ぶどう酒

平成29年6月26日変更

1 酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項

(1) 酒類の特性について

イ 官能的要素

山梨ワインは、甲州やマスカット・ベーリーAなどの山梨で古くから栽培されているぶどうや、ヨーロッパを原産とするヴィニフェラ種など、様々なぶどう品種について、山梨の自然環境に根付くよう品種選抜や栽培方法等の工夫を行ってきたことにより、ぶどう本来の香りや味わいといった品種特性がよく現れたバランスの良いワインである。
 その中でも甲州を原料としたワインは、香り豊かで口中で穏やかな味わいを感じることができ、またドライなワインはフルーティーな柑橘系の香りとはつらつとした酸味を有する。
 また、マスカット・ベーリーAを原料としたワインは、鮮やかな赤紫色の色調を有し、甘さを連想させる華やかな香りとタンニンによる穏やかな渋味を有する。

さらに、ヴィニフェラ種を原料とした白ワインは、やや穏やかな酸味とよく熟したヴィニフェラ種特有の果実の香りを有し、口に含むとボリューム感に富んでいる。ヴィニフェラ種を原料とした赤ワインは、しっかりとした色調を有し、タンニンによるボディの強さとふくよかさのバランスが良い。

ロ 化学的要素

山梨ワインは、アルコール分、総亜硫酸値、揮発酸値及び総酸値が次の要件を満たすものをいい、発泡性を有するものも含む。

  • (イ) アルコール分は8.5%以上20.0%未満。ただし、補糖したものは上限値を15.0%未満とし、甘口のもの(残糖分が45g/L以上のものをいう。以下同じ。)は下限値を4.5%以上とする。
  • (ロ) 総亜硫酸値は250mg/L以下(甘口のものを除く。)。
  • (ハ) 揮発酸値は赤ワインで1.2g/L以下。白ワイン及びロゼワインで1.08g/L以下。
  • (ニ) 総酸値は3.5g/L以上。

(2) 酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられることについて

イ 自然的要因

山梨県は、西側の県境を走る赤石山脈系の高山群と、南側の県境から北東に伸びる富士火山系の高山群に囲まれた山間地である。海洋の影響が少ないため、梅雨や台風の影響を受けにくく、盆地特有の気候として、日中は気温が上昇するが、朝夕は大きく気温が低下するため、1日の気温差が大きい。
 この自然環境により、ぶどうの成育期においては、梅雨による多湿の影響が少なく、成熟期においても台風等による風害や日照不足を原因とする病害が発生しにくいため、ぶどうの栽培に適しており、ぶどうの着色や糖度などの品質全体に良い影響を与えている。ぶどう栽培地は、主として富士川の支流流域に沿って広がっている。多くのぶどう栽培地は、花こう岩及び安山岩の崩壊土から成る、土層が深く肥沃で排水も良好な緩傾斜にある。このような好条件を有するため、ぶどうは健全でよく熟し、品種特性がよく維持されたバランスの良いワインとなる。

ロ 人的要因

山梨ワインの生産は、1870年頃から始まったといわれている。当時は、栽培されたぶどうのほとんどが生食用として消費されており、その余剰によりワインの生産が行われていた。ぶどうの栽培量が増加しても、ワインに加工し販売することができたため、農家は過剰生産を恐れずにぶどう栽培に取り組むことができ、ぶどう栽培技術の創意や改善が重ねられていった。これに合わせて、ワインの製造量も増加し、醸造技術も蓄積されていくなどの好循環が生まれ、地域の経済発展を担ってきた。
 このようなワイン産業に対しては、明治時代より、政府や山梨県庁、市町村が法的整備や資金支援、品種改良に関する研究開発など様々な支援を行ってきた。現在は、県の機関として山梨県工業技術センターの中にワインセンター、山梨県果樹試験場の中に醸造用ぶどう栽培部門が設置されており、ぶどう栽培やワイン醸造の研究開発のみならず、山梨のワイン製造者に対する技術指導・支援を行っており、高品質な山梨ワインを生産する技術的基盤になっている。また、山梨大学には1947年に発酵研究所(現ワイン科学研究センター)が設置されるなど、更なる研究開発や人材育成に注力している。
 日本のぶどう産地はヨーロッパのぶどう産地に比べれば降雨量が多く、山梨県もぶどうの栽培期間中に雨の影響を受けるが、山梨県のワイン事業者は、垣根栽培のぶどうに傘をかけたり、雨の跳ね返りを防ぐため垣根の高い位置でぶどうを育てるなど、様々な工夫により、品質の高いぶどう栽培を根付かせてきた。
 山梨ワインは、魚介類の食事とワインを合わせた際に生臭みの原因となる物質を発生させる鉄分の量が海外で生産されるワインと比べ総じて少ない。これは、山梨県は海洋に面していない地域でありながら、寿司屋が多いなど魚介類の消費を好む傾向があり、このような地域の人々の嗜好に合うよう、ワインの製造工程で工夫が重ねられた結果であるといえる。山梨ワインは和食等の魚介類を材料に用いた食事と相性が良く、山梨県の人々にとって、ワインが身近な飲み物として定着してきた一つの要因といえる。

2 酒類の原料及び製法に関する事項

地理的表示「山梨」を使用するためには、次の事項を満たしている必要がある。

(1) 原料

イ 果実に山梨県で収穫されたぶどう(次に掲げる品種に限る。)のみを用いたものであること。
 甲州、マスカット・ベーリーA、ブラック・クイーン、ベーリー・アリカントA、デラウェア、交配品種(甲斐ノワール、甲斐ブラン、サンセミヨン、アルモノワール、ビジュノワール、モンドブリエ)、ヴィニフェラ種(シャルドネ、セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ブラン、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、カベルネ・フラン、ピノ・ノワール、プティ・ヴェルド、シュナン・ブラン、ピノ・グリ、ヴィオニエ、シェンブルガー、リースリング、ゲヴュルツトラミナー、ミュスカデ、サンソー、テンプラニーリョ、マルベック、タナ、アルバリーニョ、サンジョベーゼ、ネッビオーロ、バルベーラ、ピノ・ムニエ、ジンファンデル、ツバイゲルトレーベ、グルナッシュ、カルメネール、プティ・マンサン)

ロ 酒税法第3条第13号に規定する「果実酒」の原料を用いたものであること。ただし、同法第3条第13号ニの果実酒に用いる香味料については、ぶどうの果汁又はぶどうの濃縮果汁(いずれも山梨県で収穫されたぶどうのみを原料としたものに限る。)であって、当該加える香味料に含有される糖類の重量が当該香味料を加えた後の果実酒の重量の100分の10を超えないものに限り用いることができる。

ハ 果汁糖度が、甲州種は14.0%以上、ヴィニフェラ種は18.0%以上、その他の品種は16.0%以上であるぶどうを用いること。ただし、ぶどう栽培期間の天候が不順であった場合には、当該ぶどう栽培期間を含む暦年内に収穫されたぶどうに限り、それぞれの必要果汁糖度を1.0%下げることができる。
 なお、酒税法第3条第13号ハに規定する製造方法により製造するもののうち、他の容器に移し替えることなく移出することを予定した容器及び密閉できる容器等で発酵させることにより発泡性を有することとするものに用いるぶどうについては、甲州種は11.0%以上、ヴィニフェラ種は15.0%以上、その他の品種は13.0%以上であるぶどうを用いることができる。

ニ 原料として水、アルコール及びスピリッツを使用していないこと。ブランデーについては、他の容器に移し替えることなく移出することを予定した容器で発酵させたものに、発酵後、当該容器に加える場合に限り使用すること。

(2) 製法

イ 酒税法第3条第13号に規定する「果実酒」の製造方法により山梨県内において製造されたものであり、「果実酒等の製法品質表示基準(平成27年10月国税庁告示第18号)」第1項第3号に規定する「日本ワイン」であること。

ロ 酒税法第3条第13号ロ又はハに規定する製造方法により、糖類(酒税法第3条第13号ハの果実酒に用いる糖類のうち、他の容器に移し替えることなく移出することを予定した容器及び密閉できる容器等で発酵させることにより発泡性を有することとするものに用いる糖類を除く。)を加える場合は、その加える糖類の重量が、果実に用いたぶどうの品種ごとに、それぞれ次の範囲内であること。

  • ・ 甲州種を100%用いたもの 100ml当たり10g
  • ・ ヴィニフェラ種を85%以上用いたもの 100ml当たり6g
  • ・ その他のもの 100ml当たり8g

ハ ぶどうの収穫からワインの瓶詰を行うまでの補酸の総量が9g/L以下であること。

ニ 除酸剤については、総酸値を5g/L低減させるまで加えることができること。

ホ 製造工程上、貯蔵する場合は山梨県内で行うこと。

ヘ 消費者に引き渡すことを予定した容器に山梨県内で詰めること。

3 酒類の特性を維持するための管理に関する事項

(1) 地理的表示「山梨」を使用するためには、当該使用する酒類を酒類の製造場(酒税法(昭和28年法律第6号)第28条第6項又は第28条の3第4項の規定により酒類の製造免許を受けた製造場とみなされた場所を含む。)から移出(酒税法第28条第1項の規定の適用を受けるものを除く。)するまでに、当該使用する酒類が「酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項」及び「酒類の原料及び製法に関する事項」を満たしていることについて、次の団体(以下「管理機関」という。)により、当該管理機関が作成する業務実施要領に基づく確認を受ける必要がある。

管理機関の名称:地理的表示「山梨」管理委員会

住所:山梨県甲府市東光寺3−13−25地場産業センター2階
 山梨県ワイン酒造組合内

電話番号:055-233-7306

ウェブサイトアドレス:www.wine.or.jp

(2) 管理機関は、業務実施要領に基づき、ぶどう栽培期間の天候が不順であったと認める場合には、直ちにその旨を公表する。

4 酒類の品目に関する事項

果実酒

清酒

令和3年4月28日指定

1 酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項

(1)酒類の特性について

 山梨の清酒は総じて柔らかで、透明感のある清らかな味わいを有する酒である。
 酒が口元に近づくと、果実を連想させる香りが優しく立ち上がり、口に含むとその香りが口中に広がる。あわせて徐々に穀物を想起させるうま味やコクがほどよく舌全体に広がり、柔らかで、透明感のある清らかな味わいをもたらす。
 このような柔らかで清らかな味わいの酒には塩気を感じさせる料理がマッチし、酒と食が綺麗に交わり、より味わい深く楽しめることができる。

(2)酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられることについて

イ 自然的要因
 山梨県は、富士山、南アルプス、八ヶ岳、奥秩父など2,000mから3,000m級の山々に囲まれ、県土の約78%を森林が占めている。この山々に囲まれる甲府盆地においても平均標高が300m程度と比較的高く、周囲の山々も含めると高低差も大きい。
 高い山が海からの湿った風を遮り、一年を通して雨や雪が少ないため日照時間が長く、夏は最高気温が30℃を超えることがありとても暑い日がある一方、冬は最低気温が氷点下になる日もある、いわゆる「底冷え」のする気候である。
 また、富士山を始めとする高い山々に降る雨や雪は、森林を潤しながら長い年月をかけて、山麓の下層にある花崗岩、玄武岩、安山岩等の地層によって自然にろ過されることによりミネラル成分を適度に含んだ伏流水となり、複数の水系を形成する。それぞれが豊かで良質な水を生み出し水系によって微妙に成分が異なるものの、総じて軽やかさを持つ軟水である。
 この軟水を仕込み水として使用し、あわせて醸造期である冬の底冷えもあって発酵が穏やかに進むことにより、雑味が少なくほどよい香りとうま味を有す、柔らかで透明感のある清らかな味わいの酒がこの地に成り立った。

ロ 人的要因
 海に面しない山梨県は、塩や海産物などの産物を隣接する静岡県や神奈川県等に頼っており、保存の効く塩物や干物に加工した上で山梨県まで輸送していたものも多くあった。また、戦国時代にこの地を支配した武田信玄は味噌の製造を奨励していたといわれており、麦麹と米麹による合わせ味噌であることを特徴とする甲州味噌は、代表的な郷土料理「ほうとう」以外にも多くの料理に使用されている。これらのことから、山梨県民の間で塩気を感じさせる料理を好む味覚が形成されてきたと考えられる。
 また、山梨県は江戸幕府直轄の地として、軍事上、あるいは物流上重要であった五街道の一つ「甲州街道」を有し発展してきた。加えて、江戸時代には富士山への信仰登山や日蓮宗の総本山久遠寺がある身延山への参拝が流行した。夏は暑く冬は寒く、また甲州街道に至っては笹子峠の前後におよそ800mの高低差もあり、このような厳しい気候のもと高低差が続く街道を旅した人々には、塩気を感じさせる料理が大変美味しく感じられたものと考えられる。
 こうした料理とともに飲用されてきたのが山梨の酒であった。少なくとも1796年(寛政8年)には、県内に村造り酒屋、町造り酒屋及び宿場造り酒屋との3形態の造り酒屋があったとの記録もある。このような歴史的な背景から、塩気を感じさせる料理にマッチし綺麗に交わる、柔らかで清らかな味わいを持つ酒造りが発達したものと考えられる。

2 酒類の原料及び製法に関する事項

(1)原料

イ 米及び米こうじに国内産米(農産物検査法(昭和26年法律第144号)により3等以上に格付けされたもの又はこれに相当するものに限る。)のみを用いたものであること。

ロ 水に山梨県内で採取した水であって、南アルプス山麓、八ヶ岳山麓、秩父山麓、富士北麓、富士・御坂及び御坂北麓のいずれかの水系の水のみを用いたものであること。

ハ 酒税法(昭和28年法律第6号)第3条第7号に規定する「清酒」の原料を用いたものであること。ただし、酒税法施行令(昭和37年政令第97号)第2条に規定する清酒の原料のうち、アルコール(原料中、アルコールの重量が米(こうじ米を含む。)の重量の100分の10を超えない量で用いる場合に限る。)以外は用いることができないものとする。

(2)製法

イ 酒税法第3条第7号に規定する清酒の製造方法により、山梨県内において製造されたものであること。

ロ 酒造工程上、貯蔵する場合は山梨県内で行うこと。

ハ 消費者に引き渡すことを予定した容器に山梨県内で詰めること。

3 酒類の特性を維持するための管理に関する事項

(1) 地理的表示「山梨」を使用するためには、当該使用する酒類を酒類の製造場(酒税法第28条第6項又は第28条の3第4項の規定により酒類の製造免許を受けた製造場とみなされた場所を含む。)から移出(酒税法第28条第1項の規定の適用を受けるものを除く。)するまでに、当該使用する酒類が「酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項」及び「酒類の原料及び製法に関する事項」を満たしていることについて、次の団体(以下「管理機関」という。)により、当該管理機関が作成する業務実施要領に基づく確認を受ける必要がある。

管理機関の名称:山梨県酒造協同組合
     住所:山梨県甲府市国母4−15−5
     電話番号:055−224−4368
     ウェブサイトアドレス:www.yamanashi-sake.jp

(2) 「酒類の原料及び製法に関する事項」の(1)ロに定める水については、管理機関が業務実施要領により、採取する際の条件等について明確に定義した上で、(1)による確認を行うこと。

(3) (1)による確認を受けた酒類であって、酒類の容器又は包装に地理的表示であることを明らかにする表示と併せて、原料として米及び米こうじに山梨県内で生産した米のみを用い、水に山梨県内の特定の水系で採取された水のみを用い、かつアルコールを用いていない旨を表す別図の表示を行う場合は、業務実施要領に基づき表示することとする。

 別図

山梨の酒

4 酒類の品目に関する事項

 清酒