第6節 買受代金の領収

 この節は、買受代金の納付の期限、領収手続及び買受代金を納付しなかった場合における売却決定の取消し等を定めたものである。

(買受代金の納付の期限)

54 換価財産の買受代金の納付の期限は、売却決定の日(次順位買受申込者が買受人のときは、徴収法第113条第2項《次順位買受申込者に対する売却決定》に規定する売却決定の日から起算して7日を経過した日)とする(徴収法第115条第1項、徴基通第95条関係12の(注)1)。この場合の期限については、その日の何時何分までと時刻を指定して差し支えない(徴基通第95条関係12)。
 なお、売却決定の日については、次の事項に留意する。

  • (1) 公売財産が動産、有価証券又は電話加入権である場合には、公売期日等が売却決定の日となること(徴収法第111条)。

    (注) 92(振替株式等の委託売却の手続)により、振替株式等を委託売却する場合には、金融商品市場において委託株式等(委託売却に係る振替株式等をいう。以下同じ。)の売買が成立した日が売却決定の日となることに留意する(88の(4)、92の(5)、徴基通第111条関係1の(注)参照)。

  • (2) 公売財産が不動産である場合には、公売期日等から起算して7日を経過した日から21日を経過した日までの期間内で税務署長が指定する日が売却決定の日となること(徴収法第113条第1項、徴収規則第1条の7)。
  • (3) 公売財産が船舶、航空機、自動車、建設機械、小型船舶、債権又は電話加入権以外の無体財産権等である場合には、公売期日等から起算して7日を経過した日が売却決定の日となること(徴収法第113条第1項)。

    (注) 上記の「起算して7日を経過した日」又は「21日を経過した日」が休日等に当たっても延期されないことに留意する(徴基通第113条関係1)。

(納付の期限の延長)

55 公売財産の価額が相当高額で、かつ、買受代金の納付の期限を延長することにより高価有利に公売することができると見込まれる場合等税務署長において特に買受代金の納付の期限を延長する必要があると認めるときは、30日以内の範囲でその期限を延長することができる(徴収法第115条第2項)。この場合には、その延長された期限が54(買受代金の納付の期限)の買受代金の納付の期限となることに留意する(徴基通第115条関係5)。
 なお、期限の延長は、必ず「公売公告」(随意契約による売却の場合にはその「売却の通知書」)にその旨を記載して行う(徴基通第115条関係4)。

(注) 上記により期限を延長するときは、30日以内の日のうち休日等に当たる日は、その期限に指定しないものとする(徴基通第115条関係2)。

(買受代金の納付)

56 買受人は、買受代金をその納付の期限までに現金で納付しなければならない(徴収法第115条第3項)。この場合には、次に留意する。

  • (1) 買受人に買受代金の納付をさせるときは、「歳入歳出外現金領収証書」と複写により「保管金提出書兼受入書」を作成すること。この場合において買受代金に充てる旨の申出がされている公売保証金があるときは、その金額を「摘要」欄(「充当申出」欄)に記載すること(管理運営事務提要(事務手続編)第4編第5章第5節第2款第2の1の(3)のハのなお書)。
     なお、期間入札又は期間競り売りの方法により公売を行う場合には、「公売保証金の充当申出書」の提出により、充当申出があったものとする。

    (注)

    1 上記の買受代金の納付については、分割納付を認めないことに留意する。

    2 上記の「保管金提出書兼受入書」は、徴収令第42条の6に規定する買受代金を納付する際に買受人が提出すべき「書面」を兼ねるものであることに留意する。

  • (2) 買受代金を領収したときは、所定の「歳入歳出外現金領収証書」を買受人に交付すること。
  • (3) 買受人は、買受代金を主任歳入歳出外現金出納官吏の普通預金口座に振り込む方法により納付することもできるが、次の点に留意すること。
    • イ 買受代金の納付方法の確認
       公売手続を円滑に進めるために、買受代金を税務署等において現金納付するか、銀行振込み(電信扱いに限る。)により納付するかについては、書面等により公売終了後速やかに確認する。
    • ロ 買受代金の振込期限
       買受代金の振込期限については、入金の確認に要する時間を考慮して納付期限より早い時刻を指定することに留意する。
    • ハ 買受代金の領収
       買受代金が、売却決定前に振り込まれた場合でも、売却決定をするまでは領収手続を行わない。
       ただし、売却決定前に、最高価申込者等の決定を取り消した場合には、その取消しを行ったときに「その他受入金」として領収した上で返還の手続を行う。

      (注) 上記の場合において、領収手続を行う前に月末が到来し、「預金現在高証明書」と「現金出納簿」及び「保管金一人別内訳カード」とが相違することになった場合には、「売却代金が売却決定前に振り込まれたため、領収できない。」旨及び金額を「現金現在高証明書」の余白及び「預金出納簿」の「備考」欄に記載する(管理運営事務提要(事務手続編)第4編第5章第5節第2款第2の3の(5)参照)。

    • ニ 権利移転手続のために必要な書類等の提出
       権利移転手続のために必要な書類等については、買受代金の入金後速やかに郵送等により提出させる。

(インボイスの交付)

56-2 課税財産を公売した場合において、買受人からインボイスの交付を求められたときは、次により、当該公売財産に係るインボイスを作成の上、買受人に対して交付すること(消費税法施行令第70条の12第5項参照)。
 なお、インボイスの交付希望の有無については、入札書のインボイス発行希望欄の記載又は買受人からの口頭による申出によって確認すること。

  • (1) インボイス(「適格請求書」(様式308020-105))及びその写し(「適格請求書(写し)」(様式308020-106))の作成に当たっては、必要な決裁を受けること。

    (注)1 消費税額(地方消費税額含む。以下同じ。)の算出に当たっては、消費税率が10%の場合、買受代金に10/110を乗じて算出し、1円未満の端数については、切り捨てる。

    2 共同入札又は共同買受申込みによる買受けの場合は、共有持分に応じたインボイス交付対象買受代金を基に消費税額を算出した上で、インボイス及びその写しを買受人ごとに作成する。

    3 公売財産が、家事共用財産である場合や滞納者を異にする数個の財産の一括換価の場合は、事業専用割合や所有財産ごとの価額(徴収法第128条第2項)に応じて、消費税額を算出する。
     なお、滞納者を異にする数個の財産を一括換価する場合は、インボイス及びその写しを滞納者ごとに作成する。

    (例)1 家事共用財産の場合の計算例
    買受代金700円(事業専用割合:60%)
    ・ 700×0.6×10/110=38円

    2 滞納者が異なる財産の一括換価の場合の計算例
    買受代金700円(A所有分:450円、B所有分:250円)
    ・ Aに係るインボイス記載消費税額⇒ 450×10/110=40円
    ・ Bに係るインボイス記載消費税額⇒ 250×10/110=22円

    ※ 所有者ごとに算出した消費税額の合計と買受代金から算出した消費税額(上記の例では、700×10/110=63円)が一致しなくても、端数調整を行う必要はない。

    4 インボイスの写しには、買受人の氏名等を記載しないことに留意する。

      
  • (2) インボイスの交付に当たっては、公売財産の所有者である滞納者について、インボイス発行事業者であることを確認した上で、買受代金納付後に、原則として歳入歳出外現金領収証書と併せて交付すること。
     なお、買受人から電磁的記録によるインボイスの提供を求められた場合は、インボイスのデータを情報記録媒体(CD−R)に格納の上、交付すること。
     この場合においては、紙媒体で出力したインボイスを「滞納処分票」に編てつの上、電磁的記録によりインボイスを提供した旨を記録すること。
     おって、情報記録媒体については、平成20年国税庁訓令6号「国税庁における情報システムに係る情報セキュリティの確保のための実施規則」及び平成20.6.23官参4−11「情報セキュリティ実施細則」(事務運営指針)に基づき適切に管理する。

    (注)1 買受人から事前にインボイスの交付の求めがなかった場合であっても、じ後にインボイス交付の求めがあったときは、インボイスを交付すること。

    2 買受人からインボイスの再発行を求められた場合であっても、再発行は行わないこと。

  • (3) 買受人にインボイスを交付した後、公売財産の所有者である滞納者に対して、インボイスの写しを送付すること(消費税法施行令第70条の12第3項)。

    (注) 公売財産の所有者である滞納者からインボイスの写しの再発行を求められた場合、再発行は行わないこと。

(売却決定通知書の交付)

57 買受人が買受代金の全額を納付した場合には、その者に対して「売却決定通知書」(様式308020-079・080)を交付する(徴収法第118条本文)。
 ただし、動産を公売した場合において、その動産を公売の場所に搬出しているとき、第三者が占有している動産を差し押さえ、これを当該第三者に保管させている場合においてその第三者が買受人となったとき、その他直接買受人に公売財産の引渡しができるとき等「売却決定通知書」を交付する必要がないと認めるときは、その交付を要しない(徴収法第118条ただし書、徴基通第118条関係2)。
 なお、有価証券を公売した場合には、その買受人に「売却決定通知書」の交付を要しないが(徴収法第118条本文)、譲渡制限がある株式を公売した場合には、これを取得した者は、その株式会社に対して譲渡承認の請求をすることができることから、この場合における公売により取得したことを証する書面として、その買受人に対して、「売却決定通知書」を交付するものとして取り扱う(会社法第137条、第138条第2号、会社法施行規則第24条第1項第3号参照)。

(注)

1 未登録自動車等(104の(3)参照)を公売した場合においては、「売却決定通知書」を交付することに留意する。

2 会社法施行規則第24条第1項第3号《株式取得者からの承認の請求》に規定する「競売」には、公売及び随意契約による売却も含まれることに留意する。

(買受代金を納付の期限までに納付しなかった場合の処理)

58 買受人が買受代金をその納付の期限までに納付しなかった場合には、次により処理する。

  • (1) 売却決定の取消しの時期等
     買受人が買受代金の納付の期限までに買受代金の全額を納付しないときは、速やかに売却決定を取り消すものとする(徴収法第115条第4項、徴基通第115条関係7)。この場合の売却決定の取消しに伴う処理については、156(売却決定の取消しに伴う処理)によること。
  • (2) 売却決定の取消しを行わない場合
     次に掲げる事項のいずれにも該当する場合には、相当と認められる期間(おおむね7日以内)は売却決定の取消しを行わないこととしても差し支えないこと(徴基通第115条関係7ただし書)。この場合においては、売却決定の取消しをしない期間内に滞納者又は第三者から公売の基礎となった滞納国税(特定参加差押不動産を換価する場合にあっては、特定参加差押え(特定参加差押えが2以上あるときは、そのうち最も先にされた特定参加差押えに限る。)に係る国税又は特定差押えに係る国税、地方税若しくは公課)の全額が納付されたとき等売却決定を取り消すべき事由が生じたときは、その売却決定を取り消す旨をあらかじめ買受人に周知しておくこと。
    • イ 次順位買受申込者が定められていないこと。
    • ロ 期限までに納付できないことの理由が、交通事故、急病等税務署長が真にやむを得ないと認めるものであること。
    • ハ その相当と認められる期間内に買受代金の全額を納付することが確実であって、取消しをしないでいることが徴収上有利であると認められること。

(注) 不動産等の公売につき、上記により売却決定の取消しをしなかった場合における徴収法第171条第1項《滞納処分に関する不服申立ての期限の特例》の規定の適用について、同条第1項第3号《不動産等の公売公告から売却決定までの処分に関する不服申立て等の期限の特例》の買受代金の納付の期限とは、「公売公告」をした買受代金の納付の期限をいい、買受代金が納付の期限までに納付されたか否かを問わないことに留意する(徴基通第171条関係6-2)。

(買受代金納付の効果)

59  買受人が買受代金の全額を納付した場合には、買受人はその時に換価財産を取得し(徴収法第116条第1項)、また、危険負担も同時に買受人に移転する(徴基通第116条関係3)。
 なお、買受代金の納付の効果については、98の(1)のなお書(権利移転の時期の特例)の例外があることに留意する。

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