(別紙)

 私的整理に関するガイドラインは、会社更生法や民事再生法などの手続によらずに、債権者と債務者の合意に基づき、債務について猶予・減免などをすることにより、経営困難な状況にある企業を再建するため【1項(1)】のものであり、利害の対立する多数の金融機関等が主要債権者又は対象債権者として関わることを前提とし、私的整理の全部を対象としていない限定的なものである。
 また、会社更生法や民事再生法などの法的手続によったのでは事業価値が著しく毀損されて再建に支障が生じるおそれがあり、私的整理によった方が債権者と債務者の双方にとって経済的に合理性がある場合のみ、このガイドラインによる私的整理が限定的に行われる【1項(2)】。すなわち、本ガイドラインによる私的整理は、利害の対立する多数の支援者により行われる再建支援に該当するものであり、その再建支援について法人税基本通達9-4-2及び同通達12-3-1(3)に沿って検討した項目及び内容は下記のとおりである。

 なお、本ガイドラインによる運営が厳格に行われるための手続的担保は、各項目に盛り込まれているが、それぞれの項目に共通するものは以下のとおりである。

1 本ガイドラインにおいては、再建計画案は、まず債務者が作成することになる。しかし、この再建計画案について対象債権者全員の同意が得られない場合及び合意された再建計画に基づく弁済が予定どおりに実施できない場合は、法的倒産処理手続開始の申立てなど適宜な措置をとらなければならない。したがって、債務者が本ガイドラインに基づく申出を行う際には、相当程度詳細な検討を行うとともに、チェックリスト記載の資料等を作成した上で主要債権者に申し出ることになる。また、経営者退任・減増資・支配株主の株式提供を前提としており、債務者は不退転の決意で臨むことになる。

2 主要債権者は、対象債務者となり得る企業の適格性等を検討した上で、相当と判断した場合には、対象債権者に対し書面にて債務者と連名で一時停止の通知を出状する。この段階で、主要債権者としては利害の対立する他の対象債権者との円滑な合意を得られるだけの再建計画案であることを、厳格に検討することとなる。

3 上記の企業の適格性等については、債権者会議及び債権者委員会で検討されることになる。また、第2回債権者会議に先立ち、主要債権者又は債権者委員会は、再建計画全般の相当性と実行可能性を、対象債権者に対し書面にて報告することになる。

4 選任された専門家(アドバイザー)により、再建計画案についての正確性、相当性、実行可能性等の調査が行われ、その結果について報告を受ける仕組みも導入されている。

1. 損失負担の必要性

(1) 対象債務者は事業関連性のある「子会社等」に該当するか
 本ガイドラインにおいては、対象債権者は再建計画が成立したとすれば、それにより権利を変更される債権者【2項(3)】である。したがって、支援を受ける対象債務者となるのは、対象債権者と取引関係、資金関係等事業関連性を有している企業である【Q17】。

(2) 子会社等は経営危機に陥っているか
 本ガイドラインにおける対象債務者となる企業は、過剰債務を主因として経営困難な状況にあり、自力による再建が困難である【3項(1)】経営危機に陥っている企業である。

(3) 支援者にとって損失負担等を行う相当な理由はあるか
 本ガイドラインにおいて、再建するときは、破産的清算はもとより、会社更生法や民事再生法などの手続によるよりも多い回収を得られる見込みが確実であるなど、債権者にとっても経済合理性が期待できること【3項(4)】を要件としている。

2. 再建計画等の合理性

(1) 損失負担額(支援額)の合理性
 本ガイドラインにおいては、債権者会議が経営の困難になった原因を解明し、企業を再建するために必要な支援額を最終的に決定することになるが、再建計画案の正確性・相当性・実行可能性等を債権者委員会で報告する仕組みになっており、さらに第三者による専門家(アドバイザー)によって検証する【5項(3)2】手続も導入し、債務者自身が再建のための自助努力をすること【1項(3)】を明記しており、これらの手続により過剰支援とならないよう損失負担額の合理性は十分に検証されるものとなっている。

(2) 再建管理等の有無
 本ガイドラインにおいては、再建計画の成立に関しての公表のみならず、成立後定期に開催される債権者会議などにおいて再建計画の実施状況を報告しなければならない【9項(2)】ことを明記しており、再建管理を実施することになっている。また、債権者会議の議長は対象債務者に再建計画の進捗が順調に進んでいるかどうか定期的報告をさせる義務を負っている【Q46】とともに、債務者が債務弁済をできないときは法的倒産処理手続開始の申立て等を義務としており【9項(3)】、支援者全員による監視体制下に置かれている。

(3) 支援者の範囲の相当性
 本ガイドラインは多数の金融機関等が対象債権者として関わることを前提としている【1項(1)・Q4】手続である。具体的には、まず、対象債務者が通常複数の主要債権者に私的整理に関するガイドライン手続の申出を行い、主要債権者は対象債権者の同意見込、再建計画実行可能性について検討した上で、相当と判断した場合に手続は開始となる。なお、対象債権者の範囲は、金融機関債権者であるのが通常であるが、相当と認められるときは、その他の大口債権者なども含まれる【4項(4)】。支援者の範囲は当事者間全員の合意であることから、相当性が担保されている【8項(4)】。

(4) 負担割合(支援割合)の合理性
 本ガイドラインにおいて再建計画案における権利関係の調整は、債権者間で平等であることを旨とし、債権者間の負担割合については、衡平性の観点から、個別に検討する【7項(6)】と定められている。負担割合に関しては個別の事案により異なるが、いずれの事案においても関与度合・取引状況等を考慮の上で、利害の対立する多数の対象債権者との協議を踏まえ、全員の合意により成立する。具体的手続に照らせば、各対象債権者から「再建計画案同意書」の提出を受け、すべての同意書の提出された段階で再建計画が成立することから、負担割合は合理的に決定されている。

3. 整理開始の命令に準ずる事実の該当性

 上記2 . (3)のとおり、本ガイドラインは私的整理を公正かつ迅速に行うための準則であり、多数の金融機関等が対象債権者として関わることを前提としている【1項(1)・Q4】手続である。具体的には、まず、対象債務者が通常複数の主要債権者に私的整理に関するガイドライン手続の申出を行い、主要債権者は対象債権者の同意見込、再建計画実行可能性について検討した上で、相当と判断した場合に手続は開始となる。支援者の範囲は当事者間全員の合意であることが定められている【8項(4)】。
 また、対象債務者となる企業の適格性や再建計画案の内容等については、債権者会議及び債権者委員会で検討されることになるが、第2回債権者会議に先立ち、主要債権者または債権者委員会は、再建計画全般の相当性と実行可能性を、対象債権者に対し書面にて報告し、再建計画は対象債権者全員の同意により成立する。
 さらに、選任された専門家(アドバイザー)により、再建計画案等についての正確性、相当性、実行可能性等の調査が行われ、その結果について報告を受ける仕組みも導入されている。
 したがって、利害の対立する多数の対象債権者全員の同意により成立する再建計画により決定される債務免除については、し意性が排除され、かつ、その内容の合理性も担保されている。

(注) 【 】は参照すべきガイドライン本文ならびにQ&Aの該当部分を示す。

以上