直審(資)22(例規)
直資 68(例規)
昭和39年5月23日

( 一部改正
昭57.5.17直資2−177外
)

国税局長 殿

国税庁長官 木村秀弘

標題のことに関し、下記のように定めるとともに相続税法基本通達(昭和34年1月28日直資10)の一部を改正したから、今後処理するものから、これにより取り扱われたい。

(趣旨)贈与が行われたことの事実の認識については、贈与の性質及び贈与が多く親族間等の特別関係がある者相互間で行われることが多いことなどから、かなりの困難を伴うことが多い。このため、不動産の所有権移転登記などの財産の名義変更が行われた場合において対価の支払がないとき、又は他人名義により財産の取得が行われた場合においては、一般的には、名義人となった者が当該財産又はその取得資金を贈与により取得したものと推定することに取り扱うこととしている。
 しかし、財産の名義変更又は他人名義による財産の取得が行われた場合においても、それが贈与の意思に基づくものでなく、他のやむを得ない理由に基づいて行われる場合又はこれらの行為が権利者の錯誤に基づいて行われた場合等においては、その例外となることはいうまでもない。ただ、その名義変更又は他人名義による財産の取得が果たしてそのような事由に該当して行われたものであるかどうかの判断については、これを確認するに足りる客観的な事実の申出又は証拠の提供が不可能な場合が多く、かなり困難を伴うことである。
 そこで、財産の名義変更又は他人名義による財産の取得があった場合においてこれらの行為が贈与の意思に基づかないで、又は錯誤により行われたかどうかの判断については、財産の権利者の表示を明らかにすることも併せ考え、財産の名義人とその権利者とを一致させることによることとするとともに、贈与契約の取消し等があった場合の取扱いを定めたものである。

(他人名義により不動産、船舶等を取得した場合で贈与としない場合)

1 他人名義により、不動産、船舶又は自動車の取得、建築又は建造の登記又は登録をしたため、相続税法基本通達9-9に該当して贈与があったとされるときにおいても、その名義人となった者について次の(1)及び(2)の事実が認められるときは、これらの財産に係る最初の贈与税の申告若しくは決定又は更正(これらの財産の価額がその計算の基礎に算入されている課税価格又は税額の更正を除く。)の日前にこれらの財産の名義を取得又は建築若しくは建造した者(以下「取得者等」という。)の名義としたときに限り、これらの財産については、贈与がなかったものとして取り扱う。(昭57直資2-177改正)

(1) これらの財産の名義人となった者(その者が未成年者である場合には、その法定代理人を含む。)がその名義人となっている事実を知らなかったこと。(その知らないことが名義人となった者が外国旅行中であったこと又はその登記済証若しくは登録済証を保有していないこと等当時の情況等から確認できる場合に限る。)

(2) 名義人となった者がこれらの財産を使用収益していないこと。

(他人名義により有価証券を取得した場合で贈与としない場合)

2 他人名義による有価証券の取得の株主名簿への登載等をしたため相続税法基本通達9-9に該当して贈与があったとされるときにおいても、名義人となった者について、次の(1)及び(2)の事実が認められるときは、当該有価証券に係る最初の贈与税の申告若しくは決定又は更正(当該有価証券の価額がその計算の基礎に算入されている課税価格又は税額の更正を除く。)の日前に当該有価証券の名義をその取得者の名義としたときに限り、当該有価証券については、贈与がなかったものとして取り扱う。(昭57直資2-177改正)

(1) 「1」の(1)の事実

(2) 名義人となった者がその有価証券を管理運用し、又はその収益を享受していないこと。

(他人名義により取得した財産の処分代金等を取得者の名義とした場合の取扱い)

3 「1」の(1)及び(2)又は「2」の(1)及び(2)の場合に該当する場合において、他人名義により取得、建築又は建造の登記、登録又は登載等をした不動産、船舶、自動車又は有価証券がこれらの財産に係る最初の贈与税の申告若しくは決定又は更正(これらの財産の価額がその計算の基礎に算入されている課税価格又は税額の更正を除く。)の日前に災害等により滅失し、又は処分されたこと等のため、これらの財産の名義を取得者等の名義とすることができないときは、当該取得者等がその保険金、損害賠償金又は処分に係る譲渡代金等(以下「保険金等」という。)を取得し、かつ、その取得していることが当該保険金等により取得した財産をその者の名義としたこと等により確認できる場合に限り、これらの財産については、「1」又は「2」に該当するものとして取り扱う。

(他人の名義による財産の取得等に関する取扱いを熟知している者の不適用)

4 「1」から「3」までの取扱いは、「1」又は「2」に定める取得者等がこれらの取扱いを利用して贈与税のほ脱を図ろうとしていると認められる場合には適用がないものとし、原則として当該取得者等が既に「1」又は「2」の取扱いの適用を受けている場合又は受けていると認められる場合には、適用しないものとする。

(過誤等により取得財産を他人名義とした場合等の取扱い)

5 「1」又は「2」に該当しない場合においても、他人名義により不動産、船舶、自動車又は有価証券の取得、建築又は建造の登記、登録又は登載等をしたことが過誤に基づき、又は軽率にされたものであり、かつ、それが取得者等の年齢その他により確認できるときは、これらの財産に係る最初の贈与税の申告若しくは決定又は更正(これらの財産の価額がその計算の基礎に算入されている課税価格又は税額の更正を除く。)の日前にこれらの財産の名義を取得者等の名義とした場合に限り、これらの財産については、贈与がなかったものとして取り扱う。
 自己の有していた不動産、船舶、自動車又は有価証券の名義を他の者の名義に名義変更の登記、登録又は登載をした場合において、それが過誤に基づき、又は軽率に行われた場合においても、また同様とする。
 「3」の取扱いは、これらの場合について準用する。(昭57直資2-177改正)

(法令等により取得者等の名義とすることができないため他人名義とした場合等の取扱い)

6 他人名義により不動産、船舶、自動車又は有価証券の取得、建築又は建造の登記、登録又は登載が行われたことが法令に基づく所有の制限その他のこれに準ずる真にやむを得ない理由に基づいて行われたものである場合においては、その名義人になった者との合意により名義を借用したものであり、かつ、その事実が確認できる場合に限り、これらの財産については、贈与がなかったものとして取り扱うことができる。
 自己の有していた不動産、船舶、自動車又は有価証券について、法令に基づく所有の制限その他これに準ずる真にやむを得ない理由が生じたため、他の名義人となる者との合意によりその名義を借用し、その者の名義に名義変更の登記、登録又は登載等をした場合において、その事実が確認できるときにおいても、また同様とする。

(取得者等の名義とすることが更正決定後に行われた場合の取扱い)

7 「1」から「3」まで及び「5」に該当する事実がある場合においては、これらに定める最初の贈与税の申告若しくは決定又は更正(これらの財産の価額がその計算の基礎に算入されている課税価格又は税額の更正を除く。)の日前にその名義を取得者等又は従前の名義人の名義としなかったため、これらの取扱いの適用がないものとして贈与税の更正又は決定があった後においても、次のすべてに該当しているときは、これらの取扱いの適用があるものとして、課税価格又は税額を更正することができるものとする。

(1) 当該更正又は決定について異議の申立てがあること。

(2) 当該財産の名義を取得者等又は従前の名義人の名義としなかったことが、税務署からこれらの取扱いの適用について説明を受けていない等のため、その取扱いを知らなかったことに基づくものであること。

(3) (1)の異議の申立て後速やかに当該財産の名義を取得者若しくは従前の名義人の名義とし、又は当該財産の保険金等により取得した財産をこれらの者の名義としたこと。

(法定取消権等に基づいて贈与の取消しがあった場合の取扱い)

8 贈与契約が法定取消権又は法定解除権に基づいて取り消され、又は解除されその旨の申出があった場合においては、その取り消され、又は解除されたことが当該贈与に係る財産の名義を贈与者の名義に変更したことその他により確認された場合に限り、その贈与はなかったものとして取り扱う。

(贈与契約の取消し等があったときの更正の請求)

9 贈与税の申告又は決定若しくは更正の日後に当該贈与税に係る贈与契約が「8」に該当して取り消され又は解除されたときは、国税通則法(昭和37年法律第66号)第23条第2項の規定による更正の請求ができるのであるから留意する。(昭57直資2-177改正)

(贈与契約の取消し等によりその贈与財産が相続人等に帰属した場合の取扱い)

10 贈与契約が「8」に該当して取り消され、又は解除された場合において、贈与者について相続が開始しているため、その相続人の名義としたときにおいても、「8」の本文に該当するものとして当該贈与はなかったものとして取り扱う。この場合においては、当該相続人が当該財産を相続により取得したものとし、当該財産の価額をこれらの者に係る相続税の課税価格計算の基礎に算入する。

(合意解除により贈与の取消しがあった場合の取扱い)

11 「8」に該当して贈与契約が取り消され、又は解除された場合を除き、贈与契約の取消し、又は解除があった場合においても、当該贈与契約に係る財産について贈与税の課税を行うことに留意する。

(贈与契約の取消し等による財産の名義変更の取扱い)

12 贈与契約の取消し、又は解除により当該贈与に係る財産の名義を贈与者の名義に名義変更した場合の当該名義変更については、「8」から「11」までにより当該贈与がなかったものとされるかどうかにかかわらず、贈与として取り扱わない。

(基本通達の一部改正)

13 (省略)