(収用又は使用の範囲)

33−1 措置法第33条又は第33条の2に規定する「収用」又は「使用」には、土地収用法第16条《事業の認定》に規定する当該事業(以下「本体事業」という。)の施行により必要を生じた同条に規定する関連事業のための収用又は使用が含まれるのであるから留意する。

(関連事業に該当する場合)

33−2 本体事業の施行により必要を生じた事業が関連事業としての土地収用法第3章《事業の認定等》の規定による事業の認定(以下この項において「関連事業としての事業認定」という。)を受けていない場合においても、その事業が次の要件の全てに該当するときは、措置法第2章第4節第4款の収用等の場合の課税の特例の適用上は、関連事業に該当するものとする。(平23課資3-2、課個2-26、課審6-13改正)

  1. (1) 土地収用法第3条各号《土地を収用し又は使用することができる事業》の一に該当するものに関する事業であること。
  2. (2) 本体事業の施行によって撤去変改を被る既存の同条各号の一に掲げる施設(以下33−3において「既存の公的施設」という。)の機能復旧のため本体事業と併せて施行する必要がある事業であること。
  3. (3) 本体事業の施行者が自ら施行することが収用経済等の公益上の要請に合致すると認められる事業であること。
  4. (4) その他四囲の状況から関連事業としての事業認定を受け得る条件を具備していると認められる事業であること。

(注) 措置法規則第14条第5項《収用等の証明書》の規定は、本体事業と関連事業とについてそれぞれ別個に適用されるのであるから留意する。

(既存の公的施設の機能復旧に該当するための要件)

33−3 本体事業の施行により必要を生じた事業が、33−2の(2)の既存の公的施設の機能復旧のために施行されるものに該当するための要件については、次の点に留意する(令4課資3-7、課審7-16改正)。

  1. (1) その事業は、既存の公的施設の機能復旧の限度で行われるものであることを要し、従来当該施設が当該地域において果たしてきた機能がその事業の施行によって改良されることとなるものは、これに該当しないこと。ただし、当該施設の設置に関する最低基準が法令上具体的に規制されている場合における当該基準に達するまでの改良は、この限りでないものとすること。

    (注) ただし書に該当する事例としては、車線の幅員を道路構造令第5条《車線等》に規定する幅員まで拡張する場合がある。

  2. (2) その事業は、本体事業の起業地内に所在して撤去変改を被る既存の公的施設の移転(道路等にあっては、そのかさ上げを含む。)のために行われるものであることを要し、本体事業の施行に伴う当該地域の環境の変化に起因して行う移転、新設等の事業は、これに該当しないこと。ただし、既存の公的施設が当該起業地の内外にわたって所在する場合において、当該施設の全部を移転しなければ従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときにおける当該起業地以外に所在する部分の移転は、この限りでないものとすること。
  3. (3) 既存の公的施設の移転先として関連事業のための収用又は使用の対象となる場所は、当該施設の従来の機能を維持するために必要欠くべからざる場所であることを要し、他の場所をもって代替することができるような場所はこれに該当しないから、起業地と即地的一帯性を欠く場所は、その対象に含まれないこと。ただし、起業地の地形及び当該施設の立地条件に特殊な制約があって、起業地と即地的に一帯を成す場所から移転先を選定することが著しく困難な場合には、当該特殊な制約が解消することとなる至近の場所については、この限りでないものとすること。

(関連事業の関連事業)

33−4 関連事業に関連して施行する事業については、当該関連事業を本体事業とみなした場合に、その関連して施行する事業が33−2の要件に適合する限りにおいて、収用等の場合の課税の特例の適用上は、関連事業に該当するものとする。

(棚卸資産等の収用交換等)

33−5 棚卸資産等について収用等又は交換処分等があった場合には、当該資産のうち、補償金、対価又は清算金に対応する部分については、措置法第33条又は第33条の2第2項《交換処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例》の規定の適用はないが、当該資産のうち交換処分等により取得した資産に対応する部分については、同法第33条の2第 1項の規定の適用があるのであるから留意する。
 なお、不動産売買業を営む個人の有する土地又は建物であっても、当該個人が使用し、若しくは他に貸し付けているもの(販売の目的で所有しているもので、一時的に使用し、又は他に貸し付けているものを除く。)又は当該個人が使用することを予定して長期間にわたり所有していることが明らかなものは、棚卸資産等には該当しないのであるから留意する。

(注) この項及び33−8において、「棚卸資産等」とは、次に掲げる資産をいう。

  1. (1) 所得税法第2条第1項第16号《定義》に規定する棚卸資産(所得税法施行令第81条各号《棚卸資産に準ずる資産》に掲げる資産を含む。)
  2. (2) (1)に該当するもののほか、個人が当該収用等のあった日以前5年以内に取得した山林

(権利変換差額等についての収用等の課税の特例)

33−6 個人が、第一種市街地再開発事業若しくは第二種市街地再開発事業の施行に伴い取得した変換取得資産(措置法令第22条の3第4項第1号《換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例》に規定する変換取得資産をいう。以下35の2−10までにおいて同じ。)若しくは対償取得資産(同条第2項に規定する対償取得資産をいう。以下この項および35の2−10において同じ。)又は防災街区整備事業の施行に伴い取得した防災変換取得資産(同条第7項に規定する防災変換取得資産をいう。以下35の2−10までにおいて同じ。)を有する個人から当該変換取得資産若しくは対償取得資産又は防災変換取得資産を所得税法第60条第1項第1号《贈与等により取得した資産の取得費等》に掲げる贈与、相続又は遺贈により取得した場合において、当該変換取得資産若しくは対償取得資産又は防災変換取得資産を取得した個人が都市再開発法第104条《清算》若しくは第118条の24《清算》又は密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律第248条《清算》に規定する差額に相当する金額の交付を受けることとなったときは、そのなった日において措置法第33条の3第2項に規定する旧資産又は同条第4項に規定する防災旧資産のうち措置法令第22条の3第4項又は第7項に規定する部分につき収用等による譲渡があったものとして措置法第33条の規定の適用があるものとする。(平27課資3-4、課個2-19、課法10-5、課審7-13、平30課資3-2、課個2-25、課法10-3、課審7-6、令4課資3-7、課審7-16 改正)

(収用等又は換地処分等があった日)

33−7 措置法第33条第1項に規定する収用等のあった日とは、所得税基本通達36−12《山林所得又は譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期》に定める日によるのであるが、次に掲げる場合にはそれぞれ次による。(平20課資3-4、課個2-33、課審6-18、平26課資3-8、課個2-15、課審7-15改正)

  1. (1) 資産について土地収用法第48条第1項《権利取得裁決》若しくは第49条第1項《明渡裁決》に規定する裁決又は第50条第1項《和解》に規定する和解があった場合 当該裁決書又は和解調書に記載された権利取得の時期又は明渡しの期限として定められている日(その日前に引渡し又は明渡しがあった場合には、その引渡し又は明渡しがあった日)
  2. (2) 資産について土地区画整理法第103条第1項《換地処分》(新都市基盤整備法第41条《換地処分等》及び大都市地域住宅等供給促進法第83条《土地区画整理法の準用》において準用する場合を含む。)、新都市基盤整備法第40条《一括換地》又は土地改良法第54条第1項《換地処分》の規定による換地処分があった場合 土地区画整理法第103条第4項(新都市基盤整備法第41条及び大都市地域住宅等供給促進法第83条において準用する場合を含む。)又は土地改良法第54条第4項の規定による換地処分の公告のあった日の翌日
  3. (3) 資産について土地改良法、農業振興地域の整備に関する法律又は農住組合法による交換分合が行われた場合 土地改良法第98条第10項又は第99条第12項《土地改良区の交換分合計画の決定手続》(同法第100条第2項《農業協同組合等の交換分合計画の決定手続》及び第100条の2第2項《市町村の交換分合計画の決定手続》、農業振興地域の整備に関する法律第13条の5《土地改良法の準用》並びに農住組合法第11条《土地改良法の準用》において準用する場合を含む。)の規定により公告があつた交換分合計画において所有権等が移転等をする日として定められている日
  4. (4) 資産について都市再開発法第86条第2項《権利変換の処分》又は密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律第219条第2項《権利変換の処分》の規定による権利変換処分があった場合 権利変換計画に定められている権利変換期日

(対価補償金とその他の補償金との区分)

33−8 措置法第33条第1項又は第33条の2第1項に規定する補償金、対価又は清算金の額(第33条第4項の規定により、これらの補償金、対価又は清算金の額とみなされるものを含む。)とは、名義のいかんを問わず、収用等による譲渡(第33条第4項の規定により収用等による譲渡とみなされるものを含む。以下同じ。)の目的となった資産の収用等の対価たる金額(以下「対価補償金」という。)をいうのであるから、次の(1)から(4)までに掲げる補償金は、別に定める場合を除き、対価補償金に該当しないことに留意する。(平23課資3-2、課個2-26、課審6-13、令4課資3-7、課審7-16改正)

  1. (1) 事業(事業と称するに至らない不動産又は船舶の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うものを含む。以下33−9までにおいて同じ。)について減少することとなる収益又は生ずることとなる損失の補填に充てるものとして交付を受ける補償金(以下「収益補償金」という。)
  2. (2) 休廃業等により生ずる事業上の費用の補填又は収用等による譲渡の目的となった資産以外の資産(棚卸資産等を除く。)について実現した損失の補填に充てるものとして交付を受ける補償金(以下「経費補償金」という。)
  3. (3) 資産(棚卸資産等を含む。)の移転に要する費用の補填に充てるものとして交付を受ける補償金(以下「移転補償金」という。)
  4. (4) その他対価補償金たる実質を有しない補償金

(補償金の課税上の取扱い)

33−9 対価補償金等の課税上の取扱いは、次のとおりとなるのであるから留意する。(平23課資3-2、課個2-26、課審6-13改正)

補償金の種類 課税上の取扱い
1
対価補償金
 譲渡所得の金額又は山林所得の金額の計算上、収用等の場合の課税の特例の適用がある。
2
収益補償金
 当該補償金の交付の基因となった事業の態様に応じ、不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。
 ただし、33−11により収益補償金として交付を受ける補償金を対価補償金として取り扱うことができる場合がある。
3
経費補償金
(イ)  休廃業等により生ずる事業上の費用の補填に充てるものとして交付を受ける補償金は、当該補償金の交付の基因となった事業の態様に応じ、不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。
(ロ)  収用等による譲渡の目的となった資産以外の資産(棚卸資産等を除く。)について実現した損失の補填に充てるものとして交付を受ける補償金は、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。
 ただし、33−13により、経費補償金として交付を受ける補償金を対価補償金として取り扱うことができる場合がある。
4
移転補償金
 補償金をその交付の目的に従って支出した場合には、当該支出した額については、所得税法第44条《移転等の支出に充てるための交付金の総収入金額不算入》の規定が適用される。
 ただし、33−14又は33−15により、引き家補償の名義で交付を受ける補償金又は移設困難な機械装置の補償金を対価補償金として取り扱うことができる場合がある。また、33−30により、借家人補償金は、対価補償金とみなして取り扱う。
5
その他対価補償金の実質を有しない補償金
 その実態に応じ、各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。  ただし、所得税法第9条第1項《非課税所得》の規定に該当するものは、非課税である。

(注)  移転補償金をその交付の目的に従って支出したかどうかの判定は、次による。

  1. (1) 当該移転補償金をその交付の基因となった資産の移転若しくは移築又は除却若しくは取壊しのための支出に充てた場合 交付の目的に従って支出した場合に該当することになる。
  2. (2) 当該移転補償金を資産の取得のための支出又は資産の改良その他の資本的支出に充てた場合 その交付の目的に従って支出した場合に該当しない。

(2以上の資産について収用等が行われた場合の補償金)

33−10 2以上の資産が同時に収用等をされた場合において、個々の資産ごとの対価補償金の額が明らかでないときは、当該収用等をされた個々の資産に係る対価補償金の額は、当該資産の収用等があった日における価額の比又は起業者が補償金等の算定の基礎とした当該資産の評価額の比その他適正な基準により区分する。

(注) 譲渡資産が同種のものである場合又は当該譲渡資産に係る代替資産につき措置法令第22条第5項若しくは第6項《代替資産の特例》の規定の適用を受ける場合には、譲渡所得の金額又は代替資産の取得価額は、その対価補償金の額の合計額を基礎として計算すればよいのであるから、強いて上記の区分をする必要はないことに留意する。


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