(収益補償金名義で交付を受ける補償金を対価補償金として取り扱うことができる場合)

33−11 建物の収用等に伴い収益補償金名義で補償金の交付を受けた場合において、当該建物の対価補償金として交付を受けた金額(建物の譲渡に要した費用の額を控除する前の額とし、特別措置等の名義で交付を受けた補償金で33−19により対価補償金として判定すべき金額があるときは、当該金額を含む額とする。)が当該収用等をされた建物の再取得価額に満たないときは、当分の間、納税者が、当該収益補償金の名義で交付を受けた補償金のうち当該満たない金額に相当する金額(当該金額が当該補償金の額を超えるときは、当該補償金の額)を、譲渡所得の計算上当該建物の対価補償金として計算したときは、これを認めるものとする。この場合における当該建物の再取得価額は、次による。

(1) 建物の買取り契約の場合は、起業者が買取り対価の算定基礎とした当該建物の再取得価額によるものとし、その額が明らかでないときは、当該建物について適正に算定した再取得価額による。

(2) 建物の取壊し契約の場合は、次による。

イ 起業者が補償金の算定基礎とした当該建物の再取得価額が明らかであるときは、その再取得価額による。

ロ イ以外のときは、当該建物の対価補償金として交付を受けた金額(建物の譲渡に要した費用の額を控除する前の額とし、特別措置等の名義で交付を受けた補償金の額を含めない額とする。)に当該建物の構造が木造又は木骨モルタル造りであるときは65分の100を、その他の構造のものであるときは95分の100を、それぞれ乗じた金額による。

(注)

1 再取得価額とは、収用等をされた建物と同一の建物を新築するものと仮定した場合の取得価額をいう。

2 収益補償金名義で交付を受ける補償金を借家人補償金に振り替えて計算することはできないことに留意する。

(収益補償金名義で交付を受ける補償金を2以上の建物の対価補償金とする場合の計算)

33−12 33−11の場合において、収用等をされた建物が2以上あり、かつ、収益補償金名義で交付を受けた金額及び建物の対価補償金として交付を受けた金額の合計額が当該建物の再取得価額の合計額に満たないときは、33−11により対価補償金と判定する金額をその個々の建物のいずれの対価補償金として計算するかは、個々の建物の再取得価額を限度として、納税者が計算したところによる。

(事業廃止の場合の機械装置等の売却損の補償金)

33−13 土地、建物、漁業権その他の資産の収用等に伴い、機械装置等の売却を要することとなった場合において、その売却による損失の補償として交付を受ける補償金は、経費補償金に該当する(33−8の(2)参照)のであるが、当該収用等に伴い事業の全てを廃止した場合又は従来営んできた業種の事業を廃止し、かつ、当該機械装置等を他に転用することができない場合に交付を受ける当該機械装置等の売却損の補償金は、対価補償金として取り扱う。この場合において、当該機械装置等の帳簿価額(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費をいう。以下同じ。)のうち当該対価補償金に対応する部分の金額は、次の算式により計算した金額によるものとする。ただし、当該収用等をされた者が、当該機械装置等の帳簿価額のうち、その処分価額又は処分見込価額を超える部分の金額を当該対価補償金に対応する部分の帳簿価額として申告し又は経理している場合には、これを認めるものとする。(平23課資3-2、課個2-26、課審6-13改正)

事業廃止の場合の機械装置等の売却損の補償金の算式

(注) 機械装置等の売却損の補償金は、一般には、次のイからロを控除して計算される。

イ 当該機械装置等と同種の機械装置等の再取得価額から、当該再取得価額を基として計算した償却費の額の累計額に相当する金額を控除した残額

ロ 当該機械装置等を現実に売却し得る価額

(引き家補償等の名義で交付を受ける補償金)

33−14 土地等の収用等に伴い、起業者から当該土地等の上にある建物又は構築物を引き家し又は移築するために要する費用として交付を受ける補償金であっても、その交付を受ける者が実際に当該建物又は構築物を取り壊したときは、当該補償金(当該建物又は構築物の一部を構成していた資産で、そのもの自体としてそのまま又は修繕若しくは改良を加えた上他の建物又は構築物の一部を構成することができると認められるものに係る部分を除く。)は、当該建物又は構築物の対価補償金に当たるものとして取り扱うことができる。

(移設困難な機械装置の補償金)

33−15 土地等又は建物等の収用等に伴い、機械又は装置の移設を要することとなった場合において、その移設に要する経費の補償として交付を受ける補償金は、対価補償金には該当しないのであるが、機械装置の移設補償名義のものであっても、例えば、製錬設備の溶鉱炉、公衆浴場設備の浴槽のように、その物自体を移設することが著しく困難であると認められる資産について交付を受ける取壊し等の補償金は、対価補償金として取り扱う。
 なお、これに該当しない場合であっても、機械装置の移設のための補償金の額が当該機械装置の新設のための補償金の額を超えること等の事情により、移設経費の補償に代えて当該機械装置の新設費の補償を受けた場合には、その事情が起業者の算定基礎等に照らして実質的に対価補償金の交付に代えてされたものであることが明確であるとともに、現にその補償の目的に適合した資産を取得し、かつ、旧資産の全部又は大部分を廃棄又はスクラップ化しているものであるときに限り、当該補償金は対価補償金に該当するものとして取り扱うことができる。

(残地補償金)

33−16 土地等の一部について収用等があった場合において、土地収用法第74条《残地補償》の規定によりその残地の損失について補償金の交付を受けたときは、当該補償金を当該収用等があった日の属する年分の当該収用等をされた土地等の対価補償金とみなして取り扱うことができる。この場合において、当該収用等をされた部分の土地等の取得価額は、次の算式により計算した金額による。

残地補償金の算式

(残地買収の対価)

33−17 土地の一部について収用等があったことに伴い、残地が従来利用されていた目的に供することが著しく困難となり、その残地について収用の請求をすれば収用されることとなる事情があるため(土地収用法第76条第1項《残地収用の請求権》参照)、残地を起業者に買い取られた場合には、その残地の買取りの対価は、当該収用等があった日の属する年分の対価補償金として取り扱うことができる。

(残地保全経費の補償金)

33−18 土地等の一部又は当該土地等の隣接地について収用等があったことにより、残地に通路、溝、垣、柵その他の工作物の新築、改築、増築若しくは修繕又は盛土若しくは切土(以下この項において「工作物の新築等」という。)をするためのものとして交付を受ける補償金は対価補償金には該当しないから、当該補償金については収用等の場合の課税の特例は適用されないが、当該工作物の新築等が残地の従来の機能を保全するために必要なものであると認められる場合に限り、当該工作物の新築等に要した金額のうち当該補償金の額に相当する金額までの金額については、所得税法第44条《移転等の支出に充てるための交付金の総収入金額不算入》に規定する移転等の費用に充てるための金額の交付を受けた場合に準じて取り扱って差し支えないものとする。

(特別措置等の名義で交付を受ける補償金)

33−19 交付を受けた補償金等のうち、特別措置等の名義のもので、その交付の目的が明らかでないものがある場合には、その者が交付を受ける他の補償金等の内容及びその算定の内訳、同一事業につき起業者が他の収用等をされた者に対してした補償の内容等を勘案して、それぞれ対価補償金、収益補償金、経費補償金、移転補償金又はその他の補償金のいずれかに属するかを判定するのであるが、その判定が困難なときは、課税上弊害がない限り、起業者が証明するところによることができるものとする。

(注) 収用等の補償実施状況によれば、建物の所有者に対して特別措置の名義で建物の対価補償金たる実質を有する補償金が交付され、借家人に対して同じ名義で借家人補償金たる実質を有する補償金が交付される実例があることに留意する。

(減価補償金)

33−20 措置法第33条第1項第3号及び第33条の3第1項に規定する「清算金」には、土地区画整理法第109条《減価補償金》に規定する減価補償金を含むものとする。


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