別紙

法務省民商第487号
平成24年2月28日

国税庁課税部審理室長 住倉 毅宏 殿

法務省民事局商事課長 河合 芳光

1 照会の趣旨

 行政区画、郡、区、市町村内の町若しくは字又はこれらの名称(以下「行政区画等」といいます。)の変更による地番の変更に伴って土地の登記簿上の登記名義人(所有者)の住所の変更が生ずる場合には、当該登記名義人(所有者)は、新しい地番による住所の変更の登記の申請をする必要があるところ、当該登記については、登録免許税を課さないこととされています(登録免許税法(昭和42年法律第35号)第5条第5号)。
 ところで、我が国においては、明治時代以来、一定の地域において、田、畑、宅地、塩田及び鉱泉地に付されている地番(以下「耕地番」といいます。)と池沼、山林及び原野に付されている地番(以下「山地番」といいます。)という二種類の地番が存在し、現在においても、不動産登記において同一の地番区域内に所在する異なる土地について同一の地番が重複して定められている、いわゆる二重地番の状況が多数存在しています。このような二重地番の状況を放置しておくことは、不動産に関する権利の保全を図るという不動産登記制度の目的にかなわず、ひいては取引の安全と円滑を阻害する原因となること等から、この二重地番を解消するために、不動産登記において登記官が職権によって当該地番の変更の登記を行うこととしています。そして、この二重地番の解消を目的とした不動産登記における地番の変更に伴い、商業・法人登記簿の登記事項に変更が生じた場合には、関係法令の定めに従って、商業・法人登記における登記事項の変更の登記の申請をしなければならないこととされています。具体的に株式会社の場合を例にとれば、本店の所在場所、代表取締役の住所(委員会設置会社にあっては、代表執行役の住所)又は株主名簿管理人の住所等(以下「本店の所在場所等」といいます。)に変更が生じた株式会社については、登記事項である本店の所在場所等の変更の登記を行わなければならないこととされています(会社法(平成17年法律第86号)第915条第1項)。
 このような二重地番の解消を目的とした地番の変更に伴う商業・法人登記における登記事項の変更の登記についても、上記の行政区画等の変更による地番の変更に伴う登記事項の変更の登記の場合と同様に、登録免許税法第5条第5号の規定に準じて、登録免許税を課さないこととして取り扱って差し支えないか、照会します。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

(1) 同一の地番区域に所在する山林及び宅地について、「50番」という同一の地番が重複して定められている場合を例にすると、当該山林の地番は山地番であるため「山50番」、当該宅地の地番は耕地番であるため「耕50番」と便宜上区分することはできるものの、それぞれの土地の登記簿には、土地の表示に関する登記について、同一の地番である「50番」としか記録がされていない状況となっています。

(2) (1)のような二重地番の状況を解消するため、登記官が職権により当該宅地の地番を新たな地番に変更することとなります。例えば、当該宅地の地番であれば、変更前の地番である「50番」を「5050番」とすることにより新たな地番に変更されます。

(3) (2)によって当該宅地の地番が「50番」から「5050番」に変更されたことに伴い、当該宅地の変更前の地番を本店の所在場所として登記を行っていた株式会社は、登記事項である本店の所在場所の変更の登記を行わなければならないこととなります。

3 照会者の求める見解となることの理由

 行政区画等の変更に伴って地番を変更する場合には、登記官が職権によって土地の表示に関する登記事項である地番の変更の登記を行うこととなります(不動産登記法(平成16年法律第123号)第28条、第35条)。
 そして、登記官が職権によって行政区画等の変更による地番の変更の登記を行ったことに伴って、土地の登記簿上の登記名義人(所有者)の住所に変更が生ずる場合には、当該土地名義人(所有者)は、地番変更後の新しい地番によって住所の変更の登記をする必要があります。
 この住所の変更の登記については、登録免許税法第5条第5号の規定により登録免許税は課されないこととされていますが、この規定は、この場合の住所の変更の登記は、そもそも、行政区画等が変更されたことに伴い登記官が職権によって地番の変更を行ったという事情、すなわち登記名義人(所有者)の関知しない公的な事情に基因して行われることから、このような事情を背景として登記事項の変更の登記を行う必要が生じた場合にまで登録免許税を課することは適当ではないということを考慮して設けられたものであると考えられます。
 照会の場合における二重地番の解消を目的とした地番の変更に伴う商業・法人登記における登記事項の変更の登記についても、不動産登記において二重地番の解消を目的として登記官が職権で地番の変更の登記を行ったという事情、すなわち、登記名義人(所有者)の関知しない公的な事情に基因して行われるものであることからすれば、上記の行政区画等の変更による地番の変更に伴う登記事項の変更の登記の場合と同様の考慮をすることが相当であると考えられます。
 したがって、二重地番の解消を目的とした地番の変更に伴う商業・法人登記における登記事項の変更の登記については、登録免許税法第5条第5号の規定に準じて、登録免許税を課さないこととして取り扱って差し支えないものと考えます。