当研究会は、本年4月の政府の緊急経済対策を受け、金融機関の不良債権問題と企業の過剰債務問題の一体的解決を促進するための対策の一つとして、今般、別添の「私的整理に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」という。)を取りまとめました。
 このガイドラインは、会社更生法や民事再生法などの手続によらずに、債権者と債務者の合意に基づき、債務について猶予・減免などをすることにより、経営困難な状況にある企業を再建する場合の私的整理の手続を定めたものであり、多数の金融機関等が債権者として関わることを前提としているものであります。
 当研究会といたしましては、このガイドラインが円滑に運用されるため、ガイドラインに関する税務上の取扱いを検討する必要があると考えます。
 つきましては、このガイドラインに基づき策定された再建計画により債権放棄等(債権放棄、無償又は低利による貸付け等をいう。以下同じ。)が行われた場合、債権者及び債務者における税務上の取扱いについては、下記のとおりで特に問題がないか、ご照会申しあげます。
 なお、このガイドラインに基づく再建支援の検討項目及びその内容は、別紙のとおりです。

1. 債権放棄等をした債権者の税務上の取扱い

 債権者である企業が取引先等を整理もしくは再建するために債権放棄等をした場合の税務上の取扱いについては、法人税基本通達9-4-1及び9-4-2において既に明確化されているところであり、同通達9-4-2によれば、合理的な再建計画に基づく債権放棄等による損失であれば、税務上損金算入される旨定められています。
 ついては、今般のガイドラインに定める手続に基づいて策定される再建計画については、同通達9-4-2に沿って検討すると別紙のとおりであり、同通達に定める支援額の合理性、支援者による適切な再建管理、支援者の範囲の相当性及び支援割合の合理性等のいずれも有すると考えられるほか、更に、利害の対立する複数の支援者の合意により策定された再建計画であると考えられます。
 このことを前提とすれば、ガイドラインに基づき策定された再建計画により債権放棄等が行われた場合には、原則として、同通達にいう合理的な再建計画に基づく債権放棄等であると考えられます。

2. 債務免除を受けた債務者の税務上の取扱い

 法人税基本通達12-3-1(3)によれば、債務者である企業が整理開始の命令等に伴い債務免除等を受けた場合において「債務の免除等が多数の債権者によって協議の上決められる等その決定についてし意性がなく、かつ、その内容に合理性があると認められる資産の整理があったこと」の事実が認められる場合には、法人税法施行令第117条第4号の整理開始の命令に準ずる事実等に該当する旨定めており、法人税法第59条≪資産整理に伴う私財提供等があった場合の欠損金の損金算入≫の適用があることになります。
 ついては、今般のガイドラインに定める手続に基づく再建計画により債務免除を受けた場合には、同通達12-3-1(3)に沿って検討すると別紙のとおりであり、同通達に該当すると考えられます。このことを前提とすれば、ガイドラインに基づき策定された再建計画により債務免除を受けた場合には、原則として、法人税法第59条の適用があるものと考えられます。

以上


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