第1節 共通的事項

(一の調査)

4-1

  • (1) 調査は、納税義務者について税目と課税期間によって特定される納税義務に関してなされるものであるから、別段の定めがある場合を除き、当該納税義務に係る調査を一の調査として法第74条の9から法第74条の11までの各条の規定が適用されることに留意する。

    (注) 例えば、令和元年分から令和3年分までの所得税について実地の調査を行った場合において、調査の結果、令和3年分の所得税についてのみ更正決定等をすべきと認めるときには、令和元年分及び令和2年分の所得税については更正決定等をすべきと認められない旨を通知することに留意する。

  • (2) 次に掲げる国税の納税義務はそれぞれ別個に成立するものであるから、次に掲げる国税の調査はそれぞれ別の調査として、法第74条の9から法第74条の11までの各条の規定が適用されることに留意する。
    イ 源泉徴収に係る所得税とこれ以外の所得税
    ロ 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税とこれ以外の法人税
    ハ 特定基準法人税額に対する地方法人税とこれ以外の地方法人税
  • (3) 同一の納税義務者に納付方法の異なる複数の印紙税の納税義務がある場合には、それぞれの納付方法によって特定される納税義務に関してなされる調査について、法第74条の9から法第74条の11までの各条の規定が適用されることに留意する。
  • (4) 同一課税期間の各事業年度の所得に対する法人税の調査について、移転価格調査とそれ以外の部分の調査に区分する場合において、納税義務者の事前の同意があるときは、納税義務者の負担軽減の観点から、一の納税義務に関してなされる一の調査を複数に区分して、法第74条の9から法第74条の11までの各条の規定を適用することができることに留意する。

(「課税期間」の意義等)

4-2

  • (1) 4-1において、「課税期間」とは、法第2条第9号《定義》に規定する「課税期間」をいうのであるが、具体的には、次のとおりとなることに留意する。
    • イ 所得税については、暦年。ただし、年の中途で死亡した者又は出国をする者に係る所得税については、その年1月1日からその死亡又は出国の日までの期間。
    • ロ 法人税(各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税を除く。)については、事業年度。ただし、中間申告分については、法人税法第71条第1項第1号《中間申告》に規定する中間期間。
    • ハ 法人税(各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税に限る。)については、法人税法第15条の2《対象会計年度の意義》に規定する対象会計年度。
    • ニ 贈与税については、暦年。ただし、年の中途で死亡した者に係る贈与税については、その年1月1日からその死亡の日までの期間。
    • ホ 個人事業者に係る消費税(消費税法第47条《引取りに係る課税貨物についての課税標準額及び税額の申告等》に該当するものを除く。)については、暦年。また、法人に係る消費税(同条に該当するものを除く。)については、事業年度。ただし、同法第19条《課税期間》に規定する課税期間の特例制度を適用する場合には、当該特例期間。
    • ヘ 酒税(酒税法第30条の2第2項《移出に係る酒類についての課税標準及び税額の申告》及び同法第30条の3《引取りに係る酒類についての課税標準及び税額の申告等》に該当するものを除く。)、たばこ税・たばこ特別税(たばこ税法第18条《引取りに係る製造たばこについての課税標準及び税額の申告等》に該当するものを除く。)、揮発油税・地方揮発油税(揮発油税法第11条《引取りに係る揮発油についての課税標準及び税額の申告等》に該当するものを除く。)、石油ガス税(石油ガス税法第17条《引取りに係る課税石油ガスについての課税標準及び税額の申告等》に該当するものを除く。)、石油石炭税(石油石炭税法第14条《引取りに係る原油等についての課税標準及び税額の申告等》に該当するものを除く。)、印紙税(印紙税法第11条《書式表示による申告及び納付の特例》の規定の適用を受けるものに限る。)、航空機燃料税又は電源開発促進税については、その月の1日から末日までの間。
    • ト 印紙税(印紙税法第12条《預貯金通帳等に係る申告及び納付等の特例》の規定の適用を受けるものに限る。)については、4月1日から翌年3月31日までの期間。
  • (2) 法第74条の9から法第74条の11までの各条の規定の適用に当たっては、課税期間のない国税については、それぞれ次のとおりとする。
    • イ 相続税については、一の被相続人からの相続又は遺贈(死因贈与を含む。)を一の課税期間として取り扱う。
    • ロ 酒税(酒税法第30条の2第2項《移出に係る酒類についての課税標準及び税額の申告》に該当するものに限る。)については、同項各号に該当した時を一の課税期間として取り扱う。
    • ハ 源泉徴収等による国税については、同一の法定納期限となる源泉徴収等による国税を一の課税期間として取り扱う。
    • ニ 印紙税(印紙税法第11条《書式表示による申告及び納付の特例》及び同法第12条《預貯金通帳等に係る申告及び納付等の特例》の規定の適用を受けるものを除く。)については、調査の対象となる期間を4月1日から翌年3月31日までの期間で区分した各期間(当該区分により1年に満たない期間が生じるときは、当該期間)を一の課税期間として取り扱う。
    • ホ 消費税(消費税法第47条《引取りに係る課税貨物についての課税標準額及び税額の申告等》に該当するものに限る。)、酒税(酒税法第30条の3《引取りに係る酒類についての課税標準及び税額の申告等》に該当するものに限る。)、たばこ税・たばこ特別税(たばこ税法第18条《引取りに係る製造たばこについての課税標準及び税額の申告等》に該当するものに限る。)、揮発油税・地方揮発油税(揮発油税法第11条《引取りに係る揮発油についての課税標準及び税額の申告等》に該当するものに限る。)、石油ガス税(石油ガス税法第17条《引取りに係る課税石油ガスについての課税標準及び税額の申告等》に該当するものに限る。)、石油石炭税(石油石炭税法第14条《引取りに係る原油等についての課税標準及び税額の申告等》に該当するものに限る。)又は国際観光旅客税(国際観光旅客税法第18条《国際観光旅客等による納付》に該当するものに限る。)については、それぞれ各条に該当するときの属する時を一の課税期間として取り扱う。

(「調査」に該当しない行為【1-2の再掲】)

4-3 当該職員が行う行為であって、次に掲げる行為のように、特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する目的で行う行為に至らないものは、調査には該当しないことに留意する。また、これらの行為のみに起因して修正申告書若しくは期限後申告書の提出又は源泉徴収等による国税の自主納付があった場合には、当該修正申告書等の提出等は更正若しくは決定又は納税の告知があるべきことを予知してなされたものには当たらないことに留意する。

  • (1) 提出された納税申告書の自発的な見直しを要請する行為で、次に掲げるもの。
    • イ 提出された納税申告書に法令により添付すべきものとされている書類が添付されていない場合において、納税義務者に対して当該書類の自発的な提出を要請する行為。
    • ロ 当該職員が保有している情報又は提出された納税申告書の検算その他の形式的な審査の結果に照らして、提出された納税申告書に計算誤り、転記誤り又は記載漏れ等があるのではないかと思料される場合において、納税義務者に対して自発的な見直しを要請した上で、必要に応じて修正申告書又は更正の請求書の自発的な提出を要請する行為。
  • (2) 提出された納税申告書の記載事項の審査の結果に照らして、当該記載事項につき税法の適用誤りがあるのではないかと思料される場合において、納税義務者に対して、適用誤りの有無を確認するために必要な基礎的情報の自発的な提供を要請した上で、必要に応じて修正申告書又は更正の請求書の自発的な提出を要請する行為。
  • (3) 納税申告書の提出がないため納税申告書の提出義務の有無を確認する必要がある場合において、当該義務があるのではないかと思料される者に対して、当該義務の有無を確認するために必要な基礎的情報(事業活動の有無等)の自発的な提供を要請した上で、必要に応じて納税申告書の自発的な提出を要請する行為。
  • (4) 当該職員が保有している情報又は提出された所得税徴収高計算書の記載事項の確認の結果に照らして、源泉徴収税額の納税額に過不足徴収額があるのではないかと思料される場合において、納税義務者に対して源泉徴収税額の自主納付等を要請する行為。
  • (5) 源泉徴収に係る所得税に関して源泉徴収義務の有無を確認する必要がある場合において、当該義務があるのではないかと思料される者に対して、当該義務の有無を確認するために必要な基礎的情報(源泉徴収の対象となる所得の支払の有無)の自発的な提供を要請した上で、必要に応じて源泉徴収税額の自主納付を要請する行為。

(「実地の調査」の意義)

4-4 法第74条の9及び法第74条の11に規定する「実地の調査」とは、国税の調査のうち、当該職員が納税義務者の支配・管理する場所(事業所等)等に臨場して質問検査等を行うものをいう。

(通知等の相手方)

4-5 法第74条の9から法第74条の11までの各条に規定する納税義務者に対する通知、説明、勧奨又は交付(以下、4-5において「通知等」という。)の各手続の相手方は法第74条の9第3項第1号に規定する「納税義務者」(法人の場合は代表者)となることに留意する。
 ただし、納税義務者に対して通知等を行うことが困難な事情等がある場合には、権限委任の範囲を確認した上で、当該納税義務者が未成年者の場合にはその法定代理人、法人の場合にはその役員若しくは経理に関する事務の上席の責任者又は源泉徴収事務の責任者等、一定の業務執行の権限委任を受けている者を通じて当該納税義務者に通知等を行うこととしても差し支えないことに留意する。