【制度の概要】

 この制度は、日本郵政株式会社が、日本郵政株式会社法の社会・地域貢献資金の交付に備えるため、積立限度額以下の金額を社会・地域貢献準備金として積み立てたときは、その積立額を損金算入できるというものである(措法57の9)。
 この準備金は、積立後10年を経過したものがある場合には、その後10年間で均等額を取り崩して益金の額に算入するほか、社会・地域貢献資金の交付の財源に充てるため基金を取り崩した場合には、その取り崩した金額に相当する金額を益金の額に算入することとされている。

【新設】 (適格合併等により引継ぎを受けた社会・地域貢献準備金の均分取崩し)

57の9−1 適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格事後設立により引継ぎを受けた社会・地域貢献準備金(連結事業年度において積み立てた社会・地域貢献準備金を含む。以下同じ。)の措置法第57条の9第3項の規定による均分取崩しについては、55−7の2の取扱いに準じて取り扱うものとする。


※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  適格合併等(適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格事後設立をいう。以下同じ。)により合併法人等(合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被事後設立法人をいう。以下同じ。)に日本郵政株式会社法第13条第1項に規定する基金を移転した場合には、社会・地域貢献準備金の引継ぎが認められ、合併法人等がその適格合併等の日において有する社会・地域貢献準備金の金額とみなすこととされている(措法57の9丸10)。

2  ところで、前事業年度から繰り越された社会・地域貢献準備金の金額のうちその積立期間の末日を含む事業年度終了の日から10年を経過した日を含む事業年度以後の各事業年度終了の日に有する社会・地域貢献準備金については、10年間の均分取崩し(措法57の9丸3)を行うこととなるが、合併法人等が適格合併等により被合併法人等(被合併法人、分割法人、現物出資法人又は事後設立法人をいう。以下同じ。)から引継ぎを受けた社会・地域貢献準備金勘定の金額についても、この前事業年度から繰り越された社会・地域貢献準備金の金額に含まれるものとされている(措法57の9丸10)。
 この場合、適格合併等により引継ぎを受けた社会・地域貢献準備金の金額に係る租税特別措置法第57の9条第3項の規定の適用については、その均分益金算入額の計算の基礎となる金額は、その引継ぎを受けた社会・地域貢献準備金の金額なのか、被合併法人等における「積立てをした事業年度の所得の金額の計算上……損金の額に算入された……金額」を合併法人等が積み立てたものとするのか疑問が生ずるところであるが、損金算入額を均分益金算入して調整することの仕組みからすれば、被合併法人等における当初の損金算入額を計算の基礎とすべきものである。
 また、均分取崩しの始期をいつとするかの問題も生ずるところである。この点、資産又は負債の移転があった場合には、その資産又は負債の課税関係に係る計算の継続性が明確になっている。
 そこで、本通達において海外投資等損失準備金の取扱い(措通55−7の2)に準じ、引継ぎを受けた社会・地域貢献準備金の金額についての租税特別措置法第57の9条第3項の規定の適用については、合併法人等がその引継ぎを受けた社会・地域貢献準備金勘定の金額を、その適格合併等に係る被合併法人等が社会・地域貢献準備金の積立てをした事業年度と当該合併法人等の事業年度とは区分して、かつ、当該被合併法人等が積立てをした事業年度において当該合併法人等が自ら積立てをしたものとみなして取り扱うことを明らかにしている。

3  なお、連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の58の2《社会・地域貢献準備金》についても、同様の通達(連措通68の58の2−1)を新たに定めている。

【新設】 (海外投資等損失準備金の取扱い等の準用)

57の9−2 社会・地域貢献準備金の積立額の損金算入等については、55−17、55−18及び55の5−1の取扱いに準じて取り扱うものとする。


※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  新旧準備金の区分経理

 社会・地域貢献準備金を積み立てておく必要がなくなった等の場合には、その準備金の額を益金の額に算入することとされている(措法57の9丸4丸5)。他方、この準備金を積み立てている法人が青色申告書の提出の承認を取り消され、又は青色申告書による申告を取りやめた場合には、これにかかわらず、その取り消された日又は取りやめた日を含む事業年度から2年間で均分して益金の額に算入することとされている(措法57の9丸6)。
 したがって、青色申告承認の取消し等の後、再び青色申告書の提出の承認を受けて社会・地域貢献準備金の積立てを開始した場合には、その開始後の新準備金と取消し等の前に有していた旧準備金とを区分して経理する必要がある。
 本通達は、海外投資等損失準備金の取扱い(措通55−17)に準じて、その旨を明らかにしたものである。
 なお、旧準備金は、解散、任意取崩し等があった場合には、益金の額に算入されることとされている(措令32の2丸16)ことについても、あわせて留意的に明らかにしている。

2  青色申告書を提出できる者でないものの範囲

 社会・地域貢献準備金を積み立てている法人が、当該事業年度が連結事業年度に該当しない場合で、かつ、当該事業年度開始の日の前日を含む事業年度が連結事業年度に該当していた場合において、当該事業年度の確定申告書等を青色申告書により提出できる者でないときは、当該事業年度終了の日における社会・地域貢献準備金の金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入することとされている(措法57の9丸7)。
 本通達は、海外投資等損失準備金の取扱い(措通55−18)に準じて、ここでいう当該事業年度の確定申告書等を青色申告書により提出できる者でない場合を次のように列挙したものである。

  1. 丸1 法人税法第4条の5第1項の規定により法人税法第4条の2の承認を取り消された場合 最後の連結事業年度の翌事業年度
  2. 丸2 法人税法第4条の5第2項の規定により法人税法第4条の2の承認を取り消された場合 最後の連結事業年度の翌事業年度
  3. 丸3 法人税法第4条の5第3項の承認を受けた場合 最後の連結事業年度の翌事業年度
  4. 丸4 連結親法人事業年度の中途において分割型分割を行った場合 当該分割の日の前日を含む事業年度
  5. 丸5 適格合併に伴い租税特別措置法第68条の 48第11項の規定により社会・地域貢献準備金の金額の引継ぎを受けた連結法人であり、その後、連結親法人事業年度の中途において分割型分割を行った場合 当該分割の日の前日を含む事業年度

 なお、連結法人が自己を分割法人とする分割型分割を行った場合、連結納税の承認の取消しがあった等の場合において、一定の期限までに青色申告の承認申請書を提出してその承認を受けた場合(法122丸2四、五、六、八)には、この益金算入規定の適用はない旨もあわせて明らかにしている。

3  任意取崩しの場合の積立限度超過額の認容

社会・地域貢献準備金を積み立てている法人が、当該準備金を任意に取り崩した場合には、その取り崩した金額は、その取崩しをした日を含む事業年度の益金の額に算入することとされている(措法57の9丸5三)。
 この場合、当該法人が、当該準備金について積立限度超過額を有する場合において、その任意取崩額のうち既往の積立限度超過額に達するまでの金額を当該超過額を取り崩したものとして確定申告書において損金の額に算入したときは、金属鉱業等鉱害防止準備金の取扱い(措通55の5−1)に準じて、その計算を認めることとしたものである。

4  なお、連結納税制度に係る租税特別措置法第68条の58の2《社会・地域貢献準備金》についても、同様の通達(連措通68の58の2−2)を新たに定めている。

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