【答え】

2.木材を河川に流して輸送することに課された税

【解説】

 流木税は、山奥の森林地帯で伐採された木材を河川を利用して輸送することに課された税です。
 内務省地方局発行の『地方税総覧』によると、昭和11(1936)年の段階で北海道や和歌山県など8道県で課税されていました。流木税は地域によって名称が異なり、流木税(北海道)、木流税(青森)、流材税(富山)、木材川下税(岐阜、三重、和歌山)、筏税(高知)、木材川流税(宮崎)と様々な名称となっていました。
 これら流木税が課税された地域は、どこも林業が盛んな地域でしたが、当時の税額で首位であった和歌山県の流木税収入は、二位の北海道と大きく差をつけていました。
 課税標準は木の大きさ、あるいは、木材の種類などと地域の特色が出ていました。中でも
 和歌山県では、流す川や材木の産地によっても税額が細かく決められており、県内各地で木材の輸送が盛んだったことがわかります。
 河川を用いた木材輸送の歴史は古く、平安時代以前より木材の輸送手段として材木を組んで筏にし、下流に流して運ぶことが行われていました。これらの方法は「木流し」や「筏流し」と呼ばれ、全国各地の河川で行われました。
 昭和中期頃まで林業は非常に大きな産業で、山間部に住む人々の収入源となっていました。ちなみに、この筏に乗って下流まで木材を輸送する職業は「筏乗」、「筏師」と呼ばれ、彼らにも「筏乗税(いかだのりぜい)」という税金が課されていた地域もありました。
 海まで運ばれた木材は海運によって輸送され、各地に出荷されました。こうして輸送された木材が都市部へと運ばれ、建材などに用いられてきました。また各地の港湾地区には、木材を浮かべておく貯木場がたくさんありました。
 河川を利用した木材の輸送は、ダム建設による河川の分断や鉄道などの近代交通機関の発展によって衰退し、現在は観光用を除いてほとんど見ることができません。

(研究調査員 菅沼明弘)