平成24年7月
東京国税局

適正公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的として、査察部に配置されている国税査察官は、厳正な査察調査に基づき、悪質な脱税者に対する刑事責任の追及を行っています。

今般、平成23年度の査察調査の結果がまとまりましたので、その概要を報告します。

1 着手・処理・告発件数、告発率の状況

  • ○ 平成23年度に査察調査に着手した件数は70件でした。
  • ○ 平成23年度以前に着手した査察事案について、平成23年度中に処理(検察庁への告発の要否を最終的に判断)した件数は70件、そのうち検察庁に告発した件数は42件であり、その結果、告発率は60.0%となりました。
年度
項目
平成
19
20 21 22 23
着手件数
77

70

70

62

70
処理件数(A) 77 70 71 70 70
告発件数(B) 55 52 49 50 42
告発率(B/A)
71.4

74.3

69.0

71.4

60.0

平成19年度から平成23年度の査察の着手件数、処理件数、告発件数、告発率を表したグラフ

2 脱税額の状況

  • ○ 平成23年度に処理した査察事案に係る脱税額は、総額で78億円、そのうち告発分は64億円となりました。
  • ○ 告発した事案1件当たりの脱税額は、平均で1億5,200万円でした。
  • ○ 告発した事案のうち、脱税額が3億円以上のものは6件、5億円以上のものは2件でした。

(1) 脱税額の状況

年度
項目
平成
19
20 21 22 23
脱税額 総額 百万円
9,976
百万円
20,028
百万円
15,186
百万円
10,521
百万円
7,809
同上1件当たり 130 286 214 150 112
告発分 8,548 12,484 13,825 9,136 6,379
同上1件当たり 155 240 282 183 152

(注) 脱税額には、加算税額を含む。

○脱税額
平成19年度から平成23年度の税目別の脱税額を表したグラフ
○1件当たりの脱税額
平成19年度から平成23年度に告発した事件1件当たりの脱税額を表したグラフ

(2) 大口事案の推移

年度
項目
平成
19
20 21 22 23
告発件数
55

52

49

50

42
  うち脱税額が3億円以上 7 7 8 5 6
うち脱税額が5億円以上 1 5 4 3 2

(注) 脱税額には、加算税額を含む。

3 税目別告発事案の推移

  • ○ 平成23年度においても、従来どおり、所得税及び法人税等の多税目にわたって積極的に取り組みました。

(1) 税目別の告発件数

年度
区分
平成19 20 21 22 23
件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
所得税
22

40

14

27

15

31

8

16

12

29
法人税 18 33 34 65 27 55 33 66 29 69
相続税 2 4
消費税
内8
12

22
内2
4

8
内1
6

12
内2
7

14
内0
1

2
源泉所得税 3 5 1 2
合計 55 100 52 100 49 100 50 100 42 100

(注) 消費税の内書きは、消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む。)の告発件数である。

(2) 税目別の脱税額

年度
区分
平成19 20 21 22 23
脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合
所得税 百万円
4,310

51
百万円
1,614

13
百万円
3,342

24
百万円
819

9
百万円
2,050

32
法人税 2,370 28 10,445 84 9,477 68 5,107 56 4,230 66
相続税 2,649 29
消費税
内181
1,335

15
内46
425

3
内36
788

6
内52
561

6
内0
99

2
源泉所得税 533 6 218 2
合計 8,548 100 12,484 100 13,825 100 9,136 100 6,379 100

(注)1 脱税額には、加算税額を含む。

(注)2 消費税の内書きは、消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む。)の脱税額である。

4 告発事案の概要

  • ○ 平成23年度に告発した査察事案で多かった業種・取引は、経済社会情勢を反映し、「情報提供サービス」を含むインターネット関連業種の告発が目立ちました。
  • ○ 脱税の手段・方法としては、これまでに引き続き、売上除外や架空の原価・経費の計上がありました。また、食料品輸入売買取引をダミー法人が行ったかのように仮装していたものがありました。
  • ○ 脱税によって得た利益は、現金や預貯金として留保されていたほか、不動産の購入や投資に充てたり、自己の遊興費に費消するなどの例も多く見られました。
  • ○ 脱税によって得た不正資金の隠匿事例としては、ベッド下にベッドカバーで包まれていたビニール袋内に現金を隠していたものなどがありました。

(1) 告発の多かった業種(3者以上)

平成21 22 23
業種 者数 業種 者数 業種 者数
不動産業 7 不動産業 10 情報提供サービス 4
鉱物、金属材料卸 5 人材派遣業 3 食料卸 3
商品・株式取引 4 飲食料品小売業 3 建設業 3
人材派遣業 3 出版・印刷関連業 3
建設業 3

(注) 同一の納税者が複数の税目で告発されている場合は、1者としてカウントしている。

(2) 脱税の手段方法

脱税の手段・方法としては、売上除外や架空の原価・経費の計上のほか、

  • ○ 消費税事案では、課税仕入に該当しない人件費を課税仕入となる外注費に科目仮装していたもの

などがありました。
 また、国際取引を利用した事案として、

  • ○ 食料品輸入売買取引をダミー法人が行ったかのように仮装していたもの
  • ○ 海外の事務所経費名目で、架空の海外業務委託費を計上していたもの

などがありました。

(3) 不正資金の留保状況及び隠匿場所

脱税によって得た不正資金については、

  • ○ 銀行の貸金庫に現金で保管

などで留保されていた事例や、

  • ○ 都心の高級マンションを購入
  • ○ 高級外車を購入
  • ○ 鞄や衣料品などのブランド品を購入
  • ○ ギャンブルなどの遊興に費消

していた事例がありました。
 また、脱税によって得た不正資金の隠匿場所は様々でしたが、

  • ○ ベッド下にベッドカバーで包まれていたビニール袋内(現金)

に隠していた事例がありました。

5 査察調査の状況

  • ○ 平成23年度に着手した査察事案では、1事件当たり、着手日に延べ193名を動員し、59か所を調査しました。
  • ○ 平成23年度に告発した査察事案では、1事件当たり、着手から告発まで7か月の調査期間を要しました。
  • ○ 国際取引が関係した事案にも的確に対応するため、租税条約等の規定に基づく外国税務当局との情報交換に取り組みました。
  • ○ 経済取引等のICT化にも的確に対応するため、デジタルフォレンジック(電磁的記録の証拠保全・解析技術)用機材の整備・活用にも取り組みました。

(1) 動員人数及び調査期間

 平成23年度に着手した査察事案では、1事件当たり、着手日に延べ193名を動員し、59か所を調査しました。
 平成23年度に告発した査察事案では、1事件当たり、着手から告発まで7か月の調査期間を要しました。調査期間が1年を超えた事件は11件あり、このうち最も長いものは約1年7か月でした。

(2) 国際化への対応

 国際取引が関係した事案にも的確に対応するため、平成23年度に処理した事案のうち、8の事件で租税条約等の規定に基づく情報交換を外国税務当局に要請しました。
 また、外国税務当局からの要請により、犯則調査を実施し情報を提供したものもありました。

(3) ICT化への対応

 経済取引等のICT化にも的確に対応するため、平成23年度からデジタルフォレンジック(電磁的記録の証拠保全・解析技術)用機材も整備し、事件への活用に取り組みました。
 平成23年度に処理した事案では、取引の収支を管理していたパソコン内のデータを削除していた事案について、データの復元を実施し、売上金額を解明したものがありました。

6 査察事件の一審判決の状況

  • ○ 平成23年度中に一審判決が言い渡された査察事件は60件であり、その全てが有罪で、実刑判決が4人に出されました。
     実刑判決のうち最も重いものは、懲役2年6月でした。
項目 1 2     3 4 5
年度 判決件数 有罪件数 有罪率
(2/1)
実刑判決人数 1件当たり犯則税額 1人当たり懲役月数 1人(社)当たり罰金額
平成
百万円 百万円
21 48 48 100.0 3 138 14.5 26
22 42 42 100.0 3 116 12.9 28
23 60 60 100.0 4 131 16.9 28

(注) 実刑判決人数及び35は、他の犯罪との併合事件を除いてカウントしている。