令和3年6月
名古屋国税局

査察制度は、悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、その一罰百戒の効果を通じて、適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的としています。
 国税査察官は、近年における経済取引の広域化、国際化及びICT化等による脱税の手段・方法の複雑・巧妙化など、経済社会情勢の変化に的確に対応し、悪質な脱税者に対して厳正な調査を実施しています。

1 査察調査の概要

令和2年度の取組】

○ 検察庁に告発した件数は9件、脱税総額(告発分)は7億2,000万円
 悪質な脱税者に対して厳正な査察調査を実施し、9件を検察庁に告発、告発した査察事案に係る脱税総額は7億2,000万円でした。1件当たりの脱税額は総額分(73百万円)、告発分(80百万円)とも前年度より増加し、告発率は56.3%でした。

○ 消費税の輸出免税制度を悪用した消費税不正受還付事案や無申告ほ脱事案、国際事案を告発
 消費税事案及び国際事案では、中古自転車の輸出販売を偽装し、消費税の輸出免税制度を悪用した消費税不正受還付事案などを告発しました。
 無申告事案では、脱税指南により得た所得に係る法人税及び消費税の申告義務を認識していながら、確定申告を行わず故意に納税を免れていた単純無申告ほ脱事案を告発しました。

【令和2年度中の判決状況】

○ 11件の一審判決全てに有罪判決が言い渡され、1人に実刑判決
 令和2年度中の一審判決11件全てに有罪判決が言い渡され、1人に実刑判決が出されました。

2 重点事案への取組

令和2年度においては、査察制度の目的に鑑み、特に、消費税事案、無申告事案、国際事案、時流に即した事案などの社会的波及効果の高いと見込まれる事案を重点事案として積極的に取り組みました。

(1) 消費税事案

消費税に対する国民の関心が極めて高いことを踏まえ、消費税事案については積極的に取り組み、令和2年度は2件を告発しました。また、消費税の輸出免税制度などを利用した消費税不正受還付事案は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い事案であることから、引き続き積極的に取り組み、令和2年度は1件を告発しました。

年度
平成
28
29 30
令和
2
告発件数




(注)告発件数は、消費税不正受還付事案を含む。

(参考)消費税不正受還付事案の件数及び不正受還付額

年度
平成
28
29 30
令和
2
告発件数




不正受還付額 百万円
百万円
14
百万円
179
百万円
百万円
226

(注)1 告発件数は、ほ脱犯との併合を含む。

2 不正受還付額は、未遂の還付額を含む(加算税を除く)。

(2) 無申告事案

納税者の自発的な申告・納税を前提とする申告納税制度の根幹を揺るがす無申告によるほ脱犯について積極的に取り組み、令和2年度は2件を告発しました。
 また、単純無申告ほ脱犯を適用した事案は2件を告発しました。

年度
平成
28
29 30
令和
2
告発件数 内−      件
内2      件
内1      件
内6      件
内2      件

(注)告発件数欄の内書は、単純無申告ほ脱事案の件数である。

(参考)単純無申告ほ脱犯(故意の申告書不提出によるほ脱犯)の規定は、悪質性の高い無申告に厳正に対処するため、平成23年に創設されました。

(3) 国際事案

経済社会のグローバル化の進展に伴い、個人・企業による国境を越えた経済活動が複雑・多様化する中、国際的な脱税への対応が求められています。
 このような状況の中、消費税の輸出免税制度を悪用した消費税不正受還付事案などの国際事案に積極的に取り組み、令和2年度は3件を告発しました。

年度
平成
28
29 30
令和
2
告発件数





(4) その他の社会的波及効果の高い事案

時流に即した事案などの社会的波及効果が高いと見込まれる事案に対して積極的に取り組みました。

3 査察事件の一審判決の状況

令和2年度中に一審判決が言い渡された件数は11件であり、その全てに有罪判決が出され、実刑判決が1人に出されました。

4 参考計表

(1) 着手・処理・告発件数、告発率の状況

年度
項目
平成
28
29 30
令和
2
着手件数
21 20 20 18 12
処理件数(A) 22 19 21 21 16
  告発件数(B) 14 15 17 17 9
告発率(B/A)
63.6 78.9 81.0 81.0 56.3

(2) 脱税額の状況

年度
項目
平成
28
29 30
令和
2
脱税額 総額 百万円 百万円 百万円 百万円 百万円
1,672 1,178 1,884 1,162 1,165
同上1件当たり 76 62 90 55 73
告発分 1,231 995 1,665 964 720
同上1件当たり 88 66 97 57 80

(注)脱税額には加算税額を含む。

(3) 税目別告発事案の推移

イ 税目別の告発件数

年度
項目
平成
28
29 30
令和
2
所得税
1 2 2 4
法人税 10 7 5 6 7
相続税 1 1
消費税 内1 内2 内3 内− 内1
2 5 6 7 2
源泉所得税 1 3
合計 14 15 17 17 9

(注)消費税の内書は消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)の告発件数である。

ロ 税目別の脱税額

年度
項目
平成
28
29 30
令和
2
所得税 百万円 百万円 百万円 百万円 百万円
90 106 116 258
法人税 789 566 468 365 376
相続税 239 241
           
消費税 113 260 414 341 344
源泉所得税 63 416
合計 1,231 995 1,655 964 720

(注)脱税額には加算税額を含む。

(4) 告発の多かった業種

平成30 令和元 2
業種 者数 業種 者数 業種 者数
人材派遣 3 人材派遣 4 不動産業 5
小売業 2 建設業 3
建設業 2 風俗業 2

(注)同一の納税者が複数の税目で告発されている場合は1者としてカウントしている。

(5) 査察事件の一審判決の状況

項目
年度
判決件数
有罪件数
有罪率(②/①) 実刑判決人数
1件当たり犯則税額
1人当たり懲役月数
1人(社)当たり罰金額
平成
30
百万円 百万円
内− 内−   内−      
12 12 100.0 32 12.5 9
令和
       
14 14 100.0 55 16.6 10
2 内1 内1   内−      
11 11 100.0 1 49 9.6 13

(注)1 表中の内書は他の犯罪との併合事件を示している。

2 ③〜⑤は他の犯罪との併合事件を除いてカウントしている。