別紙

20140417審業2
平成26年5月1日

国税庁課税部審理室長 岸 英彦 殿

特許庁審査業務部審査業務課長 小林 龍雄

1 照会の趣旨

特許権、実用新案権、意匠権及び商標権(以下、これらを総称して「産業財産権」といいます。)は、法律上、設定の登録により発生すると規定されています(特許法(昭和34年法律第121号)第66条第1項、実用新案法(昭和34年法律第123号)第14条第1項、意匠法(昭和34年法律第125号)第20条第1項、商標法(昭和34年法律第127号)第18条第1項)。このため、産業財産権は、特許庁に備える「登録原簿」にこれらの権利の発生及び変動が登録されることになります。
 産業財産権に係る各法令上、登録名義人の表示変更登録申請については、特段の明文上の規定は存在しないものの、「登録原簿」に登録されている事項が実際のものと相違することは望ましい状態とは言えないため、登録名義人の住所(居所)、氏名(名称)に変更が生じた場合には、速やかに登録名義人の表示変更登録申請を行い、「登録原簿」に登録された事項を当該変更後のものに更新することが通例行われています。この産業財産権の登録名義人の表示変更登録に係る登録免許税の額は、産業財産権の件数1件につき1,000円と定められていますが(登録免許税法(昭和42年法律第35号)第2条、別表第1第13号〜第16号)、当該登録が登録免許税法第5条(非課税登記等)第4号に規定する登録、すなわち住居表示に関する法律(昭和37年法律第119号)第3条第1項及び第2項又は第4条(住居表示の実施手続等)の規定による住居表示の実施又は変更に伴う登録事項の変更の登録に該当する場合には、当該登録について登録免許税を課さないこととされています。
 ところで、大韓民国では、平成26年1月1日より、新法施行に伴い、全国的に、従来の洞名等による住所表示に代わり、道路名による新住所表示が実施されています。これにより、大韓民国に住所(居所)を有する産業財産権権利者は、現在の「登録原簿」に登録されている住所(居所)の住所表示と当該新住所表示が実施された後の住所表示が相違することになるため、登録名義人の表示変更登録を行う必要が生じます。
 登録免許税法第5条第4号は、日本国内における住居表示の実施又は変更に伴う登録事項の変更の登録に係る規定と認識していますが、この大韓民国国内における新住所表示の実施により大韓民国に住所(居所)を有する産業財産権権利者の住所表示が変更されるのは、個人の事情で住所表示が変更された訳ではなく、産業財産権権利者の関知しない公的な事情に基因していることを考慮すれば、当該新住所表示の実施に伴う産業財産権の登録名義人の表示変更登録についても、同号の適用範囲にあるものとして、登録免許税を課さないこととして取り扱って差し支えないか、照会します。

2 照会に係る取引等の事実関係

(1) 例えば、大韓民国に住所を有する特許権者の新住所表示が実施される前の住所表示を「大韓民国大田市西区屯山洞○○○」とします。また、特許庁が備える「登録原簿」においても、当該特許権者の住所の住所表示は「大韓民国大田市西区屯山洞○○○」として登録されているとします。

(2) 平成26年1月1日から、大韓民国においては、新住所表示が実施され、当該特許権者の法律上の新住所表示は「大韓民国大田市西区庁舎路×××」となっています(洞名等による住所表示から道路名による住所表示への変更)。これにより、当該特許権者の「登録原簿」に登録された住所の住所表示(上記(1))と新住所表示が実施された後の住所表示が相違することになります。

(3) 当該特許権者の上記(1)の「登録原簿」に登録されている住所の住所表示を上記(2)の新住所表示が実施された後の住所表示と同一にするためには、当該特許権者(実際には日本在住の代理人)が登録名義人の表示変更登録申請を行わなければならないことになります。

3 照会者の求める見解となることの理由

産業財産権権利者の住所(居所)、氏名(名称)に変更が生じた場合には、登録名義人の表示変更登録申請を行い、「登録原簿」を当該変更後のものに更新することが通例行われています。産業財産権の登録名義人の表示変更登録に係る登録免許税の額は、登録免許税法別表第1第13号から第16号の規定により、産業財産権の件数1件につき1,000円と定められていますが、当該登録が登録免許税法第5条第4号の規定に該当する登録の場合には、当該登録について登録免許税を課さないこととされています。この登録免許税法第5条第4号の立法趣旨は、市町村の政策的考慮等から一方的に住居表示を実施しておきながら、他方これに伴う登録事項の変更について登録免許税を徴収するのは酷であるとの配慮にあると考えられます。
 日本における住居表示の原則は、住居表示に関する法律第2条により、1街区につけられる符号及び当該街区内にある建物その他の工作物につけられる住居番号を用いて表示する街区方式、2市町村内の道路の名称及び当該道路に接し、又は当該道路に通ずる通路を有する建物その他の工作物につけられる住居番号を用いて表示する道路方式、のいずれかの方法によるものと規定されています。一方、今回の大韓民国における新住所表示の実施は、道路名と建物番号を基準としていることから、日本における上記2の道路方式と同様の方法で行われたものと考えられます。このように、今回の大韓民国における新住所表示の実施は、法律に基づいたところで、産業財産権権利者の関知しない公的な事情に基因して、日本における住居表示の実施と同様の方法で実施されたことを考慮すれば、登録免許税法第5条第4号の立法趣旨に合致するため、たとえ住居表示の実施が日本国外で行われたものであったとしても、住居表示に関する法律第3条第1項及び第2項又は第4条の規定による住居表示の実施又は変更があった場合の取扱いと同様の取扱いをすることが相当であると考えられます。
 したがって、大韓民国の新住所表示の実施に伴う産業財産権の登録名義人の表示変更登録についても、登録免許税法第5条第4号の適用範囲にあるものとして、登録免許税を課さないこととして取り扱って差し支えないものと考えます。
 なお、登録免許税法第5条第4号に規定する登録について同条の適用を受けるためには、登録名義人の表示変更登録申請に、住居表示に関する法律第3条第1項及び第2項又は第4条の規定による住居表示の実施又は変更に伴って登録を受けるものであることを証する当該実施又は変更に係る市町村長の書類を添付する必要があります(登録免許税法施行規則(昭和42年大蔵省令第37号)第1条第1号)。本件の場合については、上記大韓民国の新住所表示の実施に伴い大韓民国の安全行政部において「新旧住所の同一性を証明する公式確認書」が発行されることになり、また、大韓民国の特許庁からは、当該新住所表示の実施に係る産業財産権の登録名義人の表示変更登録申請であることを明確にすることを目的として産業財産権権利者の請求により、大韓民国の特許庁において「新旧住所の同一性を証明する公式確認書」を発行する旨の申し入れがなされています。これらの書類により、特許庁において、「登録原簿」に登録されている住所(居所)が新住所表示が実施される前の住所表示であるということと、その住所表示に対する当該新住所表示が実施された後の住所表示を確認することができることから、これらの書類を登録免許税法施行規則第1条第1号に規定する書類として取り扱い、これらの書類のいずれかを添付した新住所表示の実施に伴う産業財産権の登録名義人の表示変更登録申請が行われた場合に限り、当該表示変更登録申請に係る登録名義人の表示変更登録について登録免許税を課さないこととして取り扱って差し支えないものと考えます。