、当該事業年度の当該資産の帳簿価額の平均的な残高として合理的な方法により計算した金額とは、特定債券現先取引等に係る資産の帳簿価額の日々の平均残高又は各月末における締切日の平均残高等、その事業年度を通じた資産の帳簿価額の平均的な残高をいうことを明らかにしている。
 また、当該事業年度の当該資産の帳簿価額の平均的な残高とは、その事業年度を通じた残高をいうこととされているから、少なくとも各月末の平均残高以上の精度をもって計算することが予定されており、その事業年度の期首と期末の資産の帳簿価額の残高の平均額はこれに該当しない。このことを本通達の注書において念のため明らかにしている。

5  なお、連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の89《連結法人の国外支配株主等に係る負債の利子等の課税の特例》についても、同様の通達(連措通68の89−9)を定めている。

【新設】 (特定債券現先取引等に係る平均負債残高の計算方法)

66の5−12 措置法第66条の5第2項の特定債券現先取引等に係る負債は、現金担保付債券貸借取引により借り入れた債券又は債券現先取引により購入した債券のいずれかを、現金担保付債券貸借取引により貸し付ける場合又は債券現先取引により譲渡する場合のこれらの取引に係る借入金をいうのであるが、その負債を計算するに当たっての平均負債残高は、例えば、同一銘柄毎に債券を区分し、現金担保付債券貸借取引及び債券現先取引に係る借入金又は貸付金の月末残高のうちいずれか少ない金額をもって特定債券現先取引等に係る負債の月末残高とし、その事業年度における平均残高を特定債券現先取引等に係る平均負債残高としても差し支えないものとする。


※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  特定債券現先取引等とは、現金担保付債券貸借取引又は債券現先取引により調達した債券を、現金担保付債券貸借取引又は債券現先取引に使用することにより資金を調達する取引であり、これらの取引により生じる負債については、一種の通過勘定として生ずるものと考えられることから、本制度の対象となる負債から控除することができることとされている(措法66の5丸2、措令39の13丸5)。

2  この特定債券現先取引等に係る平均負債残高(B)については、「当該国外支配株主等及び資金供与者等に対する負債のうち、当該特定債券現先取引等に係るものに係る平均負債残高」(B’)が「当該特定債券現先取引等に係る資産に係る平均資産残高」(C)を超える場合には、当該平均資産残高(C)とすることとされており、措置法通達66の5−11(特定債券現先取引等に係る資産の帳簿価額の平均的な残高の意義)及び措置法通達66の5−13(負債の帳簿価額の平均的な残高の意義)において、日々の平均残高又は各月末の平均残高等、その事業年度を通じた帳簿価額の平均的な残高をいうものとされている。
 この場合、その具体的な計算は、債券現先取引等により借り入れた債券又は購入した債券を、債券現先取引等により貸し付ける債券又は譲渡する債券として個々にひも付きで管理し、これらの取引に係る負債(借入金)の日々の平均残高又は各月末の平均残高等を計算するとともに、これらの取引に係る資産(貸付金)の日々の平均残高又は各月末の平均残高等を計算し、その事業年度の平均負債残高と平均資産残高とを求め、両者を比較していずれか少ない金額を平均負債残高とすることとなる。

3  しかしながら、これらの取引は、通常、外貨を調達するために日々大量に行われるものであり、これらの取引に係る債券について、1つ1つひも付きで管理することとした場合、法人に多大な事務負担を強いることになりかねない。そこで、本通達において、特定債券現先取引等に係る平均負債残高を求めるに当たって、各月末の負債の月末残高について、簡便的な計算方法を例示的に明らかにしている。

4  例示している簡便的な計算方法とは、債券を同一銘柄毎に区分し、同一銘柄の債券について、現金担保付債券貸借取引又は債券現先取引により調達したものに係る資産の月末残高及び現金担保付債券貸借取引又は債券現先取引により使用したものに係る負債の月末残高を算出し、それぞれの残高を比較していずれか少ない金額をひも付きの関係にある特定債券現先取引等に係る負債に係る月末残高とみなして、特定債券現先取引等に係る平均負債残高を求めるというものである。

5  なお、連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の89《連結法人の国外支配株主等に係る負債の利子等の課税の特例》についても、同様の通達(連措通68の89−10)を新たに定めている。

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