第3節 換価の猶予の効果

23 換価の禁止

換価の猶予期間中は、その猶予に係る国税につき、差し押さえている財産の換価をすることはできない(徴収法第151条第1項本文、第151条の2第1項)。

なお、換価の猶予期間中においても、その猶予に係る国税につき督促及び新たな差押えをすることができる(徴基通第151条関係9、第151条の2関係12)。ただし、この場合における差押えは、徴取した担保、若しくは差し押さえた財産の価額の著しい減少により保全措置が不十分となった場合、又は滞納者から新たな財産を提供し、担保の解除若しくは差押換えの申出があった場合など、徴収上特に必要があると認められる場合を除き、原則として、行わないものとする。

(注)

  1. 1 換価の猶予の申請期限(納期限から6月)内であっても、滞納に係る国税につき差押え等の滞納処分をすることは妨げられない(徴収法第47条第1項参照、徴基通第151条の2関係6)。したがって、督促や催告によっても納付の意思が認められない場合、又は換価の猶予の申請をする意思を示した滞納者が、申請書及び添付書類を作成するのに通常要すると認められる期間(おおむね1月程度)を経過しても申請をしない場合は、申請書等の作成を困難とするような特段の事情が認められない限り、申請をする意思がないものとして、滞納処分を執行することを検討する。
    なお、滞納処分を執行した後でもあっても、期限までに換価の猶予の申請があった場合は、改めて猶予の許可又は不許可を判定する。
  2. 2 換価の猶予をした場合においても、その猶予に係る国税につき、既にした交付要求又は参加差押えを解除する必要はなく、また、新たに交付要求又は参加差押えをし、交付要求に係る受入金をその猶予に係る国税に充てることができる(徴基通第151条関係10、第151条の2関係12)。
  3. 3 主たる納税者の国税につき換価の猶予をした場合であっても、その国税の保証人又は第二次納税義務者に対して納付通知書若しくは納付催告書を発し、又は滞納処分をすることは妨げられない。ただし、換価については、通則法第52条第5項《担保の処分》又は徴収法第32条第4項《第二次納税義務の通則》の規定による制限がある(通基通第52条関係7、徴基通第32条関係19)。

24 換価の禁止の例外

換価の猶予に係る国税につき差し押さえた財産のうち、天然果実を生ずるもの又は有価証券、債権若しくは、第三債務者等のある無体財産権等がある場合の猶予期間中における取扱いについては、上記11《滞納処分の禁止の例外》⑵と同様である(徴収法第152条第3項、第4項、通則法第48条第3項、第4項参照)。

25 差押えの解除

換価の猶予をする場合には、既にした差押えは解除しない(徴基通第151条関係9、第151条の2関係12)。ただし、上記16⑺《保全措置及び差押えの猶予》ホに該当する財産を差し押さえている場合において、必要があると認めるときは、その差押えを解除して差し支えない(徴収法第152条第2項)。

26 時効の更新等

滞納者から換価の猶予の申請書が提出された場合には、その申請に係る国税の納付義務の承認があったと認められ、その提出の時から、その国税の徴収権の時効が新たに進行する(通則法第72条第3項、民法第152条第1項、通基通第72条関係6)。

また、換価の猶予に係る国税(その国税に併せて納付すべき延滞税及び利子税を含む。)の徴収権の時効は、その猶予がされている期間内は進行しない(通則法第73条第4項、徴基通第151条関係12、第151条の2関係12、通基通第73条関係1)。

27 延滞税の免除

換価の猶予をした場合における延滞税の免除については、下記71から78まで《延滞税の免除》に定めるところによる。

28 還付金等及び還付加算金の充当

還付金等及び還付加算金がある場合には、通則法第57条《充当》及び第58条《還付加算金》の規定その他各税法の規定により、猶予期間中であっても、その猶予に係る国税に充当しなければならない。

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