【制度の概要】

この制度は、法人が、その有する国有財産特別措置法第9条第2項の普通財産のうち同項に規定する土地等として財務局長等により一定の証明がされたもの(以下「特定普通財産」という。)に隣接する土地(その特定普通財産の上に存する地上権又は賃借権を含み、棚卸資産を除く。以下「所有隣接土地等」という。)につき、同項の規定により当該所有隣接土地等と当該特定普通財産との交換をしたときは、当該交換により取得した特定普通財産(以下「交換取得資産」という。)の取得価額から当該交換により譲渡をした所有隣接土地等(以下「交換譲渡資産」という。)の譲渡直前の帳簿価額を控除した残額の範囲内で圧縮記帳による課税の繰延べを認めるというものである(措法66)。

(1) 対象となる交換

本制度の対象となる交換とは、所有隣接土地等と特定普通財産との交換をいう。ただし、法人税法第50条第1項又は第5項《交換により取得した資産の圧縮額の損金算入》の規定の適用を受ける交換又は租税特別措置法第65条の10《特定の交換分合により土地等を取得した場合の課税の特例》の規定の適用を受ける交換については、それぞれの規定に定める要件から、法人がその所有する土地等を国有財産の売却円滑化の促進のために交換する場合にはこれらの規定の適用が考えられないため、特に適用を除外する規定が置かれていない(措法66丸1、措令39の10丸1)。

(2) 圧縮記帳の経理方法及び圧縮限度額の計算

本制度は、次により計算した圧縮限度額の範囲内で、その交換取得資産の帳簿価額を損金経理により減額し、又はその帳簿価額を減額することに代えてその圧縮限度額以下の金額を当該事業年度の確定した決算において積立金として積み立てる方法(当該事業年度の決算の確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法を含む。)により経理したときに限り、その減額し、又は経理した金額に相当する金額が損金の額に算入される(措法66丸1)。
 圧縮限度額は、交換取得資産の取得価額から交換譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額を控除した残額となるが、この譲渡直前の帳簿価額は、次の丸1から丸3までの場合に該当するときには、それぞれ次の算式により計算した金額となる(措令66丸1丸2)。

丸1 交換取得資産とともに交換差金を取得した場合(措法66丸2一、措令39の10丸2)
算式その1
丸2 交換とともに交換差金を支出した場合(措法66丸2二)
 算式その2
丸3 交換譲渡資産に交換に要した経費がある場合(措法66丸2三)
イ 交換取得資産とともに交換差金を取得した場合(措令39の10丸3一)
算式その3
ロ 上記イの場合以外の場合(措令39の10丸3ニ)
算式その4
(3) その他
 この制度の適用を受けるためには、確定申告書等に損金算入に関する申告の記載があり、かつ、その確定申告書等に所定の書類を添付しなければならない(措法66丸3、65の7丸5丸6、措規22の9の4丸2)。

【新設】 (遊休資産の交換)

66−1 措置法第66条第1項又は第4項の規定は、現に事業の用に供していない固定資産について同条第1項に規定する交換をした場合にも適用があることに留意する。

(注) 措置法第66条の規定は、法第2条第20号に規定する棚卸資産については適用がないのであるが、不動産売買業を営む法人の有する土地で、当該法人が使用し、若しくは他に貸し付けているもの(販売の目的で所有しているもので、一時的に使用し又は他に貸し付けているものを除く。)又は当該法人が具体的な使用計画に基づいて使用することを予定し相当の期間所有していることが明らかなものは、棚卸資産に該当しない。


※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  本制度は、所有隣接土地等と特定普通財産との交換した場合に適用があるが、棚卸資産である土地等はこの所有隣接土地等に含まれない。つまり、固定資産に限られる(措法66丸1丸4)。
 この場合、交換した土地等が固定資産であるかどうかは、その交換した土地等の保有目的、使用状況等を勘案して判断することになる。
 例えば、事業用地として使用する目的で取得した土地等を、諸般の事情から事業の用に供するに至らないまま交換した場合、その時点では現に事業の用に供していないのであるが、明らかに法人が当該土地を棚卸資産として取得して保有していたというものでない限り、本制度の適用があると考えられる。そこで本通達では、現に事業の用に供していない固定資産を交換した場合にも、この圧縮記帳制度の適用が認められることを明らかにしている。
 ところで、不動産販売業者が所有する土地等は、その事業の性質上、固定資産であることが明らかでない限り、販売用の資産(棚卸資産)と判定されるケースが多いと考えられるが、本通達の注書において、この判定に当たっての具体的基準を明らかにしている。

2  なお、連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の85の3《特定普通財産とその隣接する土地等の交換の場合の課税の特例》についても、同様の通達(連措通68の85の3−1)を新たに定めている。

【新設】 (交換の対象となる隣接する土地の範囲)

66−2 措置法第66条第1項に規定する隣接する土地には、立木その他独立して取引の対象となる土地の定着物は含まれないのであるが、その土地が宅地である場合には、庭木、石垣、庭園(庭園に附属する亭、庭内神し(祠)その他これらに類する附属設備を含む。)その他これらに類するもののうち宅地と一体として交換がされるもの(建物及びこれに附属する設備並びに構築物に該当するものを除く。)は含まれる。


※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  本制度の適用対象となる所有隣接土地等は、土地又は土地の上に存する権利に限られているが、本通達においてはこの土地の範囲を明らかにしている。
 すなわち、立木等の土地の定着物は、土地とは別個に独立して取引の対象とされており、土地には含まれないこととなる。また、庭園も、原則として、建物に附属する構築物に該当するからこの制度の適用はないことになるのであるが、宅地のうちに庭園があり、建物がなく宅地と一体として譲渡されている場合には、庭園を土地に含めて取り扱うこととされている。

2  なお、連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の85の3《特定普通財産とその隣接する土地等の交換の場合の課税の特例》についても、同様の通達(連措通68の85の3−2)を新たに定めている。

【新設】 (特定普通財産の上に存する権利)

66−3 措置法第66条第1項に規定する「特定普通財産の上に存する権利」とは、地上権、永小作権、地役権又は土地の賃借権をいい、租鉱権、採石権等のように土地に附帯するものであっても土地そのものを利用することを目的としない権利は含まれないことに留意する。


※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  本制度の適用対象となる所有隣接土地等には特定普通財産の上に存する権利が含まれている(措法661)。この場合、土地の上に存する権利とは、土地そのものを排他的に利用する権利である地上権、永小作権、地役権又は土地の賃借権をいい、鉱物の採掘や岩石の採取を目的とする租鉱権や採石権のように、土地に附帯する権利ではあっても土地そのものを直接利用することを目的としない権利は該当しない。
 本通達において、このことを留意的に明らかにしている。

2  なお、連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の85の3《特定普通財産とその隣接する土地等の交換の場合の課税の特例》についても、同様の通達(連措通68の85の3−3)を新たに定めている。

【新設】 (交換に伴い特定普通財産とともに金銭以外の資産を取得した場合)

66−4 措置法第66条第1項に規定する交換により土地等を譲渡した場合において、その交換に伴い同項に規定する特定普通財産とともに金銭以外の資産を取得したときは、当該資産は同項に規定する交換差金に該当するものとして取り扱う。


※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  所有隣接土地等と特定普通財産との交換が行われた場合において、その特定普通財産とともに交換差金を取得したときは、当該交換により譲渡した土地等のうちその交換差金に相当する部分についてはこの圧縮記帳の特例の適用がないこととされている(措法66丸1丸2)。
 この場合の「交換差金」とは、交換により取得した資産の価額と交換により譲渡した資産の価額との差額を補うための金銭をいうのであるが(措法66丸1、65の9)、この圧縮記帳の特例の適用がある土地等の交換をした場合において、その特定普通財産とともに金銭以外の資産(例えば、その隣接する土地等以外の土地)を取得したときは、交換差金に関する上記のような規定が定められている趣旨からして、その金銭以外の資産も交換差金に該当するものとして取り扱うことが相当であろう。
 そこで、本通達において、その交換により土地等を譲渡した場合において、その交換に伴い特定普通財産とともに金銭以外の資産を取得したときは、当該資産は交換差金に該当するものとして取り扱うことを明らかにしている。

2  なお、連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の85の3《特定普通財産とその隣接する土地等の交換の場合の課税の特例》についても、同様の通達(連措通68の85の3−4)を新たに定めている。

【新設】 (一の所有隣接土地等を交換により譲渡した場合)

66−5 措置法第66条第1項に規定する所有隣接土地等(以下「所有隣接土地等」という。)が一の土地等である場合において、同条第1項又は第4項の規定の適用を受けるときには、当該所有隣接土地等の交換については、第65条の9の規定の適用を受けることはできないのであるから留意する。


※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  本制度では、措置法第65条の9《特定の資産を交換した場合の課税の特例》の規定の適用を受ける交換はその適用対象から除かれている(措令39の10丸1)。
 本通達は、このことを留意的に明らかにしている。

2  なお、連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の85の3《特定普通財産とその隣接する土地等の交換の場合の課税の特例》についても、同様の通達(連措通68の85の3−5)を新たに定めている。

【新設】 (2以上の交換取得資産を取得した場合における圧縮限度額の計算)

66−6 2以上の交換取得資産(措置法第66条第1項に規定する交換取得資産をいう。以下同じ。)を取得した場合における個々の交換取得資産に係る同項に規定する圧縮限度額は、交換譲渡資産(同項に規定する交換譲渡資産をいう。以下同じ。)の譲渡直前の帳簿価額に当該交換取得資産の取得価額の合計額のうちに占める個々の交換取得資産の取得価額の割合を乗じて計算した金額による。


※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  本制度における圧縮限度額は、交換取得資産の取得価額から交換譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額を控除した残額とされている(措法66@)。これにより交換譲渡資産の帳簿価額をそのまま交換取得資産の帳簿価額として引き継ぐことになる。
 ところで、特定普通財産に隣接する土地等を交換により譲渡して、2以上の交換取得資産を取得した場合、個々の交換取得資産の圧縮限度額をどのように計算するかという問題がある。
 そこで、本通達において、このような場合には、その2以上の交換取得資産の取得価額の合計額のうちに占める個々の交換取得資産の取得価額の割合であん分して計算することを明らかにしている。

2  なお、連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の85の3《特定普通財産とその隣接する土地等の交換の場合の課税の特例》についても、同様の通達(連措通68の85の3−6)を新たに定めている。

【新設】 (交換譲渡資産の交換に要した経費)

66−7 交換譲渡資産に係る措置法第66条第2項第3号に規定する「交換に要した経費」には、交換に当たり支出した当該交換譲渡資産に係る仲介手数料その他その交換に要した経費の額のほか、土地の交換に関する契約の一環として、又は当該交換のために当該土地の上に存する建物等につき取壊し、除去、移転等(以下「取壊し等」という。)をした場合におけるその取壊し等により生じた損失の額(当該取壊し等に伴って生ずる発生資材の処分価額を除く。)及びその取壊し等に伴い借家人に対して支払った立退料の額が含まれる。


※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  本制度における圧縮限度額は、交換取得資産(特定普通財産)の取得価額から交換譲渡資産(所有隣接土地等)の譲渡直前の帳簿価額を控除した残額とされ、交換譲渡資産の交換に要した経費がある場合には、当該経費の額を交換譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額に加算することとされている(措置法66丸1丸2)。このように、交換に際し経費を支出したときは、結果的にその経費の額は損金の額に算入されず、交換取得資産等の圧縮後の帳簿価額に加算される仕組みとなっている。
 本通達において、この場合の交換に要した経費の範囲を明らかにしている。
 なお、ここでいう建物等の取壊し等により生じた損失には、当該建物等の取壊し等の直前の帳簿価額(発生資材がある場合には、その発生資材の処分価額を除く。)のほか、その取壊し等のために要した費用が含まれるのであるが、単純な取壊損失に限らず、その建物等の取壊し等に伴って借家人を立ち退かせたような場合のその借家人に支払った立退料の額も、ここでいう取壊損失に含まれることを併せて明らかにしている。

2  なお、連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の85の3《特定普通財産とその隣接する土地等の交換の場合の課税の特例》についても、同様の通達(連措通68の85の3−7)を新たに定めている。

【新設】 (2以上の資産の交換をした場合の経費の額の計算)

66−8 措置法第66条第2項第3号の規定により交換譲渡資産の帳簿価額に加算すべき交換に要した経費の額を計算する場合において、同時に交換をされた所有隣接土地等が2以上あるときは、当該交換に要した経費の額は、原則として個々の所有隣接土地等につきその交換に要した経費の額を区分して計算するのであるが、個々の所有隣接土地等ごとの区分計算が困難であるときは、個々の所有隣接土地等の価額の比等の合理的な基準によりあん分して計算した金額によることができる。


※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  交換譲渡資産の交換に要した経費の額がある場合には、圧縮限度額の計算に当たっては当該経費の額を当該交換譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額に加算することとされている(措法66丸1丸2)。
 この場合、同時に交換をされた所有隣接土地等が2以上あるときは、当該交換に要した経費の額は、原則として個々の所有隣接土地等につきその交換に要した経費の額を区分して計算することを本通達において明らかにしている。
 しかしながら、実際には、個々の所有隣接土地等に係る経費の額を明確に区分することが困難な場合も考えられ、このような場合には、実務上、個々の所有隣接土地等の価額の比等の合理的な基準により按分計算する方法も認められることを併せて明らかにしている。

2  なお、連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の85の3《特定普通財産とその隣接する土地等の交換の場合の課税の特例》についても、同様の通達(連措通68の85の3−8)を新たに定めている。

【新設】 (交換に要する経費の支出が遅れる場合の圧縮記帳の計算の調整)

66−9 法人が、交換譲渡資産の交換に要する経費の全部又は一部を当該交換があった日を含む事業年度後の事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度)において支出することとなる場合における措置法第66条の規定による圧縮記帳の計算については、64(3)−8の取扱いに準ずるものとする。

(注) 64(3)−8の取扱いに準じて交換譲渡資産の交換に要する経費の額の見積りをする場合におけるその見積額については、当該交換があった日を含む事業年度において未払金に計上することができる。


※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  交換譲渡資産の交換に要した経費の額は、圧縮限度額を計算する場合の計算要素のーつであるから(措法662三)、この経費の額が明らかにならないと、圧縮記帳による損金算入額の計算ができないこととなる。そこで、交換譲渡資産の交換をした日を含む事業年度終了の日までにその交換に要した経費の額が確定せず、その後の事業年度に当該経費の支出をする場合には、その交換があった日を含む事業年度末の現況により経費の額を適正に見積もって圧縮記帳による損金算入額の計算をすることが認められる。

2  また、この場合において、交換に要する経費の見積額と実際に支出することとなった金額とが異なる場合には、その実際の支出額が確定した事業年度において、正当な圧縮限度額と既に計上した圧縮損の金額との差額を益金の額又は損金の額に算入するとともに当該交換取得資産の帳簿価額を増減することとなる。
 本通達においては、措置法通達64(3)−8を準用してこれらのことを明らかにしている。

3  ところで、このように交換に要する経費の額の見積り計算をした場合に、その経費の見積額を未払金に計上することができるのかどうかが問題となる。この点については、その経費について期末までに債務確定がない限りは未払金計上は認められないというのが一般的な取扱いであるが、圧縮記帳の計算上経費の見積り計算を要求してそれだけ圧縮限度額を切り下げておきながら、未払金計上は認めないというのでは、事実上課税が先行する結果になる。
 そこで、このように経費の見積り計算をした上で、圧縮限度額の計算をする場合には、その交換があった日を含む事業年度において、その経費の見積額につき未払金に計上することができることを本通達の注書において明らかにしている。

4  なお、連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の3《特定普通財産とその隣接する土地等の交換の場合の課税の特例》についても、同様の通達(連措通68の85の3−9)を新たに定めている。

【新設】 (譲渡対価の額等の計算に誤りがあった場合の損金算入額)

66−10 措置法第66条第1項又は第4項の規定を適用する場合において、圧縮限度額が法人の申告に係る金額と異なることとなったときにおいても、交換取得資産に係る損金算入額は、法人が確定申告書等又は同条第6項に規定する書類に記載した交換取得資産につき損金の額に算入した金額を限度とすることに留意する。


※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  圧縮限度額の計算の基礎となる交換取得資産の取得価額、交換譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額又は交換に要した経費の額等の計算に誤りがあり、圧縮記帳による損金算入額が税法に定めるところと異なる場合には、法人の申告書に記載した損金算人額が限度となることを本通達において明らかにしている。
 すなわち、法人の損金算入額が、税法上損金の額に算入できる正当額を下回っている場合においても、その正当額に達するまでの金額を税務当局が進んで認容するというようなことはしないことになる。
 なお、当然のことながら、法人の損金算入額が正当額を超えている場合には、その超えている部分の金額の損金算入は認められないことになる。

2  なお、連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の85の3《特定普通財産とその隣接する土地等の交換の場合の課税の特例》についても、同様の通達(連措通68の85の3−10)を新たに定めている。

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