【新設】(経過的取扱い(1)………自己株式の評価方法の区分に関する適用時期等)

 法人の平成13年10月1日前に開始した事業年度については、この法令解釈通達による改正前の2−3−17の取扱いは、なお従前の例による。

(注) 法人が、同日以後最初に開始する事業年度開始の時において自己株式を有する場合には、その時にその自己株式を取得したものとみなして、令第119条の2の規定を適用する。

【解説】

(1) 改正前の商法等においては、自己の株式又は出資(以下「自己株式」という。)の取得についてその取得事由が制限されるとともに、その財源、数量、保有期間等について一定の規制が定められていた。このため、自己株式を取得した法人はその取得事由ごとに区分し、その取得、保有、処分等を管理する必要があった。
 一方、税法上は、有価証券の一単位当たりの帳簿価額の計算については、いわゆる銘柄別一括評価が採用されており(令119の2)、自己株式についても一括評価が原則であるが、商法や会計では取得事由ごとに区分管理を行うことが前提とされていること等を考慮し、次の取扱いが定められていた。
 すなわち、本通達による廃止前の基本通達2−3−17では、商法等の取得事由を勘案し、法人が取得した自己株式については、1株式消却のための取得、2取締役又は使用人譲渡のための取得、3ストック・オプションのための取得、4売渡請求等による取得及び5その他の事由による取得の五つに区分して、それぞれの区分ごとに、法人税法施行令第119条の2《有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法》の規定による一単位当たりの帳簿価額の計算を行ういわゆる簿価分離を認めていた。

(2) ところが、平成13年10月1日に施行された改正商法では、従来課されていた自己株式の取得制限等が撤廃され、一般的な自己株式の取得が認められることとなった(いわゆる金庫株の解禁)。このため、法人が自己株式を取得した場合の取得事由は明確ではなくなった。
 更に、法人税法についても、従来、株式消却を事由とする自己株式の取得のみ「みなし配当課税」の対象としていたが、自己株式の取得は、市場買付け等を除き、原則としてみなし配当課税の対象とする等の改正が行われた。
 以上のような商法や法人税法の改正等の背景を踏まえると、取得事由ごとに区分して一単位当たりの帳簿価額の計算を認める従来の取扱いは、その存在意義が失われたものと考えられる。このため、今回の改正によって、基本通達2−3−17の取扱いを廃止し、自己株式の一単位当たりの帳簿価額の計算は、原則どおり一括評価を行うこととしている。

(3) この一括評価を行うこととする改正は、商法改正時期を勘案して、平成13年10月1日以後に開始する事業年度から適用し、同日前に開始する事業年度については廃止前の基本通達2−3−17の取扱いは従前どおり適用することができる。
 また、従来の区分評価から一括評価に変更する場合には、移動平均法又は総平均法の評 価方法の適用上、取得日を決める必要があることから、平成13年10月1日以後最初に開始する事業年度(改正事業年度)の開始の時に有する自己株式は、その開始の時に取得した ものとみなすこととしている。

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