5. 経営相談の実施内容

経営相談は基盤強化事業の項目別に実施内容、効果、問題点、実施しない理由等を把握した上で、対応の方向を助言する。本書に記す対応の方向は、事例調査の結果からまとめたものであるが、これらに加え担当する相談員の知識・知見に基づく助言が行われることが望ましい。

(1) 人材育成及び人事・組織管理事業
1 事業の実施状況
実施した研修テーマ、内容、参加者等を把握する。
 給与体系改革、組織体系革は、計画策定手順、実施スケジュール、進捗などを把握する。
2 事業の効果(定性・定量の両面から把握することに努める)
研修の結果、「社員の意識が向上した」、「コストに対する意識が高まった。」等があるが、「生産性が向上した(従業員一人当たり売上高が増加した)」、「管理コストが低下した(一般管理費率の低下)」等も効果の候補となる。
3 事業推進上の問題点
  • 研修を実施する上で問題となった点、改善すべきであった点を把握する。
  • 人事・組織管理の見直しを行う上での問題点を把握する。
4 事業を実施しなかった理由
実施しなかった場合はその理由を把握する。「必要なかった」、「効果がないと考えた」という返答が想定できるが、どうして必要がないと判断したのかを把握する。例えば、「すでに実施済みであった」、「○○の数値で比較するとすでに改善された状態にあった」など。「業務が多忙で研修の時間がない」場合は研修がどのような実施形態なら可能なのか等も把握する。
5 対応の方向
1) 人材養成体系の整理とマスタープランの作成
個々の酒類卸売業者は、自社の経営戦略に基づき従業員にはどのような能力が必要か、また将来的にどのような能力を身につけて成長させるかというプランを持つ必要がある。
このようなプランは、詳細な部分は個々の企業ごとに作成する必要があるが、酒類卸売業という業種にとって必要な能力・知識は共通のものである。したがって、業界全体で酒類卸売業にとって必要となる業務と、その業務を遂行するために必要な能力を職位別に整理し、個々の酒類卸売業者は自社の事業戦略に照らし合わせて必要な業務を選択できるようにすることが望ましい。
 具体的には、卸売業者に必要な機能はメーカーサポート、リテールサポート、ロジスティクスの3つに区分できる。そして、それぞれの分野で必要な能力・知識があり、整理するとのようになる。
なお、自社でプログラム作成が困難な場合は、外部専門家等の活用が有効であると考える。
図表 2 卸売業が果たしている機能
項目 内容
1.メーカーサポート (1)メーカーサポート・マネジメント
(2)商品開発支援
    NBの企画開発支援
(3)メーカーの販売支援
  1. 1販売先の開拓・維持
  2. 2各種情報の提供
  3. 3メーカープロモーションなど
  4. 4マーチャンダイジングに関する支援
(4)メーカーの経営支援
  1. 1各種情報システムの設計・運営に関する支援
  2. 2人材教育・セミナーなどのサポート
2.リテールサポート (1)リテールサポート・マネジメント
(2)商品調達支援
  1. 1商品調達(仕入先開拓等)
  2. 2PB商品の生産・企画・開発(委託を含む)
(3)小売業の販売支援
  1. 1品揃えやプロモーションなど
  2. 2マーチャンダイジングに関する支援
  3. 3各種情報の提供
  4. 4荷受・検品・補充・品出しなどの付随業務
  5. 5店舗設計・店内レイアウトの提案
  6. 6陳列什器の斡旋・供給
(4)小売業の経営支援
  1. 1経営戦略など経営上の相談・指導
  2. 2人材教育・セミナー等の支援
  3. 3各種情報システムの設計・運営に関する支援
3.ロジスティクス (1)ロジスティクス・マネジメント
(2)物流
  1. 1メーカー物流の代替・支援
  2. 2小売業物流の代替・支援
  3. 3自社の物流
(3)センター開設・運営
  1. 1センター開設
  2. 2センター運営
2) 経営指標の活用支援
組織管理事業を実施する場合、人事制度を変更する場合は昇格・昇給の基準としてどのような目標をどのような水準に設定するかが重要となる。厳しい目標とすると、かえって職員のモチベーションの低下や能力向上の機会を奪う恐れもあるからである。給与制度の考え方、人事考査の方法等は専門のコンサルタント等が豊富な事例を有しているためその活用が有効である。一方で自社の経営への影響は、粗利益率、一般管理費率、経常利益率等の経営指標で把握する必要がある。このような経営指標に関しては、国税庁が実施している酒類卸売業実態調査等の指標と比較し、自社の位置を相対的に把握したうえで判断することも必要となる。
(2) 得意先強化事業
1 事業の実施状況
得意先強化事業に関しては、「経営基盤強化計画推進のための得意先強化の「考え方」と「手引き」」(平成16年4月:全国酒類卸売業協同組合。以下、「得意先強化の手引き」)という。がある。これに沿ったものかどうか、このような考え方を理解した上で実施できているか、が理解できているかどうか、等を確認しながら把握する。
  • 得意先別の自社の販売金額を把握し重点となる得意先の選別・グループ化を行っているか。(例えば「得意先強化の手引き」のP26〜P28の調査カードの利用:巻末参照)
  • 得意先をグループ化しているか。(維持拡大、見直し、攻略、状況対応育成等)
  • グループ別に研究会、連鎖化の研修等を実施しているか。
  • 個別の取引先に対し、店舗のコンセプトの明確化、店舗改善、品揃え、販売促進等の分野でどのような提案を行っているか。
2 事業の効果(定性・定量の両面から把握することに努める)
例えば定性的な評価としては「社員の意識が向上した」、「取引先との一体感が形成された」、「取引先の経営が積極的になった」等がある。定量的効果としては「取引先に占める自社のシェアが高まった」、「取引先の業績が改善した」、「自社の業績が改善した」等の具体的な指標が考えられる。
3 事業推進上の問題点
得意先強化事業を実施する上で問題となった点、阻害要因、改善すべきであった点を把握する。得意先に関するものと自社に関するものに区分する。
4 事業を実施しなかった理由
得意先強化事業を実施していない場合はその理由を把握する。「必要なかった」、「効果がないと考えた」という返答が想定できるが、どうして必要がないと判断したのか等を把握する。例えば、「すでに実施済みであった」、「○○の数値で比較するとすでに改善された状態にあった」、「社内に人材がいなかった」、「方法が不明であった」等である。また、「必要ない」、「効果がない」と考えた際に、同業他社、異業種の事例等を十分理解した上でそのような結論に至ったかどうかを確認する必要もある。
5 対応の方向
事業の必要性が理解された場合は、以下の内容の指導・支援を行う。その際、「得意先強化の手引き」の活用を検討する。
1) 売上ABC分析等の実施による得意先の実態把握と貢献度評価
得意先の実態を把握し、各得意先が自社にどれくらいの売上及び利益貢献があるか把握する。その重要性を考慮した上で、リテールサポートを実施する。
得意先別貢献度を把握する方法としては、1売上、2原価、3粗利益、4直接労務費、5直接配送費、6限界利益、7作業時間、8距離、9効率、10順位、等の項目からなる効率分析表等を作ることが有効である。さらに債権保全のための、信用調査機関を活用したり、登記簿を閲覧したりするなど、得意先のおかれた状況を的確に把握する必要がある。
2) 得意先に真に必要とされるリテールサポートの実施
人材やコスト面等の制約から、行き届いたリテールサポートができない場合、その内容を絞って真に必要とされる取組みから実施していく。例えば、1支援を強化すれば取引額が増加すると思われる店、2支援を続けても取引額の増加が見込めない店、3近く廃業が見込まれる店、といったように店舗を分類し、分類ごとに支援策を定めて実施することが重要である。さらには21に引き上げる努力等も併せて、行わなければならない。
具体的なリテールサポートの内容としては、商圏を超えて営業活動を行っている小売業者の事例紹介等市場情報のさらなる提供や、得意先小売業が他業態と差別化できる対応の指導・サポートが考えられる。後者については、例えばクリンリネスへの配慮や缶ビール1本でもにこやかな対応をする等である。さらに酒類以外の品揃えの強化に関しても、積極的にその可能性を検討するところまで含まれる。
 また、リテールサポートの実施方法としては個別の課題に随時対応する方法もあるが、得意先を対象にした研究会・勉強会を定期的に実施し、取引先企業との関係を強化する方法も検討したい。

図表 3 リテールサポートの体系

A.商品調達支援
  • 商品調達(仕入先開拓等)
  • PB商品の生産・企画・開発(委託を含む)
B.小売業の販売支援
  • 品揃えやプロモーションなどマーチャンダイジングに関する支援
  • 各種情報(商品情報、カテゴリー情報、商圏情報等)の提供
  • 荷受・検品・補充・品出しなどの付随業務
  • 店舗設計・店内レイアウトの提案
  • 陳列什器の斡旋・供給
C.小売業の経営支援
  • 経営戦略など経営上の相談・指導
  • 人材教育・セミナー等の支援
  • 各種情報システムの設計・運営に関する支援
3) リテールサポート実施体制の整備
効果的なリテールサポートができるよう、社内の体制を整備する必要がある。
 まず、リテールサポートが必要であるという意識を社内に植え付けるため、現状(例えば特定ビールメーカーの特約店であるなど)に対する危機感を社内で共有し、社長自ら取組む姿勢を見せる等が必要である。そのうえで、実際に実施する営業担当者のルーチンワーク等の負担を軽減し、リテールサポートに注力できるような組織的なバックアップ体制を整える。社内メールや携帯電話等のツールは積極的に活用し、社内における情報共有のレベルを上げることも効果がある。
さらに、リテールサポートのためには棚割り(プラノグラム)作成、チラシ作成、POPやエンド作成など、個別サポート内容のノウハウを習得する必要があるが、加えて、販売士資格の取得等の営業担当者の能力が不可欠である。国・県・市町村レベルで各種の中小企業支援策が用意されており、企業側の費用負担なしで専門家の支援が受けられるようになっているため、こうした外部資源も有効活用を図りたい。
(3) 新商品開発・販売戦略事業
1 事業の実施状況
酒類等の販売情報をどのように収集しているのか、POSデータ(入手先:取引先小売業、メーカー、コンサル)、消費統計(家計調査、商業販売統計など)、その分析活用方法(指数化、グラフ化、定期的な分析など)を把握する。
 利益商材の発掘・開発・研究については、商品別に利益率が把握できているか、そのうえでどのように商品の発掘、研究、試作、テストマーケティング、商品化、拡販を実施したのかを把握する(酒類以外の商材についても同様)。
 ネットワーク利用の売れ筋情報提供については、提供範囲、情報の内容、利用条件などを明らかにする。
 連鎖化、共同マーケティングは具体的内容を明確にする。
 リベート供与基準整備については、対象卸の具体的基準を把握するとともにその決定根拠(自社のコスト構造から設定したのか、競争環境やこれまでの状況から設定したのか等)を把握する。また、基準どおり運用できているかを確認する。
 利益管理システムについては、システムの内容と活用状況を明確にする。
2 事業の効果(定性・定量の両面から把握することに努める)
販売情報の提供であれば、「取引先の評価」、「社内の業務の改善」、「品揃えへの影響」等の定量面に加え、「価格変更」やその結果の「売上増」、「利益増」まで考えられる。
 リベート供与基準の整備については、「取引先の評価」、「自社の評価」等に加え、「実際のリベート率の変化」、「利益率の変化」等を把握する。
3 事業推進上の問題点
各事業を実施する上で問題となった点、改善すべきであった点を把握する。
4 事業を実施しなかった理由
実施しなかった場合はその理由を把握する。「必要なかった」、「効果がないと考えた」という返答が想定できるが、どうして必要がないと判断したのかを把握する。例えば「すでに実施済みであった」、「○○の数値で比較するとすでに改善された状態にあった」等である。また「実施したいができなかった」が理由であれば資金、人材等経営資源の問題なのか、知識等の問題なのかまで把握する。
5 対応の方向
事業の重要性が認識された場合、以下の内容の指導・支援を行う。
1) 新商品の開発・発掘
新商品開発の目的の一つは、酒類ディスカウンターや大手量販店との差別化である。これらの店のマーチャンダイジングを理解し、取り扱っていない商品を発掘する必要がある。また、消費者にどのような商品が望まれているか、消費者ニーズを収集・把握することも重要である。例えばPOSデータ、特売データ、顧客データに加え、家計調査等の統計資料等も活用する必要がある。
 また、新商品の開発・発掘に際しては自社のみでは限界があるため、同業他社、得意先、酒類メーカー、さらには地元商工業団体や行政との連携を積極的に図っていく。なお、得意先等の他社と共同で商品開発することは売れなかった場合のリスクを小さくする効果もある。
 さらに、NHKの大河ドラマ等に関連した商品開発・販売等、ブームの活用や酒だけでなく、地域産品等の食品組み合わせたオリジナルギフト商材の開発等も考えられる。
2) 販売数量の確保
新商品が利益をもたらすためには一定の数量が販売できることが必要である。小売業者が行う、新商品に関する試飲会の開催やDMの展開や、店頭におけるプロモーション(POP、エンド、マネキン販売等)に対し、サポートするとともに、現在の商圏では限界がある場合は観光物産施設における拡販、ネット販売の活用等を検討する。特に売れ筋情報の収集・発信にはIT活用が最適であるため、ホームページやメーリングリスト等を今以上に活用するための研究プロジェクトを立ち上げる。
3) 自社の戦略・体制の整備
このような新商品開発を行うに当たっては、自社の戦略における新商品開発・販売戦略事業の位置づけを明確にするとともに、必要な体制の整備を行わなければならない。
4) 支払リベートの再設計
支払リベートの認定基準としては、a.売上貢献度 b.利益貢献度 c.業務貢献度等を考慮することが必要である。そのためには取引先別のコストがどうなっているか等の実態把握を検討したい。リベートは取引の機微に触れるものなので他社の正確な状況は把握しづらいため、業界団体等が中心となった実態把握を行うことも考えられる。
(4) 情報ネットワークの基盤整備・活用促進事業
1 事業の実施状況
情報ネットワークの基盤整備・活用促進事業に関しては、「経営基盤強化計画(情報ネットワーク基盤整備・活用促進事業)情報ネットワーク研究導入促進」(平成16年12月:全国酒類卸売業協同組合)がある。このような考え方を理解した上で実施できているかどうか等を確認しながら把握する。具体的には、
  • 得意先に対する啓発の内容
  • 販売管理、利益管理、情報分析等システムの研究、活用等の内容
  • メーカーの商品データベース支援の内容
  • 自社のホームページでの情報提供内容
などである。
2 事業の効果(定性・定量の両面から把握することに努める)
得意先への情報ネットワークの啓発であれば、「得意先の評価」、「自社の評価」に加え、「EDIによるコスト低下」、「発注精度の向上」等を定量的に把握する。
 商品データベース整備については、「販売実績の把握が可能になった」等がある。また、ホームページであれば、「アクセス数」などが考えられる。
3 事業推進上の問題点
事業を実施する上で問題となった点、改善すべきであった点を把握する。
4 事業を実施しなかった理由
実施しなかった場合はその理由を把握する。「必要なかった」、「効果がないと考えた」という返答が想定できるが、どうしてそのように判断したのかを把握する。例えば、「すでに実施済みであった」、「○○の数値で比較するとすでに改善された状態にあった」などが考えられる。情報ネットワークを進める上で、社内・社外にスキルを有する人材がいるかどうかにも留意する。
5 対応の方向
情報活用分野では、その必要性が理解されていないケースが多いため、まず、情報活用のメリットを説明する。
社内情報化であれば取引先別の利益管理の意義、在庫管理の効率化、与信管理の適正化等である。また、情報発信であれば発信のためのコスト、発信できる範囲の広さ等になろう。
 情報活用の必要性が理解された場合、以下の指導・支援を行う。
1) 社内情報化の推進
他社で活用されている汎用プログラム、システムベンダーの情報を把握して紹介する。
2) 情報発信
誰に何を発信するのかという目的を明確にした上で、発信する情報の深さと広さ、更新頻度等を他社の事例を踏まえてアドバイスする。
 技術的な面に関しては、自社で更新作業等を行う場合は、担当する従業員に対する指導、教育プログラムの紹介を行う。アウトソーシングする場合には必要に応じて委託先候補のリストアップまで行う。
(5) 物流業務の合理化事業
1 事業の実施状況
物流業務の合理化事業に関しては、「物流効率化マニュアル 管理レベルチェックリスト・物流管理指標」(平成15年3月:中小企業庁・中小企業総合事業団)がある。基盤強化事業の実施に当り同マニュアルが活用されているかどうか等を確認しながら把握する。
  • 受注締め時間の設定、徹底できているか、繰り上げできているか。
  • 入荷、保管、ピッキング、出荷システムをどのように検討、導入してきたか
  • ピッキング時間の測定結果と短縮するための方法をどのようにしたか。
  • 在庫管理では、適正在庫の算出方法、デッドストック削減方法、倉庫内のアドレス管理方法、デジタルピッキング実施内容など。
  • 配送については、回転数・積載率向上手法、共同配送の実施状況など。
2 事業の効果
定量的な成果と定性的な成果に区分して把握する。
物流業務の効率化は定量的な効果の把握が行いやすいため、極力定量的な指標を把握する。
例えば、「受注締め時間の変化」、「締め時間が守られている割合」、「ピッキング時間の変化」、「在庫量の変化」、「回転日数の変化」、「配送車両の回転数の変化」、「積載率の変化」等である。
3 事業推進上の問題点
事業を実施する上で問題となった点、改善すべきであった点を把握する。
4 事業を実施しなかった理由
実施しなかった場合はその理由を把握する。「必要なかった」、「効果がないと考えた」という返答が想定できるが、どうして必要がないと判断したのかを把握する。この場合も「○○の数値で比較するとすでに改善された状態にあった」等の定量的な判断を確認する。
5 対応の方向
物流業務の合理化を進める場合、以下の内容で指導・支援を行う。
1) 小売業者の理解
物流業務の合理化を行うと、取引先小売業者へのサービスレベルが低下する可能性がある。例えば受注を前々日及び1週間毎に変更する等である。このようなサービスレベルが低下する場合は、それによるコスト削減効果を説明するなど、物流合理化を行うことに対する小売業者からの理解を得る必要がある。
2) メーカーに対する正当な対価の請求
メーカーからの月末の押込み販売等に関しては、これにより在庫量が膨らみ、保管料等が上昇する可能性があるため、要したコストを把握し、正当に請求することを考えたい。
3) 物流業務に関する管理指標の整備
入庫・保管・出庫・配送・物流情報等の物流業務に関する管理指標を整備し、その活用を図ることが必要である(図表 4)。
 例えば在庫管理に関しては、目標回転日数や目標在庫金額等を設置する。
 中小企業庁・中小企業総合事業団が策定した「物流効率化マニュアル 管理レベルチェックリスト・物流管理指標」(平成15年3月)では、物流管理指標として、6分野・21指標を掲げられているが、物流業務の高度化を図る際、こうした資料を参考にすることも極めて有用である。
4) 在庫削減及び在庫管理精度向上
在庫削減及び在庫管理精度を向上するためには、以下のような事項を実施する必要がある。
  • 月次での棚卸を実行する。
  • 商品ごとの売上高、粗利益高によるABC分析を行う。
  • 先入れ・先出しの徹底を図る。
  • 商品の入出庫時には、必ず伝票発行(本伝票または仮伝票)を厳守させる。
5) 共同配送
共同配送によって、物流コストを削減できる可能性がある。同業他社、他業種企業との共同配送の可能性について検討する必要がある。
 異なる企業が配送を共同で行うことになるので、秘密保持や情報管理等の問題が生じやすいが、具体的な秘密保持規定やその運用、情報管理の方法等を他の事例等をもとに研究することによって解決に近づくことができる。
 
図表4 物流管理指標の枠組み
管理指標 指標
1.入庫業務に関わる管理指標 指標1 入荷仮置き場に残留していた商品数
2.保管業務に関わる管理指標 指標2 商品が決まった場所に見つからなかった件数
指標3 商品を損傷した件数
指標4 先入れ先出しによる不適切な商品配置の件数
3.流通加工・出庫業務に関わる管理指標 指標5 検品時のエラー発見件数
指標6 出荷エラーに関わるクレーム件数
指標7 予定時刻に出発できなかったトラック便数
指標8 作業者1人当り注文行数
指標9 1時間当たりピッキング行数
指標10 1時間あたり梱包数
4. 配送業務に関わる管理指標 指標11 主な便の積込み所要時間
指標12 各納品先の納品所要時間
指標13 配車に関わる事務処理時間
指標14 配送状況問い合せへの対応所要時間
5. 物流情報に関わる管理指標 指標15 商品入荷登録の所要時間
指標16 在庫差異件数
指標17 専用伝票の使用を求められている取引先数
6. 環境負荷の低減に関わる管理指標 指標18 トラックの走行1km当りCO2排出量
指標19 トラックの総走行距離
指標20 走行1時間当りアイドリングストップ回数
指標21 梱包資材の使用量