(相続税額に異動が生ずる更正であっても再計算をしない場合)

39-8 措置法第39条第1項に規定する資産の譲渡の日の属する年分の所得税の納税義務の成立の時又は当該資産の取得の基因となった相続若しくは遺贈に係る相続税の申告書の提出期限のうちいずれか遅い日を経過した後に行われた当該相続税の申告又は当該遅い日を経過した後に行われた当該相続若しくは遺贈に係る相続税の決定に対する修正申告書の提出又は更正があった場合については、措置法令第25条の16第2項の規定の適用はないことに留意する。(平27課資3-4、課個2-19、課法10-5、課審7-13改正)

(判決等により相続税額が異動した場合)

39-9 相続税についての再調査の請求に係る決定、審査請求に係る裁決又は判決により、相続税額に異動が生じた場合には、措置法令第25条の16第2項に規定する更正があった場合に準じ、当該異動後の相続税額を基礎として取得費に加算すべき金額の再計算を行うものとする。(平27課資3-4、課個2-19、課法10-5、課審7-13、平28課資3-4、課個2-33、課審7-11、徴管6-24改正)

(取得費に加算すべき相続税額の再計算)

39-10 措置法令第25条の16第2項の規定の適用がある場合又は39-9により同項に規定する更正があった場合に準じて取り扱う場合には、既に措置法第39条第1項の規定を適用して申告をした資産の譲渡に係る譲渡所得について措置法令第25条の16第2項に規定する修正申告又は更正後の相続税額を基礎として取得費に加算すべき金額を再計算するのであるが、当該譲渡所得について修正申告書の提出がある場合を除き、税務署長は国税通則法第24条又は第26条の規定により更正することとなる。この場合において同法第70条に規定する更正をすることができる期間を超えて更正することはできないことに留意する。(平27課資3-4、課個2-19、課法10-5、課審7‐13、平27課資3-6、課個2-25、課法10-14、課審7-15改正)

(第二次相続人が第一次相続に係る相続財産を譲渡した場合の取得費加算額の計算)

39-11 相続等により財産を取得した個人のうち措置法第39条第1項の規定の適用を受けることができる者(以下この項において「第一次相続人」という。)について、同条第1項に規定する期間(以下この項において「特例期間」という。)内に相続が開始した場合において(以下この項において当該相続を「第二次相続」という。)、当該第二次相続により財産を取得した相続人又は包括受遺者(以下この項において「第二次相続人」という。)が特例対象資産(第一次相続人の相続税の課税価格の計算の基礎に算入された譲渡所得の基因となる資産をいう。以下この項において同じ。)を第一次相続(第一次相続人が特例対象資産を相続等により取得したときの相続をいう。以下この項において同じ。)に係る特例期間内に譲渡した場合には、第一次相続人が死亡する直前において取得費に加算できる金額(以下この項において「第一次限度額」という。)を第二次相続人が承継しているものとみなして同条第1項の規定を適用して差し支えないものとする。(平27課資3-4、課個2-19、課法10-5、課審7-13改正)

  1. (1) 上記の場合において、措置法第39条第1項の規定により当該譲渡した特例対象資産の取得費に加算する金額は、次の算式により計算した金額とする。

    譲渡した特例対象資産に係る取得費加算額=A×(C÷B)

    (注) 算式中の符号は、次のとおりである。
    Aは、第二次相続人の適用限度額をいい、次の計算式1により算出した第一次限度額を基に、次の計算式2により算出する。

    (計算式1)

    (第一次相続に係る相続税額×(第一次相続に係る特例対象資産の価額の合計額÷第一次相続に係る相続税の課税価格(債務控除前)))−既に適用を受けた取得費加算額

    (計算式2)

    (第一限度額×(第二次相続人の第二次相続に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入された特例対象資産の価額の合計額÷第二次相続に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入された特定対象資産の価額の合計額

    Bは、第二次相続に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入された特例対象資産の価額の合計額

    Cは、第二次相続に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入された特例対象資産である譲渡資産の価額

  2. (2) 相続税の申告義務がないことなどにより、当該第二次相続に係る相続税の申告書の提出がない場合における上記(1)の計算は、当該第二次相続に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入すべき特例対象資産の価額を基に行うものとする。
  3. (3) 当該特例対象資産は、第二次相続人が第二次相続により取得した資産でもあることから、措置法第39条の規定による取得費に加算する金額の計算に当たっては、第一次相続に係る金額を基として行うか、又は第二次相続に係る金額を基として行うかは、譲渡した特例対象資産ごとに当該資産を譲渡した第二次相続人の選択したところによる。

(同一銘柄の株式を譲渡した場合の適用関係)

39-12 譲渡所得の基因となる株式(株主又は投資主となる権利、株式の割当てを受ける権利、新株予約権(新投資口予約権を含む。以下この項において同じ。)及び新株予約権の割当てを受ける権利を含む。以下この項において同じ。)を相続等により取得した個人が、当該株式と同一銘柄の株式を有している場合において、措置法第39条第1項に規定する特例適用期間内に、これらの株式の一部を譲渡したときには、当該譲渡については、当該相続等により取得した株式の譲渡からなるものとして、同項の規定を適用して差し支えない。(平18課資3-12、課個2-20、課審6-12、平26課資3-8、課個2-15、課審7-15、平27課資3-4、課個2-19、課法10-5、課審7-13改正)

(相続時精算課税適用者の死亡後に特定贈与者が死亡した場合)

39-13 相続時精算課税適用者(相続税法第21条の9第5項に規定する「相続時精算課税適用者」をいう。以下この項において同じ。)の死亡後に当該相続時精算課税適用者に係る特定贈与者(同条第5項に規定する「特定贈与者」をいう。以下この項において同じ。)が死亡した場合において、同法第21条の17第1項に規定する納税に係る権利又は義務を承継した当該相続時精算課税適用者の相続人(以下この項において「承継相続人」という。)が、当該特定贈与者に係る贈与財産のうち同法第21条の9第3項の規定の適用を受けたもの(以下この項において「相続時精算課税適用資産」という。)を当該相続時精算課税適用者から相続等により取得しているときには、当該相続時精算課税適用資産は、措置法第39条の規定の適用上、当該相続時精算課税適用者及び当該特定贈与者の相続税の課税価格の計算の基礎にそれぞれ算入された資産とし、当該承継相続人が当該相続時精算課税適用資産を同条第1項に規定するそれぞれの特例適用期間内に譲渡したときには、いずれの相続税額についても同条の規定を適用して差し支えない。相続税法第21条の18第2項に規定する相続人についても、また同様とする。
 なお、この場合における措置法第39条の規定の適用については、当該相続時精算課税適用者の死亡に係る相続税額を先に適用する。ただし、当該承継相続人が当該特定贈与者に係る相続税額を先に適用して申告したときは、その申告を認める。(平27課資3-4、課個2-19、課法10-5、課審7-13改正)

(所得税法第60条の3第1項の規定の適用を受けた資産の範囲)

39-14 措置法第39条第7項の規定により、同条第1項に規定する課税価格の計算の基礎に算入された資産には、相続又は遺贈による当該資産の移転につき所得税法第60条の3第1項《贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例》の規定の適用を受けた資産は含まれないのであるが、同項の規定の適用を受けた資産であっても、次に掲げるものは、措置法第39条第1項に規定する課税価格の計算の基礎に算入された資産に含まれることに留意する。(平28課資3-4、課個2-33、課審7-11、徴管6-24追加)

  1. (1) 所得税法第60条の3第4項ただし書《所得税法第60条の3第1項の規定の適用を受けた資産の取得価額の付替計算の不適用》の規定の適用を受ける次に掲げる有価証券等
    • イ 同条第1項の規定の適用を受けた被相続人に係る相続の開始の日の属する年分の所得税について確定申告書の提出及び決定がされていない場合における有価証券等
    • ロ 当該相続の開始の日の属する年分の譲渡所得等の金額の計算上有価証券等の当該相続の時における価額に相当する金額が総収入金額に算入されていない当該有価証券等
    • ハ 同条第6項前段《受贈者等が帰国をした場合等の課税の取消し》(同条第7項の規定により適用する場合を含む。)の規定の適用があった有価証券等
    • (注) 当該有価証券等の譲渡をした日以後に所得税法第60条の3第6項前段の規定の適用があったことにより、同法第151条の3第1項《非居住者である受贈者等が帰国をした場合等の修正申告の特例》の規定による修正申告書の提出又は同法第153条の3第1項《非居住者である受贈者等が帰国をした場合等の更正の請求の特例》の規定による更正の請求に基づく更正があった者は、措置法第39条第4項第2号の規定により、当該修正申告書の提出又は更正があった日の翌日から4月を経過する日までに更正の請求をすることにより、同条第1項の規定を適用することができることに留意する。
  2. (2) 所得税法第60条の3第4項本文の規定が適用されないこととなった有価証券等
    • (注)1 「所得税法第60条の3第4項本文の規定が適用されないこととなった有価証券等」については、所得税基本通達60の3-4参照
    • 2 当該有価証券等の譲渡をした日以後に遺産分割等の事由が生じたことにより、所得税法第151条の6第1項《遺産分割等があった場合の修正申告の特例》の規定による修正申告書の提出又は同法第153条の5《遺産分割等があった場合の更正の請求の特例》の規定による更正の請求に基づく更正があった者は、措置法第39条第4項第3号の規定により、当該修正申告書の提出又は更正があった日の翌日から4月を経過する日までに更正の請求をすることにより、同条第1項の規定を適用することができることに留意する。

(延滞税の計算の基礎となる期間に算入しないこととされる所得税の額)

39-15 措置法第39条第9項に規定する納付すべき所得税の額(相続税法第32条第1項《更正の請求の特則》の規定による更正の請求を行ったことにより措置法第39条第1項の相続税額が減少した場合において、当該相続税額が減少したことに伴い修正申告書を提出したこと又は更正があったことにより納付すべき所得税の額をいう。以下この項において同じ。)については、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれに掲げる金額が限度となることに留意する。(平19課資3-5、課個2-15、課審6-9追加、平27課資3-4、課個2-19、課法10-5、課審7-13、平28課資3-4、課個2-33、課審7-11、徴管6-24改正)

  1. (1) 相続税法第32条第1項に掲げる事由以外の他の相続税に係る事由による措置法第39条第1項の相続税額の異動に伴う所得税の額の異動がある場合 次のイ又はロのうちいずれか低い金額
    • イ 所得税の修正申告書を提出したこと又は更正があったことにより納付すべき所得税の額(以下この項において「所得税の修正申告等により納付すべき所得税の額」という。)
    • ロ 当該他の相続税に係る事由がないものとして計算される「措置法第39条第9項に規定する納付すべき所得税の額」
  2. (2) 「措置法第39条第9項に規定する納付すべき所得税の額」の異動以外の他の所得税に係る事由による所得税の額の異動がある場合 次のイ又はロのいずれか低い金額
    • イ 所得税の修正申告等により納付すべき所得税の額
    • ロ 当該他の所得税に係る事由がないものとして計算される「措置法第39条第9項に規定する納付すべき所得税の額」
  3. (3) 相続税法第32条第1項に掲げる事由以外の他の相続税に係る事由による措置法第39条第1項の相続税額の異動に伴う所得税の額の異動があり、かつ、「措置法第39条第9項に規定する納付すべき所得税の額」の異動以外の他の所得税に係る事由による所得税の額の異動がある場合 次のイ又はロのいずれか低い金額
    • イ 所得税の修正申告等により納付すべき所得税の額
    • ロ 当該他の相続税に係る事由及び当該他の所得税に係る事由がないものとして計算される「措置法第39条第9項に規定する納付すべき所得税の額」

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