【新設】(抱き合わせ株式に株式等を割り当てなかった場合)

12の2−1−3 法人が合併法人となる合併又は分割承継法人となる分割型分割を行った場合に、当該法人が被合併法人の株式(出資を含む。以下12の2−1−3において同じ。)又は分割法人の株式を有しているときにおける法第61条の2第4項《合併及び分割型分割による株式割当等がない場合の譲渡利益額又は譲渡損失額の計算》に規定する株式割当等を受けたものとみなされる自己の株式につき、法第2条第17号ナ《定義》の規定を適用するときの「自己の株式の帳簿価額に相当する金額」は、次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に掲げる価額となることに留意する。

(1) 適格合併又は適格分割型分割の場合法第61条の2第2項《有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入》に規定する「合併の直前の帳簿価額に相当する金額」又は同条第3項に規定する「分割型分割の直前の分割純資産対応帳簿価額」

(2) 適格合併に該当しない合併又は適格分割型分割に該当しない分割型分割で合併法人の株式又は分割承継法人の株式のみが交付される場合(1)に掲げる金額と法第24条第1項の規定により計算される利益の配当等とみなす金額との合計額

(3) (1)又は(2)以外の場合当該株式割当等を受けたものとみなされる自己の株式の 法第62条第1項後段《合併及び分割による資産等の時価による譲渡》の規定によ る合併又は分割の時の価額

【解説】

(1) 親会社が子会社を吸収合併する場合に、その合併に際し、合併法人が合併前から有する被合併法人の株式(抱き合わせ株式)に合併法人の株式の割当てを行わないことがある。この場合でも課税所得の計算においては、合併法人がいったん一般の株主と同一の基準により合併法人の株式割当等を行ったものとみなされる(法242、令231)。
 したがって、その合併が非適格合併である場合には、合併交付株式の額のうち被合併法人の資本等の金額に対応する金額を超える部分について、被合併法人の株主においてみなし配当課税が生じることになる(法241)。
 また、合併に際して株式以外の金銭等を交付する場合には、被合併法人の株主においてみなし配当課税に加え、旧株式の譲渡損益課税が行われることになる(法61の24)。

(2) しかしながら、抱き合わせ株式に対して合併法人の株式等を割り当てない場合には、現実には、合併法人は自己株式を取得していないことから、この株式割当等を受けたものとみなされた自己株式についての処理が問題となる。
 この点について、平成13年度税制改正前の取扱いにおいては、抱き合わせ株式の消滅による損失の額、いわゆる株式消却損は、1減資益に相当する金額、2資本積立金額、3利益積立金額、4合併差益金のうち1から3までに掲げる金額以外の金額、5受入資産の含み益、の順序に従って補てんすることとされていた(旧基通4−2−9)。
 これに対して、改正後の法令においては、その株式割当等を受けたものとみなされる自己の株式の帳簿価額に相当する金額は資本積立金額から減算することとされている(法2十七ナ)。
 この場合の株式割当等を受けたものとみなされる「自己の株式の帳簿価額に相当する金額」は、株式割当等を受けたものとみなされた場合の課税関係を調整した上での帳簿価額であり、それは、適格合併かあるいは非適格合併かによって、更に、非適格合併でも株式以外の資産の交付があるか否かによって異なるため、実務上は混乱が生じやすい。
 そこで、本通達では、合併の態様を次の三つに区分してそれぞれの場合における資本積立金額から減算する「自己の株式の帳簿価額に相当する金額」を明らかにしている。
 なお、分割型分割についても、同様の取扱いとなる。

イ その合併が適格合併等の場合には、抱き合わせ株式の合併等の直前の帳簿価額を消却することとなるので、同額が自己株式の帳簿価額に相当する金額となる。

ロ その合併が非適格合併で新株のみが交付される場合には、みなし配当課税が行われる可能性があることから、合併直前の帳簿価額にみなし配当の金額を加算した金額が自己株式の帳簿価額に相当する金額となる。

ハ 更に、その合併が非適格合併で新株以外の資産、例えば合併交付金が交付される場合には、上記のみなし配当のほか、譲渡損益の金額も調整した金額、つまりその株式割当等を受けた時の自己株式の価額(時価)が自己株式の帳簿価額に相当する金額となる。

(3) ところで、合併法人は、上記の抱き合わせ株式の有無にかかわらず、合併により移転を受けた資産及び負債の純資産価額(非適格合併の場合には、当該合併により交付した当該法人の株式等の資産の当該合併の時の価額をいい、適格合併の場合には、被合併法人の当該適格合併の日の前日の属する事業年度終了の時の当該移転資産の帳簿価額から当該移転負債の帳簿価額及び当該適格合併により引継ぎを受けた利益積立金額を減算した金額をいう。)から当該合併により増加した資本の金額等を減算した金額を、資本積立金額に加算することとされている(法2十七ハ)。
 したがって、抱き合わせ株式に対して合併法人の株式等を割り当てない場合には、抱き合わせ株式に対応する資本金額相当額を上記により資本積立金額に加算する一方、「自己の株式の帳簿価額に相当する金額」を資本積立金額から減算することになり、この結果、これらの差額が合併による資本積立金額の正味の増加額(マイナスの場合は減算額)となる。

一覧に戻る