この章は、通常の納税の猶予、一定期間後に税額が確定した場合の納税の猶予又は換価の猶予をする場合の事務手続及び担保の徴取について定めたものである。
納税者が通常の納税の猶予を受けようとするときは、所要の事項を記載した納税の猶予申請書(様式307010-005)(以下29において「申請書」という。)に所定の書類を添付し、これを税務署長に提出しなければならない(通則法第46条の2第2項、通則令第15条の2第2項、第3項)。
(1) 申請書の提出期限
通常の納税の猶予については、申請書の提出期限の定めがないことから、納税者に未納の国税(納期限経過後に未納となる見込みの国税を含む。)があり、納税の猶予を受けようとするときに、随時、申請書を提出することができる(通則法第46条の2第2項参照)。
(2) 申請書の記載事項及び添付書類
(注) 猶予該当事実を証するに足りる書類は、具体的には次に掲げるものをいう(通基通第46条の2関係1)。
(注)
(3) 管理運営担当部門への連絡
申請に係る国税が振替納税の対象である場合は、「各課部門事務連絡せん」(管理運営事務提要(様式編)様式管理番号110-003)に必要事項を記載の上、管理運営部門に振替停止の処理を依頼する。
納税者が一定期間後に税額が確定した場合の納税の猶予を受けようとするときは、所要の事項を記載した納税の猶予申請書(様式307010-005)(以下30において「申請書」という。)に所定の書類を添付し、これを税務署長に提出しなければならない(通則法第46条の2第3項、通則令第15条の2第4項、第5項)。
(1) 申請書の提出期限
申請書の提出期限は、猶予を受けようとする国税の納期限までに申請書を提出しなければならない(通則法第46条第3項)。ただし、申請書が納期限内に提出されなかったことについて、税務署長がやむを得ない理由があると認める場合には、納期限後であっても提出することができる(通則法第46条第3項柱書のかっこ書、上記4(5)《通常の納税の猶予の申請》参照)。
(注)
(2) 申請書の記載事項及び添付書類
(注)
滞納者が申請による換価の猶予を受けようとするときは、所要の事項を記載した換価の猶予申請書(様式307010-056-6)(以下31において「申請書」という。)に所定の書類を添付し、これを税務署長に提出しなければならない(徴収法第151条の2第1項、第3項、徴収令第53条第1項、第2項)。
(1) 申請書の提出期限
申請による換価の猶予については、猶予を受けようとする国税の納期限(延納又は物納の許可の取消しがあった場合には、その取消しに係る書面が発せられた日)から6月以内に申請書を提出しなければならない(徴収法第151条の2第1項)。
(注)
(2) 申請書の記載事項及び添付書類
(注)
(3) 管理運営担当部門への連絡
換価の猶予の申請があったときにおいて、申請に係る税額が振替納税の対象である場合の取扱いは、上記29(3)《管理運営担当部門への連絡》と同様である。
(1) 申請書等の補正を求める場合
納税の猶予又は換価の猶予の申請があった場合には、速やかに記載内容を確認し、申請書又は添付書類の記載に不備があることによって猶予の適否の判断を適切に行うことができないとき、又は添付書類の提出がないときは、納税者に対し、電話連絡等により当該申請書の訂正又は当該添付書類の訂正若しくは提出(以下「申請書等の補正」という。)を求める。
この場合の「記載に不備があることによって猶予の適否の判断を適切に行うことができないとき」とは、例えば次のような場合をいう。
(注)
(具体例)
(2) 補正通知書の送付
上記(1)において、納税者と連絡が取れない場合、又は電話連絡等による補正の求めに対し、納税者が相当の期間(おおむね1週間程度)内に補正しない場合は、「納税の猶予申請書及び添付書類に関する補正通知書」(様式307010-005-5)又は「換価の猶予申請書及び添付書類に関する補正通知書」(様式307010-056-8)(以下「補正通知書」という。)を送付することにより、納税者に対して補正を求める(通則法第46条の2第7項、第8項、徴収法第152条第4項)。
補正通知書は、納税者が送達を受けた日を明らかにするため、配達証明郵便(又はこれに準じる信書便)により送付する。ただし、配達証明郵便で送付した補正通知書が不在等により返戻された場合は、交付送達又は普通郵便により送付するものとする。
なお、次に掲げる場合は、補正通知書を送付する必要はない。
(注)
(3) 補正通知書に基づき補正がされた場合
補正通知書により申請書等の補正を求めた場合において、納税者から補正後の申請書等が提出されたときは、補正後の申請書等に基づき猶予の許可又は不許可を判断する。
この場合において、補正後の申請書等に一定の記載はあるものの、なお猶予の適否の判断に当たって確認すべき事項があるときは、必要な範囲で署内調査又は納税者に対する質問、検査又は提示若しくは提出の要求を行った上で猶予の許可又は不許可の判断をする。
(1) 取り下げたものとみなされる場合
次に掲げる場合に該当するときは、猶予の申請を取り下げたものとみなされる(通則法第46条の2第9項、徴収法第152条第4項、通基通第46条の2関係4)。
(注)
(2) みなし取下げの決議及び納税者への通知
猶予の申請を取り下げたものとみなされた場合には、納税の猶予申請のみなし取下げ通知決議書(様式307010-005-6)又は換価の猶予申請のみなし取下げ通知決議書(様式307010-056-9)により決裁を了した上、納税の猶予申請のみなし取下げ通知書(様式307010-005-8)又は換価の猶予申請のみなし取下げ通知書(様式307010-056-10)により、納税者に通知する。
なお、納税の猶予申請のみなし取下げ決議を了した場合には、決議書の副本により、速やかに管理運営担当部門に連絡する。
(注) みなし取下げの通知に対しては、不服申立てをすることができないことに留意する(通基通第46条の2関係5)。
(3) やむを得ない理由がある場合
災害その他やむを得ない理由により、納税者が補正通知書を受けた日の翌日から起算して20日以内に申請書等の補正ができないと認めるときは、その理由のやんだ日から2月以内に限り、当該申請書等の補正に係る期限を延長することができる(通則法第11条、通基通第11条関係1参照)。
猶予の要件の審査に当たり、申請書及び添付書類に記載された内容を調査する際には、申告書等の署内資料の確認、納税者に対する聞き取り、帳簿書類等の検査又は提示若しくは提出の要求を行う(通則法第46条の2第11項参照)。
(注) 納付能力調査の方法については、下記60から70まで《納付能力調査》に定めるところによる。
次に掲げるいずれかの事実が認められるときには、猶予の要件を審査することなく、その猶予の申請を不許可とする(通則法第46条の2第10項、徴収法第152条第4項)。
(1) 繰上請求事由に該当する事実がある場合において、その者が猶予に係る国税を猶予期間内に完納することができないと認められるとき。
(2) 納税者が、徴収職員による質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、通則法第46条の2第11項若しくは徴収法第141条の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又はこれらの規定による物件の提示若しくは提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、若しくは偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)を提示し、若しくは提出したとき。
(注) 「拒み」とは、言語又は動作で検査を承諾しないこと、「妨げ」とは、検査に障害を与えること、「忌避」とは、積極的行動によらないで検査の対象から免れることをいう(通基通第46条の2関係6)。
(3) 不当な目的で納税の猶予又は換価の猶予の申請がされたとき、その他その申請が誠実にされたものではないとき。
(注) 例えば、猶予の申請が不許可(一部許可を含む。)又はみなし取下げとなった後、同一の国税について再度猶予の申請がされたとき(新たな猶予該当事実などが発生するなど、その申請に正当な理由があるときを除く。)などが該当する(通基通第46条の2関係7)。
税務署長は、職権による換価の猶予をする場合において、換価の猶予の要件を充足するか否かを判断するため、又は猶予をするに当たってその猶予に係る金額を分割して納付させるための各月の分割納付期限及び分割納付金額を定めるために、滞納者の現在の資産及び負債の状況並びに今後の収入及び支出の見込み等を調査する必要があると認めるときは、滞納者に対し、次に掲げる書類の提出を求めることができる(徴収法第151条第2項、徴収令第53条第1項、徴基通第151条関係13−2)。
(1) 分割して納付するために必要となる書類(以下「分割納付計画書」(様式307010-063-1)という。)
(2) 財産目録(様式307010-005-1)
(3) 収支の明細書(様式307010-005-2)
(4) 担保を徴する場合(上記16(7)《保全措置及び差押えの猶予》参照)には、担保の提供に関し必要となる書類(下記42《担保の提供及び徴取手続》参照)
(注) 猶予を受けようとする金額(未確定の延滞税を除く。)が100万円以下である場合には、上記(2)及び(3)の書類に代えて、財産収支状況書(様式307010-005-3)の提出を求める。
なお、猶予を受けようとする国税以外に、猶予の申請中の国税又は既に猶予を受けている国税がある場合には、それらの国税の額を上記の「猶予を受けようとする金額」に含めるものとする。
(1) 猶予の許可
納税の猶予又は換価の猶予をする場合には、納税の猶予許可決議書(様式307010-010)、換価の猶予許可決議書(様式307010-056-18)又は換価の猶予決議書(様式307010-064)により決裁を了した上、猶予をした旨、猶予に係る国税の年度、税目、猶予する金額、猶予する期間等を納税の猶予許可通知書(様式307010-012又は307010-013)、換価の猶予許可通知書(様式307010-056-19又は307010-056-20)又は換価の猶予通知書(様式307010-066)により納税者に通知する(通則法第47条第1項、徴収法第152条第3項、第4項)。
また、納税の猶予の許可の決議を了した場合には、その決議書の副本により、速やかに管理運営担当部門に連絡する。
なお、保証人及び担保財産の所有者(納税者を除く。)がある場合には、これらの者に対して、納税の猶予許可通知書(保証人等用)(様式307010-015)、換価の猶予許可通知書(保証人等用)(様式307010-056-22)又は換価の猶予通知書(保証人等用)(様式307010-068)により猶予をする旨を通知する(通基通第47条関係1)。
(注) 次に掲げる場合は、申請により求められた猶予の一部を拒否する処分のため、納税の猶予許可通知書又は換価の猶予許可通知書にその処分の理由を附記する必要がある(通則法第74条の14第1項、行政手続法第8条)。
(2) 猶予の不許可
納税の猶予又は換価の猶予の申請書の提出があった場合において、納税の猶予若しくは申請による換価の猶予の要件に該当しないとき又は上記35《猶予の不許可の事由》に掲げるものに該当するときは、納税の猶予不許可決議書(様式307010-021)又は換価の猶予不許可決議書(様式307010-056-23)により決裁を了した上、猶予をしない旨を納税の猶予不許可通知書(様式307010-023)又は換価の猶予不許可通知書(様式307010-056-24)により納税者に通知する(通則法第47条第2項、徴収法第152条第4項)。
なお、納税の猶予の不許可の決議を了した場合には、その決議書の副本により、速やかに管理運営担当部門に連絡する。
また、保証人及び担保財産の所有者(納税者を除く。)がある場合には、これらの者に対して、納税の猶予不許可通知書(保証人等用)(様式307010-025)又は換価の猶予不許可通知書(保証人等用)(様式307010-056-26)により猶予をしない旨を通知する(通基通第47条関係3)。
(注) 納税の猶予の不許可又は申請による換価の猶予の不許可は申請に対する拒否処分であるため、納税の猶予不許可通知書等にその処分の理由を附記する必要がある(通則法第74条の14第1項、行政手続法第8条)。