第3節 見込納付能力調査

見込納付能力調査は、猶予期間、分割納付の方法による場合の分割納付期限及び分割納付金額を判定するための調査である。

67 支出見込金額等の調整

見込納付能力調査においては、国税徴収の優先と納税者の事業の継続又は生活の維持の要請との調整が特に重要である。

納税の猶予の申請等に係る国税及び将来発生する見込みの国税を納付する資金を確保するためには、不要不急の資産を売却し、また、納税以外の支出は、事業の継続又は生活の維持のために必要となる最小限度にとどめるほか、経費の節約等に努める必要がある。

そのため、見込納付能力調査においては、不要不急の資産の売却による収入を臨時的な収入に加えるほか、事業の継続又は生活の維持のために必要不可欠な支出以外は支出見込金額に含めないこととする(上記64《つなぎ資金》参照)。

68 見込納付能力調査表を作成する場合

見込納付能力調査において、次のいずれかに該当する場合には、それぞれに定めるところにより見込納付能力調査表を作成する。

(1) 納付すべき税額がおおむね500万円を超える場合において、納税者の事業規模、財産及び収支の状況、完納までに要する期間等を踏まえ、分割納付金額の正確な算定のために詳細な調査が必要であると認められるとき。

この場合には、次の区分に応じて見込納付能力調査表を作成する。

  • イ 納税者が帳簿書類等を備えていないとき
    見込納付能力調査表(前年又は前期の所得を基にする調査用)(様式307010-002)
  • ロ 納税者が帳簿書類等を備えている場合で、最近における売上、仕入等を把握できるとき
    見込納付能力調査表(最近の販売実績等を基にする調査用)(様式307010-003)
  • ハ 納税者が帳簿書類等を備えている場合で、相当の経理能力を有しているとき
    見込納付能力調査表(見込損益計算書を基にする調査用)(様式307010-004)

(2) 上記(1)に該当する場合を除き、次のいずれかに該当するときは、見込納付能力調査表(略式調査用)(様式307010-001-2)を作成する。

  • イ 通則法第46条第2項若しくは第3項の規定による納税の猶予又は徴収法第151条の2第1項の規定による換価の猶予の申請があった場合において、猶予を受けようとする期間よりも短い猶予期間でその申請を許可するとき、又は申請書に記載された納付計画と異なる分割納付計画でその申請を許可するとき
  • ロ 徴収法第151条第1項の規定による換価の猶予をする場合(滞納者から提出された収支の明細書等により見込納付能力調査が可能な場合を除く。)

69 見込納付能力調査表の作成

上記68《見込納付能力調査表を作成する場合》により、見込納付能力調査表を作成する必要がある場合には、それぞれ次に掲げるところにより見込納付能力調査表を作成の上、納付予定額を算定する。

(1) 略式調査用

略式調査は、直前1年間における各月の収入及び支出の状況を基礎として、今後の収入見込額から支出見込額を控除し、調査日後の一定期間(以下69において「調査期間」という。)内の各月の支払に充てることができる資金の額を算定する。

(2) 前年又は前期の所得金額を基にする調査用

調査日の直前の年分又は事業年度の所得金額を基礎として、おおむね次の方法により、調査期間において支払に充てることができる資金の総額を算定し、その算定した額から1月当たりの平均の支払に充てることができる資金の額を計算する。

  • イ 基礎とした所得金額の計算において、臨時的な収益又は費用の金額が含まれている場合には、これらを除外して経常的な所得金額を把握する。
  • ロ 基礎とした所得金額の計算において、資金の収支を伴わない収益又は費用の金額がある場合には、これらについて上記イにより把握した金額につき収支計算上の調整を行う。
  • ハ 調査期間において、所得の増減が見込まれる場合には、上記ロによる調整後の金額に所得の見込増減率を乗じて調査期間における資金の総額を算定するための基礎となる金額を計算する。
  • ニ 調査期間中において、売掛債権及び買掛債務等の増減が見込まれる場合には、これらについて上記ハにより計算した金額につき収支状況の計算上の調整を行い、調査期間及び調査期間内の各月の支払に充てることができる資金の額を算定する。
    なお、季節により資金繰りに著しい変動がある場合には、従前の収支状況の実績等を基にその事情を加味した調整を行い、各月の支払に充てることができる資金の額を算定するよう留意する。

(3) 最近の販売実績等を基にする調査用

納税者が帳簿等を整理しており、最近における売上、仕入及び営業費等を把握することができる場合には、その実績を基本とし、おおむね上記(2)イからニまでと同様の方法により調整を行い、調査期間及び調査期間内の各月の支払に充てることができる資金の額を算定する。

(4) 見込損益計算書を基にする調査用

納税者が相当の経理能力をもち、かつ、帳簿書類を備えている場合には、原則として、あらかじめ見込損益計算書その他の必要な資料の提出を求めて、過去の損益計算書と比較すること等によりその妥当性を検討し、これに資金収支計算上の立場から所要の調整を加え、これを基として、資金繰表により売上、仕入及び営業費等の各項目別に調査期間及び調査期間内の各月の支払に充てることができる資金の額を算定する。この場合においては、必要に応じて賦課担当者の意見を求め、これを参考とすることに留意する。

なお、納税者が納税の猶予の申請等に当たって、資金繰表を作成した場合及び経理能力等から見て資金繰表を作成することが可能であると認められる場合には、納税者に資金繰表を提出させ、これを基に検討し、調査期間及び調査期間内の各月の支払に充てることができる資金の額を算定することとして差し支えない。この場合においては、提出された資金繰表の妥当性を判断するための資料として、調査日の直前の年分又は事業年度の損益計算書等の必要な資料を添付させることに留意する。

70 分割納付金額の計算

上記69《見込納付能力調査表の作成》の調査により計算した資金の額(資金繰表を用いた場合は、それによって求めた資金の額)を基にして、生活費、臨時収入、臨時支出等を調整し、各月の納付可能資金額を計算する。

具体的な猶予期間及び猶予期間中における各月の納付予定金額等については、上記の調査結果に基づき、納税者の実情に即して定めるものとする。

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