(1) 自主納付態勢の確立

 申告された国税は、国庫に納付されて初めて歳入となります。平成19年度は、税務署に申告された国税などの課税額(徴収決定済額)約52兆5,400億円に対し、年度内に納められた税金は約52兆1,700億円であり、その収納割合は99.3%でした。
 国税は、納税者が自ら申告し、その税額を自ら期限までに納付する申告納税制度を原則としています。このため、うっかり期限を過ぎてしまうことがないよう広報に努めるほか、継続的に申告・納付を行う申告所得税や個人事業者の消費税については、預貯金口座からの振替納税が利用できることを案内しています。更に、平成16年からは、e-Taxによって自宅やオフィスでの国税の納付が可能となり、平成20年1月からは、コンビニでの納付を開始しました。現在では、新たな納付手段として、ダイレクト納付1の実現に向けて取り組んでおり、納税者サービスの更なる向上を図っています。
 また、前回、期限を過ぎて納付した納税者には、あらかじめ文書で期限内納付を呼び掛けたり、うっかり期限を過ぎてしまった納税者に、督促状を発付する前に電話で連絡して納付を促すなど、滞納の未然防止を図っています。  

注釈

  • 1 ダイレクト納付とは、事前に税務署等に届出をすることで、e-Taxと金融機関のシステムを介して、届出した預貯金口座から即時に納税が完了す る電子納税の新たな納付手段です。
     現在、平成21年9月からの導入に向けて取り組んでいます。

[国税のコンビニ納付の実施]

 国税のコンビニ納付については、平成20年1月21日から国税庁長官が指定する納付受託者(コンビニエンスストア)の店舗において取扱いを開始しています。
 このコンビニ納付の導入により、納税者は、金融機関や税務署の窓口が開いていない夜間や休日においても、4万箇所を超えるコンビニエンスストア店舗で納付手続が可能となりました。平成20年1月から12月までのコンビニ納付件数は、約85万件であり、1件当たりの平均利用金額は約3万6,000円となっています。休日の利用割合は約20%、税務署の開庁時間以外の時間帯における利用割合が約30%であり、早朝や夜間においても利用されています。
 なお、コンビニ納付を利用するためには、バーコード付納付書が必要であり、納付金額が30万円以下で、次のような場合に所轄の国税局・税務署で発行します。

  1. 1 確定した税額を期限前に通知する場合(所得税の予定納税など)
  2. 2 督促・催告を行う場合(全税目)
  3. 3 賦課課税方式による場合(各種加算税)
  4. 4 確定した税額について納税者から納付書の発行依頼があった場合(全税目)

(2) 滞納圧縮への取組

 滞納とは、国税が納期限までに納付されず、督促状が発付されたものをいい、平成19年度末時点の滞納税額は約1兆6,151億円となっています。
 国税庁では、まず滞納が発生しないようにすることが重要であると考えており、滞納の未然防止や早期徴収を図るため、国税組織全体として税の徴収に取り組んでいます。
 更に、滞納を放置することは、期限内に国税の納付を行っている大多数の納税者との間に不公平をもたらし、適正・公平な徴収が実現しないこととなるため、基本となる3つの取組方針の下、滞納残高の圧縮に取り組んでいます。

  1. イ 消費税滞納の優先処理
     預り金的性格を有し、国民の関心が高い消費税滞納については、滞納全体に占める割合が年々高まっており、国税局・税務署を通じて優先的に滞納整理を行っています。
  2. ロ 大口、悪質・処理困難事案の重点的処理
     大口、悪質・処理困難事案については、早期かつ確実に処理方針を見極めた上で、厳正・的確な滞納整理を実施しています。
     特に、悪質・処理困難事案については、累積・長期滞納事案を含め、適切な財産調査、差押え・公売などの滞納処分を実施するほか、プロジェクトチームの編成など組織的な滞納整理を行うとともに、詐害行為取消訴訟1等の原告訴訟を提起するなど法的手段を活用した滞納整理を積極的に実施するよう努めています。
     また、財産の隠ぺいなどにより国税の徴収を免れようとする悪質な滞納者に対しては、滞納処分免脱罪2の告発を行うなど、特に厳正に対処しています。
  3. ハ 少額滞納事案の効率的処理
     少額滞納事案については、集中電話催告センター室(納税コールセンター)で集中して電話催告を行うなどにより効果的・効率的な処理を行っています。

 このような取組の結果、平成19年度における全税目の整理済額は、9,517億円3となりました。しかしながら、滞納は依然として高水準にあることから、大口、悪質・処理困難事案及び消費税滞納事案に重点的に取り組むとともに、少額滞納事案に対しては、効果的・効率的な処理を行うことにより、滞納の整理促進を図っていきます。
 なお、滞納処分の執行は、納税者の権利・義務に特に強い影響を及ぼすことから、滞納整理に当たっては、事実関係を正確に把握した上で、差押え、公売等の滞納処分を行う一方、納税の猶予、換価の猶予等の納税緩和措置を講じるなど、滞納者個々の実情を踏まえつつ、法令等に基づき適切に対応しています。

注釈

  1. 1 詐害行為取消訴訟とは、滞納者と第三者との間における債権者(国)を害する法律行為(詐害行為)の効力を否定して、滞納者から離脱した財産をその第三者から取り戻して滞納者に復帰させるための訴訟をいいます(国税通則法第42条、民法第424条参照)。
  2. 2 滞納処分免脱罪(国税徴収法第187条)とは、差押えなどの滞納処分を免れる目的で、財産の隠ぺいなどを行った納税者などに対する罰則(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)をいいます。
  3. 3 徴収職員1人当たりの整理済額は約2.2億円です。
全税目の滞納整理中のものの額の推移のグラフ
消費税の滞納整理中のものの額の推移のグラフ
消費税の占める割合の推移のグラフ

(3) 集中電話催告センター室

 集中電話催告センター室(納税コールセンター)では、滞納者に対してコンピュータシステムが自動的に電話をかけ、職員が、端末機画面に表示された滞納者情報を参照しながら、効果的・効率的に納付の催告を行っています。
 なお、平成19年7月から平成20年6月までの1年間で、催告対象約81万者のうち、約54万者(66.5%)が完納し、9万者(11.0%)が分納中となっています。  

集中電話催告センター室の対応整理状況のグラフ

(4) インターネット公売

 インターネット公売は、民間のオークションサイトを利用することにより、公売の参加者が公売会場に出向く必要がなく、公売の期間中24時間インターネット上で買受申込みをすることができます。国税庁では平成19年6月から実施しています。
 このインターネット公売は、利便性が高く、より多くの公売の参加者を募ることができるため、差し押さえた財産の高価・有利な売却に役立っています。
 平成20年度は、4回のインターネット公売を実施した結果、延べ約11千人の方が参加され、絵画、貴金属、自動車、不動産など約500物件が、約2億円で売却されています。

(5) 的確かつ効率的な債権債務の管理

 納税申告や還付申告によって、国税の債権債務の管理業務が大量に発生します。この債権債務を、的確かつ効率的に管理するため、昭和41年からシステム化を図ってきましたが、平成13年にKSKシステムが全国の税務署に導入され、現在は統一されたシステムで債権債務を管理しています。
 また、税金の納付については、所得税を中心に年間約4,500万件あり、その大半が金融機関の窓口や口座振替で行われています。この大量に発生する納付を効率的に処理するため、日本銀行による納付書のOCR処理1など、金融機関や日本銀行との連携によって合理化を図るとともに、所得税と個人事業者の消費税について振替納税2を導入して事務作業の合理化を図っています。還付金の支払いについても、各税務署から書面で振込処理を行っていましたが、平成13年に振込処理を集中化して、磁気テープによりペーパーレスでの処理に移行し、平成18年9月からは、更にオンライン化することにより、効率的かつ迅速な処理を進めています。
 国税債権債務の管理は、課税と徴収の要となるものです。今後とも、システムの高度活用により、迅速かつ的確な処理を行い、納税者に対する還付金の早期還付を図るなど、サービス向上を図っていきます。

注釈

  1. 1 「OCR処理(光学式文字認識処理)」とは、納付書に記載された文字を電子データに変換することをいい、これによりペーパーレス化を図ることができます。
  2. 2 振替納税は、納税者があらかじめ指定した金融機関に、税務署から納付書を送付して預金口座から引き落として納付するという方法によって行われます。納付書を大量に金融機関に送付する必要がある場合には、この事務を効率的に行うため、金融機関に口座振替のためのデータを記録した磁気テープを送付し、金融機関において口座振替の処理を行うとともに、送付した磁気テープにその結果を記録して返却してもらうという処理を行います。