明治新政府の税制は、江戸幕府の租税を継承して始まりました。明治4(1871)年の廃藩置県により、各藩独自の租税制度から全国一律の税制体系を作る必要が生じました。そこで、地租改正と雑税整理が行われました。これにより、地租や酒税なども、それぞれ全国一律の税制に改められました。
 明治8(1875)年2月、1500以上の雑税を廃止する雑税整理が行われました。この時期には、国税と地方税の区分を明確にすべきという意見がありました。同年9月には、国税と府県税の名称が設けられました。そして、明治11(1878)年の地方税規則によって、地方税の税目とその用途が規定されました。
 明治2(1869)年設立の大蔵省は、西洋の税制を早くから調査し、新たな近代税制を検討しました。明治6(1873)年、西洋税法導入第1号として印紙税の法律が成立しました。その一方で、大蔵省は日本古来の税制も調査し、『大日本租税志』を編纂しました。

(研究調査員 吉川紗里矢)

【 目次 】

4-1 慶応4(1868)年 租税之章程対策

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 明治新政府は「公議輿論」に基づく政治を標榜し、各藩の代表者から構成される貢士対策所に税制改革などの諮問をしました。この史料は大溝藩からの答申です。

(研究調査員 吉川紗里矢)

4-2 明治5(1872)年 田税新法

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 貢士対策所の後身である公議所の議員、神田孝平が沽券による土地課税制度を提案した「田租改革建議」をまとめなおしたものです。神田は旧幕臣の洋学者で、西洋の法律などを紹介していました。

(研究調査員 吉川紗里矢)

4-3 明治7(1874)年 印紙貼用心得

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 明治6(1873)年、「受取諸証文印紙貼用心得方規則」は西洋の制度を参考にして制定されました。農業者と商工業者の税負担の不均衡を改善する目的がありました。これが印紙税の起源です。翌年、この規則は廃止になり、「証券印税規制」が制定されました。

(研究調査員 吉川紗里矢)

4-4 明治4(1871)年 英国賦税要覧

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 イギリスの租税制度の概説書です。租税の種類や意義など、総論についても解説されています。新しい税制度を確立するために、イギリスだけでなく西洋諸国の税制度についても、翻訳出版されました。

(研究調査員 吉川紗里矢)

4-5 明治8(1875)年 酒類請売営業免許鑑札
 明治13(1880)年 酒類製造営業免許鑑札

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 明治8(1875)年の酒類税則により、酒税は、営業税と醸造税の二本立てに整備されました。それまで非課税だった請売り業者にも営業税が課税されるようになり、酒造業者と同様に免許鑑札の下付を受けることとされました。

(研究調査員 吉川紗里矢)

4-6 明治15(1882) 年 大日本租税志

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 古代から明治13(1880)年までの日本の租税や土地制度などの沿革をまとめたものです。松方正義が日本の税制を整備する際に、外国の税制だけでなく日本古来の税制を調査する必要性を主張し、『大日本租税志』を編纂させました。

(研究調査員 吉川紗里矢)

4-7 明治8(1875)年 大蔵省租税寮の錦絵

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 神田の万世橋に設置された租税寮出張所の錦絵です。租税寮は、明治4(1871)年に租税司の代わりに設置されました。同10(1877)年に租税局に、同17(1884)年には関税局と合併して主税局となりました。

(研究調査員 吉川紗里矢)