平成29年6月
名古屋国税局
査察制度は、悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、その一罰百戒の効果を通じて、適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的としています。
昨今の経済取引の広域化、国際化及びICT化により、脱税の手段・方法が複雑・巧妙化している中で、査察は、経済社会情勢の変化に的確に対応し、悪質な脱税者の告発に努めています。
平成28年度においては、再生可能エネルギー固定価格買取制度の導入により急速に市場が拡大してきた太陽光発電事業者や高齢化社会の到来を背景に身寄りの無い高齢者の生活支援や緊急時対応を行う業者など、近年の経済社会情勢に即した事案を告発するなど積極的に取り組みました。
平成28年度中に一審判決が言い渡された件数は12件であり、全てに有罪判決が出されました。
平成28年度においては、近年の経済情勢に即した社会的波及効果の高い事案に積極的に取り組みました。
再生可能エネルギー固定価格買取制度の導入により、太陽光発電事業の市場が急速に拡大しており、それに伴う取引に係る脱税も増加しています。
A社は、太陽光発電に関するコンサルタントを行う会社ですが、実質経営者が国内外に設立した会社に対して架空の支払手数料を計上する方法により所得を過少に申告して多額の法人税を免れ、不正資金を現金で留保していました。
なお、本事例は国外取引を利用した悪質・巧妙な不正を行っている国際事案であり、国税庁では国際課税への取組を重要な課題と位置付けて積極的に取り組みました。
高齢化社会の到来を背景に、身寄りのない高齢者の生活支援や緊急時の対応支援等を行う家族代行支援のニーズが高まり、それらに伴う取引に係る脱税事件に積極的に取組みました。
B社は、身寄りのない高齢者(会員)の生活支援、身元保証支援、金銭管理支援、葬儀納骨支援及び緊急時の対応支援等の家族代行支援を行う会社ですが、物故会員から遺贈された財産を帳簿に載せていない預金に入金させて除外する方法により所得を過少に申告して多額の法人税を免れ、不正資金を預金で留保していました。
脱税によって得た不正資金の多くは、現金や預貯金、有価証券として留保されていたほか、居宅や高級外車の取得費用などに充てられていた事例もみられました。
また、不正資金の一部が、国外の預金口座で留保されるほか、国外の住宅の取得費用に充てられていた事例や国外の子会社への投資資金としていた事例がありました。
平成28年度中に一審判決が言い渡された件数は12件であり、全てに有罪判決が出され、そのうち実刑判決が2人に出されました。なお、実刑判決は、他の犯罪と併合されたものでした。
○ 消費税受還付事案
○ 無申告ほ脱事案
○ 国際事案
のほか、社会的関心が高く、近年の経済社会情勢に即した分野で、悪質な脱税が伏在する可能性の高い事案など、社会的波及効果が高いと見込まれる事案の積極的な着手・処理に取り組むこととします。年度 | 平成 | |||||
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項目 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | |
着手件数 | 件 | 件 | 件 | 件 | 件 | |
19 | 16 | 20 | 21 | 21 | ||
処理件数(A) | 20 | 20 | 16 | 19 | 22 | |
告発件数(B) | 12 | 14 | 8 | 10 | 14 | |
告発率(B/A) | % | % | % | % | % | |
60.0 | 70.0 | 50.0 | 52.6 | 63.6 |
年度 | 平成 | |||||
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項目 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | |
脱税額 | 総額 | 百万円 | 百万円 | 百万円 | 百万円 | 百万円 |
1,555 | 2,014 | 1,449 | 1,062 | 1,672 | ||
同上1件当たり | 78 | 101 | 91 | 56 | 76 | |
告発分 | 1,216 | 1,819 | 816 | 703 | 1,231 | |
同上1件当たり | 101 | 130 | 102 | 70 | 88 |
(注) 脱税額には加算税額を含む。
年度 | 平成24 | 25 | 26 | 27 | 28 | |||||
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区分 | 件数 | 割合 | 件数 | 割合 | 件数 | 割合 | 件数 | 割合 | 件数 | 割合 |
所得税 | 件 | % | 件 | % | 件 | % | 件 | % | 件 | % |
4 | 33 | 1 | 7 | 1 | 12.5 | 3 | 30 | 1 | 7 | |
法人税 | 6 | 50 | 6 | 42 | 4 | 50 | 4 | 40 | 10 | 72 |
相続税 | 2 | 17 | 1 | 7 | 1 | 12.5 | 1 | 10 | 1 | 7 |
消費税 | 内− | 内2 | 内1 | 内− | 内1 | |||||
− | − | 3 | 22 | 1 | 12.5 | − | − | 2 | 14 | |
源泉所得税 | − | − | 3 | 22 | 1 | 12.5 | 2 | 20 | − | − |
合計 | 12 | 100 | 14 | 100 | 8 | 100 | 10 | 100 | 14 | 100 |
(注) 消費税の内書は消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)の告発件数である。
年度 | 平成24 | 25 | 26 | 27 | 28 | |||||
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区分 | 脱税額 | 割合 | 脱税額 | 割合 | 脱税額 | 割合 | 脱税額 | 割合 | 脱税額 | 割合 |
所得税 | 百万円 | % | 百万円 | % | 百万円 | % | 百万円 | % | 百万円 | % |
421 | 34 | 34 | 2 | 8 | 1 | 264 | 38 | 90 | 7 | |
法人税 | 458 | 38 | 411 | 23 | 470 | 57 | 240 | 34 | 789 | 64 |
相続税 | 337 | 28 | 649 | 36 | 155 | 19 | 101 | 14 | 239 | 20 |
消費税 | 内− | 内117 | 内136 | 内− | 内31 | |||||
− | − | 207 | 11 | 136 | 17 | − | − | 113 | 9 | |
源泉所得税 | − | − | 518 | 28 | 47 | 6 | 98 | 14 | − | − |
合計 | 1,216 | 100 | 1,819 | 100 | 816 | 100 | 703 | 100 | 1,231 | 100 |
平成26 | 27 | 28 | |||
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業種 | 者数 | 業種 | 者数 | 業種 | 者数 |
- | - | 建設業 | 3 | 建設業 | 3 |
- | - | クラブ・バー | 2 | - | - |
(注) 同一の納税者が複数の税目で告発されている場合は1者としてカウントしている。
項目 | ![]() |
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年度 | 判決件数 | 有罪件数 |
有罪率(![]() ![]() |
実刑判決人数 | 1件当たり犯則税額 | 1人当たり懲役月数 | 1人(社)当たり罰金額 |
平成 | 件 | 件 | % | 人 | 百万円 | 月 | 百万円 |
26 | − | − | − | ||||
10 | 10 | 100.0 | − | 108 | 19.6 | 21 | |
27 | 内1 | 内1 | − | ||||
7 | 7 | 100.0 | − | 49 | 18.4 | 18 | |
28 | 内1 | 内1 | 内2 | ||||
12 | 12 | 100.0 | 2 | 35 | 12.3 | 9 |