納付委託は、納税者が国税を納付するために、国税の納付に使用することができる証券以外の有価証券を提供して、その証券の取立てとその取り立てた金銭による国税への納付を徴収職員に委託するものである。
この章は、上記の納付委託を受けることができる場合における要件、手続及び納付委託を受けた場合の滞納処分との関係について定めたものである。
納付委託を受けることができるのは、次に掲げる要件の全てに該当する場合である(通則法第55条第1項)。
(1) 納税者に納付委託の目的となる国税があること。
(2) 納税者が納付委託に使用できる有価証券を提供して、その証券の取立てとその取り立てた金銭による上記(1)の国税への納付を委託すること。
(3) 取立費用を要するときは、その費用の提供があること。
「納付委託の目的となる国税」とは、次に掲げるものをいう。
(1) 納税の猶予又は換価の猶予に係る国税(通則法第55条第1項第1号)
(2) 納付委託に使用する有価証券の支払期日以後に納期限の到来する国税(通則法第55条第1項第2号)
(3) 上記(1)及び(2)の国税のほか、滞納に係る国税で、その納付につき納税者が誠実な意思を有し、かつ、その納付委託を受けることが国税の徴収上有利と認められるもの(通則法第55条第1項第3号)
この場合において、「国税の徴収上有利」とは、滞納に係る国税をおおむね6月程度で完納させることができると認められる場合において、滞納者の財産の状況その他の事情からみて、滞納に係る国税につき有価証券の納付委託を受けることにより確実な納付が見込まれ、かつ、その取立てまでの期間において新たに納付すべき国税の滞納が見込まれないと認められる場合をいう(通基通第55条関係1)。
(注) 納税者の申出が滞納に係る国税の一部についての納付委託の申出であっても、滞納に係る国税の全額についておおむね6月程度で完納することが確実と認められるなどの要件を満たしている場合は通則法第55条第1項第3号に該当するものとして差し支えない。
「納付委託に使用できる有価証券」とは、証券ヲ以テスル歳入納付ニ関スル法律の規定により国税の納付に使用することができる証券以外の有価証券で、最近において取立てが確実と認められ、かつ、その券面金額が納付委託の目的である国税の額を超えないものをいう(通則法第55条第1項柱書前段、通基通第55条関係2)。
この場合における「最近」とは、納付委託を受ける日からおおむね6月以内をいう。ただし、上記54《納付委託の目的となる国税》(1)に該当する国税について納付委託の申出があるときは、上記の期間を超える証券であっても納付委託を受けることができる(通基通第55条関係3)。
また、「確実に取り立てることができるものであると認められる」かどうかは、納付委託に使用する証券について支払の責任を有する者が振出人又は支払人となっている小切手又は手形について、最近において不渡りとなった事実がなく、かつ、その者の信用状態が将来悪化する見通しのない限り、取立てが確実であると判断して差し支えない(通基通第55条関係4)。
(1) 小切手
(2) 約束手形又は為替手形