国税庁は、適正かつ公平な課税を実現するため、限られた人員等をバランスよく配分し、大口・悪質な納税者に対しては組織力を最大限に活かした的確な調査を行う一方で、簡単な誤りの是正などは簡易な接触を組み合わせて行うなど、効果的・効率的な事務運営を心掛けています。
特に不正に税金の負担を逃れようとする納税者に対しては、様々な角度から情報の分析を行い、調査対象を選定し、厳正な調査を実施することとしています。
具体的には、KSKシステムを活用して、データベースに蓄積された所得税や法人税の申告内容や各種資料情報などを基に、業種・業態・事業規模といった観点から分析して、調査対象を選定しています。
なお、資料情報については、適正・公平な課税を実現するために必要不可欠なものであることから、活用効果の高い資料情報を効率的に収集するための体制を整備しています。
税務調査は、納税者の申告内容を帳簿などで確認し、申告内容に誤りがあれば是正を求めるものです。特に悪質な納税者に対する税務調査には日数を十分かけるなど重点的に取り組んでいます。
実地調査で把握した1件当たりの申告漏れ所得金額は、平成24事務年度においては、申告所得税は839万円1、法人税は1,071万円となっています。
注釈
高額な所得が見込まれるが申告額が過少であったり、そもそも申告を行っていない者などについては、資産運用の多様化・国際化も念頭に置いた上で調査等に取り組んでいます。
消費税は、主要な税目の一つであり、預り金的性格を有するため、国民の関心が極めて高く、一層の適正な執行が求められています。特に、消費税について虚偽の申告により不正に還付金を得ようとするケースも見受けられるため、還付の原因となる事実関係について十分な審査を行うとともに、還付原因が不明な場合には、調査等により接触し、不正還付防止に努めています。
平成23年度税制改正において、国税通則法の一部が改正され、調査手続の透明性と納税者の予見可能性を高めるなどの観点から、調査手続について従来の運用上の取扱いが法令上明確化され、平成25年1月から施行されています。
国税庁では、国税に関する納税者の利益の保護を図るとともに、税務行政の適正な運営を確保する観点から、国税通則法に定められた調査手続を適正に履行していきます。
税務行政に対する信頼を確保するためには、課税が正しい事実認定の下、適切な法令解釈あるいは法令の適用がなされていることが重要です。
このため、あらゆる事案において、常に、納税者の主張を正確に把握し、的確な事実認定に基づいて十分に法令面の検討を行った上で、適正な課税処理を行うよう努めています。その際、確実に法令要件が満たされているかなどを確認するための手続・手順の遵守を徹底しています。
国税庁では、税法などの規定により提出が義務付けられている給与所得の源泉徴収票や配当等の支払調書などの法定調書のほか、調査などの際に把握した裏取引や偽装取引に関する情報など、あらゆる機会を通じて様々な資料情報の収集を行い、的確な調査・指導に活用しています。
また、近年の経済取引の国際化、高度情報化等の進展や不正形態の変化に常に着目し、新たな資産運用手法や取引形態に関する資料情報を積極的に収集しており、海外投資や海外企業との取引に関する情報、インターネットを利用した電子商取引などの資料情報の収集に取り組んでいます。
査察制度は、悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、その一罰百戒の効果を通じて、適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的としています。その目的を達成するため、一般の税務調査とは別に、偽りその他不正の行為により故意に税を免れた納税者に、正しい税を課すほか、強制的権限を行使するなど犯罪捜査に準ずる方法で調査を行い、その結果に基づき検察官に告発し、公訴の提起を求めます。
昨今の経済取引の広域化、国際化及びICT化により、脱税の手段・方法が複雑・巧妙化している中で、国税査察官は、経済社会情勢の変化に的確に対応し、悪質な脱税者の摘発に全力を挙げています。
平成25年度においては、185件の査察調査に着手する一方で、前年度から引き続き査察調査を行っていた事件も含めて185件を処理し、そのうち118件を検察官に告発しました。脱税総額は145億円、告発事件1件当たりの脱税額は9,900万円となっています。
脱税の手口としては、売上除外や架空の原価・経費の計上が多く見られたほか、顧客から受領した飲食代金に係る消費税について、申告書を一切提出しない方法で不正に納付を免れていた事例もありました。また、脱税で得た資金は、現金や預貯金、有価証券で留保されていたほか、高級外車や別荘の購入、海外のカジノで遊興し費消していたものもありました。
着手件数 | 処理件数 | 告発件数 | 脱税総額(うち告発分) | 1件当たり脱税額(うち告発分) | |
---|---|---|---|---|---|
件 | 件 | 件 | 百万円 | 百万円 | |
平成24年度 | 190 | 191 | 129 | 20,479 (17,466) |
107 (135) |
平成25年度 | 185 | 185 | 118 | 14,458 (11,731) |
78 (99) |
※ 脱税額には、加算税を含みます。
平成25年度中に一審判決が言い渡された事件は116件で、うち115件の事件について有罪判決が出されました。平均の懲役月数は12.9か月、罰金額は1,200万円となっています。また、実刑判決は9人に出されました。実刑判決は昭和55年以降毎年言い渡されています。
判決件数 |
有罪件数 |
有罪率 / |
実刑判決人数 |
1件当たり犯則税額 |
1人当たり懲役月数 |
1人(社)当たり罰金額 |
|
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件 | 件 | % | 人 | 百万円 | 月 | 百万円 | |
平成24年度 | 120 | 119 | 99.2 | 3 | 76 | 13.0 | 16 |
平成25年度 | 116 | 115 | 99.1 | 9 | 52 | 12.9 | 12 |
※ 〜は、他の犯罪との併合事件を除いてカウントしています。
我が国全体の申告水準の維持・向上の観点から、大企業の税務コンプライアンスの維持・向上は大変重要です。大きな組織を有する大企業の税務コンプライアンスの維持・向上のためには、組織の第一線まで税務に関する認識が高まるようコーポレートガバナンスの充実が効果的です。
このため、国税庁としては、大規模法人の調査の機会に、税務に関するコーポレートガバナンスの状況を確認し、経営責任者等と意見交換を行い効果的な取組事例を紹介するなど、その充実に向けた自発的な取組を促進しているところです。
また、税務に関するコーポレートガバナンスの状況が良好と認められた法人については、税務リスクの高い取引の自主開示を受けその適正処理を確認するという事前の信頼関係を構築した上で、次回調査までの間隔を延長し、より調査必要度の高い法人へ調査事務量を重点的に配分するなど税務行政の効率化を進めていきます。
国税庁は、個人の所得情報など、様々な情報を保有していますが、その情報が簡単に漏れるようでは、納税者の国税庁への協力は期待できなくなり、円滑な調査・徴収に支障が生じかねません。
このため、税務職員が税務調査などで知った秘密を漏らした場合には、国家公務員法上の刑事罰(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)よりも重い税法上の刑事罰(2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)が科されることとなっています。こうした罰則規定の趣旨を徹底するため、定期的に職員に対する情報セキュリティに関する研修を行っています。また、調査などに際し、お話を伺う場所についても、プライバシーに配慮し、店舗先や玄関先はなるべく避けるようにしています。
また、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」の趣旨などを踏まえ、行政文書の管理状況を定期的に点検するなどにより、国税庁の保有する納税者情報を厳正に管理するよう努めています。
適正な申告や納税を確保するため、期限内に正しい申告や納税をしていない場合には、本来納付すべき国税のほかに延滞税がかかる場合があります。さらに、過少申告加算税、無申告加算税又は重加算税がかかる場合があります。
延滞税 | 納期限の翌日から2か月を経過する日まで | 年2.9%(特例基準割合※+1.0%) |
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納期限の翌日から2か月を経過した日以後 | 年9.2%(特例基準割合※+7.3%) |
※ 「特例基準割合」とは、各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合をいいます。
加算税 | 通常の場合 | 仮装隠蔽があった場合 | |
---|---|---|---|
期限内に申告したが税額が少なかった場合 | 過少申告加算税 (10%又は15%) |
重加算税(35%) | |
期限内の申告がない場合 | 無申告加算税 (15%又は20%) |
重加算税(40%) |
なお、納税者の責めに帰すべき事由のない、正当な理由があると認められる場合は、過少申告加算税や無申告加算税は課されません。
また、災害による納税の猶予を受けた場合、国税職員の誤った申告指導などによって納税者が申告又は納付することができなかった場合など一定の要件に該当する場合には、延滞税の全部又は一部が免除されます。国税庁では、こうした加算税などが課されない場合の取扱いを定め、国税庁ホームページで公表しています。